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健康診断

血液1滴で13種類のがんを早期発見のマイクロRNA法が臨床研究へ

2017年08月01日

血液1滴で13種類のがんを早期発見できるマイクロRNA法が、来月から国立がん研究センターで臨床研究が始まり、3年以内の実用化を目指します。この方法は、本ブログの2014年10月10日:がん・予防(2)の中の④最新のがん検査(マイクロRNA)で紹介しました。測定原理は、がん細胞と正常細胞では遺伝子の働きを調節するマイクロRNA(短いRNA)の種類が異なり、その違いはがんの初期段階であるステージ1でも高確率で検出できます。13種類のがんの検出率は95%以上で、乳がんでは97%です。

これまでのがん検診では、乳がん検診のマンモグラフィーに特徴的なように、陽性であるにもかかわらず検出できずに手遅れになるケースも見られており、その結果としてがん検診の受診者と受けないグループでは死亡率に差がありませんでした。2017年2月10日:乳がん検診:マンモグラフィーの問題点、2013年10月10日:がん検診で死亡率は低下しない

このマイクロRNA法によるがん検診が定期検診や人間ドックに取り入れられると、患者さんの肉体的負担は低減し、がんによる死亡率の大幅な減少が期待できます。さらに、米国立衛生研究所の小林博士の研究しているがん細胞の光治療は、外科手術の必要が無く高確率で完治できるのですが、こちらの臨床研究も進み実用化も近い様です。近い将来に、がんは“治る病気”になるでしょう。2015年7月10日:がん治療の最新研究(がん細胞の光治療&微少カプセル治療法)

 

反響の大きかった『コレステロールの基準値と対策』

2017年07月20日

本ブログでは、コレステロールに関する記事を沢山書いてきました。特に、コレステロールの基準値の記事は反響が大きく、未だに多数のアクセスがあります。また、病院での服薬治療に対する不安や疑問を持った方々や生活習慣の改善などについて知りたいという方々が、電話やメールでの無料健康相談にお越しいただいております。そこで改めて、コレステロールに関する基準値の解釈や安全な高脂血症対策について、私見をまとめます。

①     患者数急増の原因

高脂血症と診断された人間ドックの受診者は、1990年には8.9%でしたが、2014年には33.6%に急増しています。この急増の原因の一つとして、食生活の欧米化と運動不足が挙げられていますが、主因は基準値の引き下げにあります。1976年には総コレステロールの基準値の上限は 260 mg/dl でしたが、1989年に高脂血症薬メバロチン(スタチン系)が発売されると219 mg/dlになり、2014年からは199 mg/dlに引き下げられたので、基準値を超える受診者が増えるのは当然のことです。この基準値の引き下げとコレステロール悪者説の脅しで、高脂血症薬はドル箱商品になっています。2013年10月30日:健常人を病人にする方法(2:高コレステロール血症)

②     基準値とは?

基準値とは、健康に全く問題が無い対象者の95%が入る範囲(緑色の矢印の範囲)をいいます。従って、2.5%は基準値以下(水色の部分)になり、健康な人でも2.5%は基準値を超えます(オレンジ色)。人間ドックの受診者は殆どが病人ではないので、基準値を超える割合は2.5%を大きく超えることはないはずなのですが、30%以上の受診者(赤の部分)が高脂血症と診断されています。従って、現在の基準値の上限は、明らかに低すぎるといえます。2014年に人間ドック学会が示した基準値が本来の基準値の範囲であり、理にかなっているのです。2014年5月1日:基準値のウソが修正される?2015年4月1日:正義(人間ドック学会の基準値)は力で潰された?

