ブタ膵細胞の1型糖尿病患者への移植を容認へ

2016年04月20日

糖尿病の主要な病型は、1型と2型に分類されます。日本人に多い糖尿病は2型で、遺伝的に糖尿病になりやすい人が、肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに発病します。多くの患者は、食事療法と運動療法で血糖値をコントロール可能です。一方、1型糖尿病の原因は自己免疫疾患で、自分の膵臓のβ細胞を外敵と勘違いして攻撃して壊してしまい、インスリンが分泌できなくなり発症します。治療は、インスリン注射を一生涯続けるしかありません。

厚生労働省は、これまで動物の臓器や細胞を人へ移植することを事実上禁止していました。その最も大きな理由は、ブタのレトロウイルスなどが人へ感染する可能性でした。しかし、海外ではブタのすい臓を人に移植する臨床研究が始まり、国際学会でもレトロウイルスの人への感染がないことが報告されていました。もう一つの問題点は、異種間移植による拒絶反応の克服でした。移植細胞を、免疫細胞や抗体を通さない特殊な膜に包むことにより、拒絶反応を避けることができるようになりました。これらの最新技術により、1型糖尿病患者へのブタ膵細胞を移植する治療が容認されたのです。

1型糖尿病の治療として研究されている他の方法は、iPS細胞からβ細胞を作製して移植する方法ですが、がん化しないことの確認の研究などが必要なので、臨床応用までには未だ数年は必要な現状です。

何れの治療法であっても実用化されれば、一生涯のインスリン注射から解放されるので、1型糖尿病患者にとっては朗報です。

熊本地震 お見舞い

2016年04月20日

熊本地震で被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。

強い余震が続いているので、避難生活が長期化しそうな状況です。健康管理に充分お気をつけ下さい。ニュースでも報じられていますが、エコノミークラス症候群を多数の方が発症しています。こまめに体を動かして血流を維持することと、水分の補給が欠かせません。精神的なストレスの蓄積は免疫力を低下させますし、手洗いや消毒などが充分にできない環境や食事による栄養補給も偏ってきますから、疾患にかかりやすくなります。特に、体力の弱い高齢者や乳幼児は、お気をつけ下さい。健康を管理して、一日も早い復旧をお祈りします。

離婚や死別は脳卒中のリスクを高める!

2016年04月10日

離婚や死別で配偶者を失うと脳卒中のリスクが高まることを、大阪大学などの研究チームがアメリカの心臓学会誌「ストローク」に発表しました。(脳卒中とは、脳の血管がつまって発症する脳梗塞と、血管が破れて出血する脳出血とくも膜下出血を総称したものです。)

研究対象は45~74歳の男女5万人で、既婚(配偶者と同居)から非婚(配偶者と同居なし)の変化の有無と、その後の脳卒中発症リスクの関係を15年間追跡調査しています。この間に、2134人が脳卒中を発症しました。婚姻状況の変化との関連では、離婚や死別で配偶者を失った人は、脳卒中のリスクが男女ともに26%も高まる結果になりました。特に、くも膜下出血や脳出血のリスクは、男性が48%増、女性が35%増でした。なお、仕事をしていない女性が夫を失った場合には、夫がいて仕事をしている女性と比較すると、3倍も脳卒中のリスクが高くなっています。

一般的には、既婚者は非婚者(離別&死別)と比較すると健康状態が良いことが知られていました。この要因として、既婚者は精神的安定感や食生活のバランスが良いことなどが考えられます。逆に、配偶者を失うと、飲酒量の増加などの食生活の乱れや精神的および経済的な負担が悪影響を与えるものと考えられます。

前回は、笑わないと脳卒中や心臓病に成り易いことを報告しました。今回の報告と合わせると、健康で長生きするには、夫婦が円満で笑いのある家庭を作ることが重要なようです。

笑わない高齢者は脳卒中、心臓病に成り易い!

2016年04月01日

笑いが、免疫細胞を活性化して健康増進に寄与することが知られています。例えば、漫才や喜劇などで大笑いすると、がん細胞を攻撃するリンパ球の一種であるナチュラルキラー(NK)細胞の活性が上昇します。また、脳がリラックスした時に出現するアルファー(α)波は増え、大脳新皮質の血流量も増加して脳の活性が上昇します。さらに、カロリー消費を増加させるので運動と同じ効果があることも知られています。従って、笑いはストレス解消のみならず、生活習慣病やがんなどの病気の予防効果がある万能薬と考えられます。

しかしながら、笑いの回数は年齢とともに減少してしまいます。「よく笑う」と答えた人の割合を世代別にみると、30歳代では65%、40歳代では50%、50歳代では45%と、徐々に減少しています。この加齢に伴う笑いの減少の主因は、人生経験の積み重ねとともにストレスも蓄積している“ストレス説が”有力です。では、笑わなくなると健康にどのように影響するのでしょうか?

殆ど笑わない高齢者は、毎日よく笑う高齢者と比較すると、脳卒中や心臓病になる確率が高くなることが、東京大学などの研究チームから発表されました。65歳以上の男女2万人以上を対象にした調査で、殆ど笑わない人は脳卒中が1.6倍、心臓病は1.2倍も高い結果となりました。男女別では、特に高齢女性で危険性が高く、脳卒中は1.95倍、心臓病は1.41倍も高くなっています(男性では1.47倍、1.11倍)。この結果から、毎日の生活に笑いを入れることが健康管理につながることは明らかです。私は、笑点の大喜利が大好きで毎週見ていますが、脳卒中や心臓病の予防に役立っているようです。