ソーセージやベーコンでがんになる?

2015年11月10日

先月26日に、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)から、ソーセージやベーコンなどの加工肉がタバコやアスベストなどと同じ「発がん性がある物質」に分類され、毎日50g食べると発がん率が18%上昇するとの報告がありました。近年、大腸がんの患者が増えているのは、農耕民族の日本人が肉食の西洋食に急変していることが原因と考えられているので、肉や加工肉を大量に摂取することは大腸がんのリスクを上昇させる可能性は高くなります。では、どの位の摂取量なら問題ないのでしょうか?これに対して色々な分野から反響がありますが、本ブログにて私見を述べます。

毎日50gの加工肉を食べたと計算すると、年間では18.3㎏になります。日本では年間平均の摂取量は6.1㎏程度ですから、現在の消費量ではがんの誘発には問題外の量ということになります。ソーセージをよく食べるドイツでは、年間では30.7㎏程度食べていますが、がん患者は多くはありません。今回の報告では、加工肉を食べすぎたことに起因する死亡例は、世界で31000件と推測されています。日本のがんによる死亡者数は年間で約36万人ですから、加工肉以外の要因が大きいという解釈になります。従って、通常量の加工肉の摂取では、発がんの心配をする必要はありません。

問題になるとするならば、肉や加工肉を大量に食べて、野菜、ヨーグルトや納豆などの発酵食品、ごはんなどの割合が極端に少ない場合と考えられます。元気な高齢者は、肉類も十分に摂取している方が多いですが、野菜やくだもの、ヨーグルトや納豆、ごはんなどのバランスが良いのです。なお、テレビの番組で納豆、ヨーグルト、トマトなどが体に良いと放送すると、マーケットの商品棚からこれらが消えることがありました。健康に良い物もそればかりを食べていると栄養が偏るので、逆に不健康になってしまいます。多種類の食品のバランスが大切です。

結論として、

ソーセージやベーコンなどの加工肉は、通常の摂取量ならば発がんの心配はないと考えられます。肉、野菜、発酵食品、炭水化物などをバランスよく摂ることが、健康寿命を延ばす秘訣です。

ホームページからの健康相談 (降圧剤を飲むべきか?)

2015年11月01日

『ホームページからの健康相談』で2番目に多い相談内容は、降圧剤(高血圧の薬)を飲むべきか?です。

高血圧に関する記事は、

です。これらの内容をまとめます。

  1. 中高年には低すぎる基準値

現在の基準値は130 mmHg以下ですが、1987年から2000年までの老人基本健診での高血圧の基準値は180 mmHgでした。その後、2000年には年代別になり、80歳代では160 mmHgで59歳以下は130 mmHgとなったのです。2004年、2008年と変更があり、現在の130 mmHgが採用されています。この様に、20年で血圧の基準値は50 mmHgも低くなっています。

前回も書いたように、基準範囲とは、健康な人(健常者)を沢山集めて、その内の95%の人が入る範囲ですので、5%は基準値を越えます。現在の血圧の基準値である130 mmHg以下では、60歳以降の健常者の約80%は高血圧になってしまいます。低すぎる基準値であることは明白で、この基準値で約3000万人が高血圧患者になっています。降圧剤の年間売り上げは約1兆円と莫大な金額で、医療機関や製薬会社の大事な収入源です。血圧は年齢とともに上昇するので、本来は年齢別に基準値を作るべきであり、中高年は2000年の基準値が正解と考えています。

  1. 血圧と寿命の関係

血圧は、低い方が元気で長生きできるのでしょうか? 一般に、高血圧になると脳出血を起こすので危険であると宣伝し、降圧治療を勧めています。確かに、血圧が200 mmHg を超えるような場合には、降圧治療は正解です。しかし、脳卒中の内、出血による死亡は約3割なのですが、脳血栓による死亡はその倍の約6割もあるのです。薬剤による過度な降圧治療は血流障害を引き起こし易く、脳血栓の可能性を高めているのです。実際、80歳の老人の5年生存率と血圧の関係では、血圧を130 mmHg 以下の基準値内に保った場合の5年生存率は低く、逆に160 mmHg以上の高血圧と診断されている方が長生きなのです。降圧治療は、長生きするよりも、体調を崩し、命を縮めている場合の方が多いことを知るべきです。

  1. 降圧剤は一生やめられないはウソ!