③     対策

コレステロールは、細胞膜、ホルモン、胆汁などの原料として重要な成分ですので、低すぎると健康を害します。しかし、2014年の人間ドック学会の示した値を大きく超えることも芳しくありません。その場合の対策は、一部の家族性高脂血症の場合を除いて直ぐに服薬ではなく、食事療法と運動療法から始めるべきです。総コレステロールはLDL+HDL+中性脂肪/5で計算できますが、HDLが高値になる高脂血症は殆ど無いので、LDLと中性脂肪を減少させることで総コレステロール値の低減を目指します。LDLの低減には、食事療法が主になります。食物繊維の多い野菜、キノコ、海藻などを積極的に摂り、コレステロールや脂肪酸の多い動物性脂肪、魚卵、バターなどを減らします。中性脂肪の削減には、食事療法と運動療法の両者が有効です。食事では、飲酒量の削減、お菓子やケーキ類などの甘味を控えることが必須です。中性脂肪はエネルギー源ですので、運動で燃やしてしまう事で低下します。運動は、有酸素運動を継続することが必要ですから、楽しく出来ることを選んで下さい。2016年7月20日:高脂血症と対策2016年7月1日:「ホームページからの健康相談」の上手な利用法(LDL)

④     高脂血症薬の副作用

食事療法と運動療法で効果が認められない場合は、服薬治療に入りますが、副作用に注意してください。高脂血症薬として最も使われているのが、スタチンという種類の薬です。病院では安全な薬として処方しますが、横紋筋融解症という筋肉が溶ける副作用や肝炎を発症することがあります。横紋筋融解症の症状は、筋肉痛、手足のしびれや力が入らない、尿が赤くなるなどがあります。服薬直後に症状が出る場合もありますが、長期の服用中に徐々に出てくる場合も多くあります。その場合は服薬を止めて、症状が緩和するか様子を見て下さい。(確認は、血液検査のCKや尿のミオグロビン)2015年10月20日:ホームページからの健康相談(高脂血症薬は飲むべきか?)

⑤     健康食品

高脂血症薬の副作用を危惧する場合、健康食品としてお勧めなのはクコ(枸杞子)です。副作用が無く長期服用できる養命薬として漢方で用いられ、近年ではスーパーフードとして日本のみならず海外のセレブにも人気の食材です。その理由は、主成分のベタインには抗脂肪肝作用や血圧降下作用、生活習慣病の予防効果に加え美容効果も期待できるからです。私の研究している美露仙寿(めいるせんじゅ)は、クコを主成分に7種類の植物の濃縮液ですが、継続飲用で総コレステロールの低減、代謝や免疫力が向上するデータなどを医学誌に掲載しています。医薬品に抵抗のある方は、試してみて下さい。2016年9月1日:枸杞子(クコシ)のコレステロール抑制効果

以上が、コレステロールに関する私の見解です。自分の健康状態を判断するのに、どの基準値を採用するか?服薬をするか否か?は、読者の皆様の判断になります。色々な情報を考慮した上で、最善な方法を選択して下さい

 

 

健診で病人にされる!

2016年05月10日

年に1度の健康診断で、都内のH病院の健診センターに行ってきました。私(62歳)は健康を指導する立場にあるので、自分の健康状態は常に気を使っています。ですから、検査結果は全てA評価で当然と思いきや、BやCがあります。以前から書いてきたように、健診に行くと健康人も病人にされてしまう典型例ですので、BやCの結果についてコメントを書いてみます。

脂質は、総コレステロール204 mg/dl、LDLが130 mg/dl で基準値を超えているので、B判定になっています。現在の総コレステロールの基準値199 mg/dl、LDLは119 mg/dl以下ですが、この値をクリアする健康な中高年は半分もいません。健康な中高年の値は総コレステロールは男性で250 mg/dl、女性280 mg/dl、LDLは男女ともに180 mg/dl 位までなら問題ありません。コレステロールは細胞膜やホルモンの材料で、LDLはコレステロールを組織に運ぶ大切な成分なので、悪玉ではありません。実際、総コレステロールもLDLも基準値以下の人より、基準値を少し超えた人の方が長生きしているのです。基準値を超えて病院に行くと脅されて薬を飲まされますが、薬が改善するのは病院の経営状態(収入)であり、患者の健康ではありません。参考として、

2014年5月1日:基準値(正常値)のウソが修正される?

