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体内時計

朝食抜きが太るメカニズム

2018年11月10日

朝食を抜くと太りやすいことは、以前から経験的に知られていました。その典型的例が、相撲取りの食事です。相撲取りは太っていた方が有利なので、太るのも大事な稽古となっています。食事は、朝食は摂らずに朝と昼の兼用食と夕飯の2回です。

朝食を摂らないと何故に太りやすいのかのメカニズムは、これまで解っていませんでしたが、名古屋大学の研究グループが、ラットを使った実験で明らかにしました。実験方法は、ラットを「午前8時に朝食を摂る人」と「朝食を抜いて正午に最初の食事を摂る人」を想定した2つのグループに分け、それぞれに同じ量の高脂肪食を14日間与えました。その結果、朝食を抜いたラットのグループは、体重と体脂肪の両方が増えていました。この時、脂肪の代謝に関わる肝臓の体内時計が乱れていたこと、体温の上昇時間が短くてエネルギー消費が小さくなっていることが認められていました。

人間の身体は、朝起きて太陽の光を浴びることや朝食を摂ることで、活動をする準備が始まりますので、忙しい朝でも食事を摂ることは健康に欠かせません。(朝食抜きは脳出血リスク36%増睡眠と健康

 

サマータイムは健康リスク増

2018年08月20日

2020年のオリンピック・パラリンピックを期に、サマータイムを導入して2時間早める検討がなされています。しかし、この時間のズレは健康へのリスクを高める可能性が高いとえます。

人間の身体の中には体内時計が存在していて、この時計により日中は交感神経を働かせて活動し、夜間は副交感神経に切り替えて睡眠に入るリズムをコントロールしています(睡眠と健康:体内時計)。サマータイムを導入して2時間早めた時間にすると、体内時計とのズレが生じることで自律神経のバランスを崩し、不眠、めまい、心筋梗塞などのリスクが高まることが多くの研究で知られています。

2007年にドイツで55000名で行われた研究では、サマータイムで1時間早めたときに、身体がなれるのに導入時には4週間、終了時には3週間が必要との結果でした。サマータイムの終了時よりも導入時でリスクが高くなる理由の一つは、体内時計は1日が24時間ではなく24時間10分(以前は25時間と考えられていましたが、最新の研究では24時間10分)なので、毎日10分間のズレが存在します。このズレを日光や食事で毎日修正しているのです。サマータイムが導入されて2時間早まった場合は、2時間10分の大きなズレを修正しなければいけなくなるので、様々な障害が生じます。サマータイムの終了時には2時間遅くなるので、1時間50分のズレを修正することになり、導入時よりは修正時間は小さくなります。2つ目は、旅行での時差ボケが東方向で大きく、太陽の進行方向の西側では小さいのと同じで、時間を遅くする方が体内時計のズレは小さいのです。いずれにしても、ヨーロッパでの1時間の変更でさえも身体への負担が大きいのに、約2時間のズレを修正するのはより大きな負担であり、健康リスクが高まるのは明白です。健康管理には、規則正しい生活が基本ですので、サマータイムはこれに逆行します。

睡眠と健康: 体内時計

2015年09月01日

今日から9月です。お子さんやお孫さんは、元気に学校に行きましたか?子供の健全な成長や大人の健康維持には、規則正しい生活が不可欠ですが、体内時計を正確に作動させるためなのです。

私たちの体の中には体内時計があり、朝起きると血圧や体温が上昇し、就寝前に低下するなどのスケジュールを24時間の周期でコントロールしています。体内時計の主時計は脳にあり、全身の細胞に存在する末梢時計と連携して働いています。連休などでは夜更かしに成り易いのは、この体内時計は25時間周期なので、毎日リセットしないと1時間ずつ遅れるためです。なお、海外旅行の時差ぼけは、太陽と同じ方向への移動(西向き)では軽く、東方向で酷くなります。東方向では、1日が24時間より短くなるので、体内時計を長い方向に調整することに慣れていないためです。不規則な生活で体内時計が狂うと、肥満や糖尿病、がんなどの発症リスクを高めることが知られていますので、毎日のリセットが不可欠です。25時間周期の体内時計を24時間にリセットする為には、朝日(太陽光)と朝食が欠かせません。

朝日(太陽光)の青い光を浴びると、体内時計に関与する遺伝子のスイッチが入り、1日の活動の始まりを認識します。曇りや雨の場合でも、太陽光は届いていますので、有効です。逆に、スマホやパソコンは、太陽光に似た刺激があるので、夜の使用は体内時計を混乱させ不眠症などの原因にもなります。お子さんやお孫さんの深夜のスマホは、体内時計を狂わせるばかりでなく、前回記載の生長ホルモンの分泌も阻害しますので、成長や健康維持には悪影響があります。早寝して、起床したらカーテンを開け、体内時計をリセットしましょう。

起床後1時間以内に朝食を摂ると、抹消時計がリセットされ、主時計と同調するので、体内時計は規則正しく作動します。体内時計をリセットするのに有効な朝食メニューは、炭水化物とタンパク質を同時に摂ることです。欧米行きの機内食では、時差ボケをより軽減させるために、炭水化物とタンパク質を入れたメニューになっています。例えば、ご飯に魚の干物と味噌汁などの和食や、洋食でトーストなら目玉焼きにミルクなどを組み合わせることで摂取できます。朝食を摂らないと体内時計がリセットしにくいので、子供は勉強に集中力が欠け、大人は仕事の作業効率が低下することが知られています。

朝は、同じ時間に起きて、朝日を浴び、朝食を食べることで、体内時計がリセットされて、1日の活動リズムが出来上がります。規則正しい生活で、健康長寿を目指しましょう!