降圧剤を飲み始めると一生止められないといわれていますが、これは間違いです。ただし、服薬を急に止めると反動で血圧が不安定になる可能性があります。止め方は、以下を参考にしてください。

* ストレスの除去

高血圧の原因の多くは、肉体的または精神的ストレスが原因です。休養や気分転換などでストレスを除去することが必要です。

* 禁煙

煙草は、血管を硬くし、収縮させることで血圧を上昇させます。百害あって一利無しです。

* 体重を減らす

肥満がある場合は、食事療法と運動療法で減量すると、体重1 Kg当たり2 mmHg低下します。

* 有酸素運動

有酸素運動は、血流を改善するので、血管の抵抗が減り、血圧が低下します。日常生活に取り入れることが不可欠です。

上記をしばらく実行して、血圧をチェックして以前より安定していたら、薬を1/2に減らします。この状態でまたしばらく様子をみます。さらに安定してきたら、薬の量を最初の1/4に減らして、様子をみます。この様に、半年~1年単位の期間をかけて、徐々に薬を減らしていけば、止められる可能性が高くなります。

  1. まとめ

* 中高年の血圧130~150 mmHg位は、加齢による生理的変動範囲内で問題ない。

* 180 mmHg位までは服薬よりも、禁煙、減量、運動で改善をはかる。

医者の薦める薬を飲んでいれば健康でいられると思っておられる方は、健康長寿は望めません。上記の記事を参考にして、降圧剤を飲むべきかを考えてください。

(お勧めの本: 薬をやめれば病気は治るー岡本裕)。

ホームページからの健康相談(高脂血症薬は飲むべきか?)

2015年10月20日

『ホームページからの健康相談』を利用していただく方が、増えてきました。担当者としてはうれしいことです。相談内容で最も多いのは、総コレステロールまたはLDLコレステロールが正常値を越えたために薬を処方されたが飲むべきか?というものです。この内容に関してこれまでに本ブログに掲載してきた記事は、

などがありますので、これらの記事の内容を理解しやすく短くまとめてみます。

1: コレステロールの役割とは?

コレステロールの主な役割は、①細胞膜の原料、②ホルモンの原料、③胆汁酸の原料です。コレステロールは大切な栄養素で、これが無いと生命を維持する事が出来ません。また、LDLコレステロールの役割はコレステロールを必要な場所へと運ぶ運搬係として重要で、悪玉ではありません。HDLコレステロールは、余分な分を持ち帰る係です。

2: コレステロールの誤解

コレステロールが悪者扱いをされる発端は、ウサギにコレステロールを与えたら動脈硬化を起こしたといういい加減な実験報告でした。何故にいい加減かといえば、ウサギは草食動物であり、動物性のコレステロールは食べません。無理に与えれば具合が悪くなるのは当たり前ですし、このウサギの動脈硬化は血管の外側にできていたので、内側に付いて血管を詰まらせるとの根拠にはなりません。確かに、動脈硬化を起こした人の血管にはコレステロールの付着が認められるのですが、この付着は動脈硬化の炎症をコレステロールが修復していることが近年の研究で明らかになっています。コレステロールは血管を詰まらせるのではなく、修復しているのです。

3. 基準値(正常値)の不適切さ

基準値(正常値)とは、健康な人の集団において、全体の95%が入る範囲をいいます。現在の総コレステロールの基準値は、220 mg/dl以下になっています。この基準値では、中高年の約半数が異常高値になってしまいますので、基準値の上限の設定が低すぎることは一目瞭然です。昨年の人間ドック学会の報告では、健康な数万人の中高年の統計で、総コレステロールは男性254mg/dl、女性で280mg/dl、LDLは男性178mg/dl、女性で190mg/dl位までになっています。

4: 基準値設定の経緯

1976年(昭和51年)の基準値の上限は260 mg/dlだったのですが、1990年(平成2年)に高脂血症薬のメバロチンが発売された直後に、基準値は220 mg/dl に引き下げられ、一夜にして約2000万人が高脂血症患者になりました。現在のコレステロール関連の年間医療費は、なんと7500億円以上です。

5: 高脂血症で低死亡率

現在の基準値で高脂血症と診断されている人と正常域の人とを比較すると、脳卒中で入院した場合の死亡率は、高脂血症の方が逆に2分の1から3分の1に低いと報告されています。また、テレビのコマーシャルでは、有名人を使ってLDLが高いと心筋梗塞になるので“LDLが高い人はお医者さんへ”と宣伝しています。実際には、LDLコレステロールと心臓病死ならびに総死亡率との統計的関係を調べると、逆にLDLコレステロールが高い方が総死亡率は低い結果を示しています。LDLコレステロールは、基準値より高めで、男性は100~180 mg/dl位、女性は120 mg/dl 以上の方が長生きの傾向があります。現在の高脂血症の定義の矛盾は明らかです。

6.コレステロールは食事の影響なし

本年2月にアメリカの厚生省と農務省が設置した「食事指針諮問委員会」から、「コレステロールは、過剰摂取を心配する栄養素ではない」との報告書が公開されました。即ち、食事と血清コレステロールの間には明らかな相関は無いので、食事制限は必要ないということです。コレステロールの約70%は、体内で合成されます。従って、卵やイカなどの食事から沢山のコレステロールを摂取した場合には、吸収量を落としたうえに体内で合成量を減少させるので、血中のコレステロール濃度は一定に保たれます。動物性の脂肪には体内で合成できない必須脂肪酸も含まれているので、高齢者も適量の動物性脂肪を摂取する必要があります。