2013年10月30日:健常人を病人にする方法(2:高コレステロール血症)  をご覧ください。

血糖値は104 mg/dl で、基準値の99 mg/dl を越えていてC判定でした。健康な中高年の値は、男性114 mg/dl、女性106 mg/dl 位までは心配いりません。私の場合は、昨年も同じ値なので、体質と解釈できます。ただし、毎年少しづつ上昇して100 mg/dl を超えている方は、近い将来に糖尿病の可能性がありますので、食事と運動の改善が必要です。

肝機能はγ-GTが75 U/l で、基準値を超えているのでB判定でした。晩酌は週に3~4日で日本酒1~1.5合位、居酒屋はたまに行く程度です。検診の直前に飲みに行ったのが影響しているのでしょう。でも、GPTが20 U/l 台なので、肝臓の疲れは極軽いものと考えられます。大目に見ましょう。

全体を評価すると、62歳では全く問題ないので、BやC評価は心外です。私の場合、今の食事や運動(主に水泳)を継続していれば良いと考えています。BやC評価を多くしているのは、病院のお得意様(患者)を増やす作戦ですので、協力する必要は有りません。

健診の問題点は、①基準値が厳しすぎるので、全く健康な中高年でも半分以上は再検査になること、②昨年や一昨年のデータは考慮せずに機械的に判定するので、体質的に高い・低い場合も異常値とみなされることです。真に治療が必要な人を見つけるような健診であって欲しいものです。

健常人を病人にする方法(1:基準値のからくり)

2013年10月20日

健康な人を病人にする方法には、大きく2つの方法があります。1つ目は、生化学検査や血液学的検査で測定項目を増やすことなのです。これでなぜ病人が作れるかと思われるでしょうが、次のようなカラクリがあるのです。それは、各測定項目にはそれぞれ基準範囲があります。この基準範囲がどのように決められているのかをご存知の方はあまりいないでしょうから説明します。
基準範囲とは、健康な人(健常者)を沢山集めて、その内の95%の人が入る範囲なのです。解り易くするために、仮に100人の健常者を集めたとします。その人たちである検査項目を測定した時に、95人が入る範囲が基準値なのです。ですから、残りの5人の健常者は、この範囲から外れます。即ち、2.5人は低めに外れて、2.5人は高めに外れます。この方たちは、その測定項目に関して生まれつき低いまたは高い体質なのです。基準値を外れたから即異常ということではありません。

健常者で1項目を測定した場合は、上記の様に、基準範囲に入る確率は95%(0.95)なので、2項目の測定では 0.95 x 0.95 = 0.90 になりますので、100人中では90人が正常で、残りの10人は基準値を外れます。さらに多項目の測定をした場合、異常無しの確率はどの位になると思いますか?なんと、10項目では0.60、20項目なら0.36、30項目で0.21、40項目は0.13、50項目では0.08になるのです。異常無しは、健常者100人の内たったの8人だけなのです。残りの92人の健常者は、結果の表に赤い字で“H”と書かれます。すると、多くの方は動揺して、本当に病人になった気分に変化していくのです。これが病院へ招き入れる手口になることを知っておきましょう。


この様に、多項目を測定すると、異常値のHマークをつけられる人が多く出ます。この中の多く方達は、遺伝的に高い値の要素を持った健常者なのですが、一部には病的に上昇した人も入っています。では、どの様に病人かを見分ければ良いのでしょうか?例えば、今年の検診の測定値が120だったとします。当然、Hマークがついてきます。この場合、体質が原因なのか、それとも体に異常があるのかは、検査データを見慣れた医療関係者なら他の検査結果を含めたデータ全体のバランスで判断します。しかし、一般の方にはこれはできません。簡単は判断の仕方は、一昨年も昨年も今年もずっと120だった場合には、体質的な結果の可能性が高いと考えます。一方、昨年や一昨年の結果が80位で、今年になって急に120に上昇した場合には、病的な要因が発生している可能性が高いと考えます。この様な場合は、専門家の判断を仰いだ方が賢明です。