7: まとめ

*現在の基準値である総コレステロール220 mg/dl、LDLコレステロール140 mg/dl は、設定が低すぎるので、健康な中高年の約半数の人が異常値になる。

*現在の基準値を少し超えた人の方が、元気で長生きしている。

*コレステロールは食事に影響されないので、肉、魚、野菜、果物など、バランスよく摂ることが必要。

*薬でコレステロールを下げ過ぎると、うつ病やアルツハイマー病に罹りやすくなる。

負のイメージばかりが強調されているコレステロールですが、実際は大切な栄養素です。何が本当で何が嘘なのか、基準値を超えた場合に薬を飲むか飲まないかは、よく考えてご判断ください。

歯と健康長寿

2015年10月10日

先月の敬老の日に、2014年の100歳以上の高齢者数の発表がありました。総数は58820名で、女性が87.1%を占めています。県別では、島根県、高知県、鳥取県の順で、西日本が上位でした。平均寿命は、9月10日記載のように、男性80.21歳、女性が86.61歳ですから、日本は世界一の長寿国になりました。

私の持っている健康長寿者のイメージは、歯が丈夫で何でも良く食べることです。高齢者に肉類は良くないと思っておられる方もいますが、人間の体はタンパク質でできているので、新しい細胞と入れ替えるには、良質なタンパク質を補う必要があります。ですから、長生きするには魚、やさい、果物、野菜などの他に肉類も摂取することとが不可欠です。肉類を含む多種類の食品を摂るには、丈夫な歯が欠かせません。さらに、歯は単に「食品をかみ砕く」ばかりでなく、「発音を助ける」、「表情を作る」、「体の姿勢やバランスを保つ」などの働きや、「ものを噛むことで脳に刺激を与える」ことで認知症の予防などの役割もあります。

歯がなくなる最大の要因として歯周病がありますが、その結果として肥満や糖尿病、心臓病や脳卒中の危険性が高まります。例えば、歯周病患者の心疾患での死亡率は健常者の2~3倍高いことが知られています。そこで、歯の専門家のアドバイスがあると、健康管理に良い結果を及ぼします。例えば、デイケアに通う在宅介護高齢者で、歯科衛生士によるオーラルケアおよび口腔衛生指導を週1回受けた人たちと自分でやるだけの人たちを比べたところ、インフルエンザの感染率が低下しています。また、介護施設入所者を、看護師や介護者によるオーラルケアを受ける人たちと受けない人たちにわけて比べたところ、肺炎になった率がオーラルケアを受けた人の方が少なかったことが報告されています。病院の入院患者でも、オーラルケアをすることで、回復の経過が良いことから、実施する施設が増えています。この様に、歯や口内の健康維持が、体全体の健康維持に直結していることは明らかです。

口内を清潔に保ち歯周病や虫歯を予防するには、毎食後の歯磨きが欠かせません。2011年の厚生労働省による歯科疾患実態調査では、歯磨きの回数は、1日1回が21.9%、2回が最も多く48.3%、3回以上は25.2%でした。この歯磨きを多くする習慣が、日本人の長寿の要因の一つとも考えられます。ちなみに私は、朝起きた時と毎食後の計4回歯磨きをしています。歯磨きで、健康な歯と清潔な口内を維持することが、長寿につながります。皆さんも、100歳超の長寿者の仲間入りを目指しましょう!

食と健康: 医食同源

2015年10月01日

10月になり、すっかり秋めいてきました。先月末から、短大での講義が始まりました。その為に無料健康相談は、月曜日の午後は休みになりますので、ご了承ください(2月末まで)。

授業を担当しているのは栄養士の卵達で、大切な命を如何に有効(幸せ)に過ごすかという内容です。人生で最も大切なものは健康ですから、毎年の講義で話しているのは、「家族や患者の健康状態に合わせて、献立や調理法を考えられる栄養士を目指して!」という事です。食事は、健康の基本です。バランスの良い食事が健康を守り、適切な栄養摂取が病気の回復を助けます。即ち、医食同源。栄養士ではない皆さんにも共通することですので、代表的な食事療法を、以下に紹介します。

食事療法が最も重要な疾患は、糖尿病です。他の疾患は、投薬などの治療である程度の回復は期待できますが、糖尿病の場合は食事療法(カロリー制限)が適切でないと改善はできません。糖尿病の食事療法の本を買って、本人と主に食事を作る方は勉強してください。本の選び方は、難しい文章が少なく、写真などで説明している方が理解しやすいと思います。

肝障害の食事の基本は、原因により異なります。ウイルス性の場合は、低脂肪、高蛋白が基本です。暴飲暴食が原因のアルコール性肝障害や脂肪肝では、飲酒量を減らしてカロリー制限の節制が不可欠です。

腎障害では、塩分制限と蛋白制限が基本です。カリウムは腎臓に負担になるので、野菜は湯通して果物は量を減らします。肥満のある方は、血圧が上がることで腎臓に負担になりますので、カロリー制限で減量します。

家族で食卓を囲む回数が多い家庭では、子供の非行が少ないというデータがあります。即ち、食事は単なる栄養補給ばかりでなく、精神面の健康作りにも有効なことが示されています。これからの季節は、家族そろって暖かい鍋物が良いですね。