がん検診で死亡率は低下しない

2013年10月10日

    上記のように、ドックや健診は病人を作るのが主目的であるので、医療経営に潤いを与えることはあっても、死亡率の低下に貢献することはありません。実際、18万人以上の患者を対象にした臨床研究(2012年、Krogsboll LT)でも、心血管死亡率への定期検診の有用性は無いとの結果になっています。この研究では、がん死亡率との関係も調べていますが、受信者と定期検診を受けなかった者とは、がん死亡率に全く差がありませんでした。一般的な検診は、死亡率の低下には無意味なのです。

    がん検診の表向きの名目は、早期にがんが発見できるので、死亡率が下がるという大義名分です。日本人の死因の第1位はがんであり、約3割を占めています。ですから、がん検診が有効であるという神話に対して、殆どの日本人は疑いを持ちませんが、本当は意味がないのです。その根拠を示します。最初は卵巣がんの検診ですが、結論は、逆に死亡率を上げたので、検診は有害と報告されています(2011年 Buy)。この研究は、55~74歳の8万人の女性で、血液のCA-125 と経膣超音波検査が、年1回で6年間行われています。その結果、卵巣がんでの死亡率(1年間に1万人当たり)は、受診者群は3.1人で、受診していない群では2.6人でした。即ち、卵巣がんの検診を受けた群の方が死亡率は高いのです。その上、検診の偽陽性の約3000人のうち3分の1の約1000人が外科的フォローアップを受けた結果、15%が深刻な合併症を発症したのでした。この人達は、検診を受けなければ健康で過ごせたのです。卵巣がん検診は、無意味というより有害なのです。

 女性の乳がん検診のマンモグラフィーも多くの女性が受診していますが、これも乳がんの死亡率低下には寄与しないと報告されています。乳がんは、近年その死亡者数が増加していることから、女性の検診希望者が多くなっています。しかし、デンマークの1997~2006年の研究では、マンモグラフィーには乳がんの死亡率を下げる効果は無いと報告されています。さらにカナダの予防医学委員会でも、40歳代のマンモグラフィー検診は必要なしとの報告をしています。実際、マンモグラフィーは偽陽性の多い検査法です。この調査でも約3人に1人は偽陽性で、その内の10人に1人はバイオプシー(生検)を受けているのです。マンモグラフィーによる放射線の被曝に加え、偽陽性による精神的ストレスがあります。これは、偽陽性といわれることで精神的な落ち込みがあり、精密検査の結果が出るまでの間は、ストレスで熟睡できない方も多いのです。さらに、約30人に1人の生検は、肉体的な侵襲を伴っています。病院にとっては、検査料が入るのでメリットは大きいのですが、患者にとってリスクは多くてもメリットは少ないのです。

 男性では前立腺がんの検査として、PSAが汎用されています。では、PSAで前立腺がんの死亡率は低下しているのでしょうか?2012年のオックスフォード大学の76000人の研究でも、前立腺がんの死亡率を低下させないと報告されています。この研究では、検診を受けているグループと受けていないグループで比較すると、前立腺がんの累積発生率と死亡率は、どちらも検診を受けたグループで僅かに高いという逆の結果だったのです。即ち、定期的にPSAを測定しても、前立腺がんを早期に発見して死亡率を下げることには寄与しないのです。PSAとは前立腺から分泌される蛋白質なので、前立腺の大きさと比例して値が高くなり、また炎症やがんで刺激されることにより分泌量が増大します。従って、PSAテストは前立腺がんの発見には役に立つのですが、死亡率の低下には貢献しないのです。例え前立腺がんと診断されても、PAS値が4 ng/ml 以下の場合、半数以上は悪性度の低く、経過観察で良い症例です。しかしながら、約半数の患者ではこの段階で切除術が行われ、過剰と考えられる治療がなされています。2012年の国立がん研究所の推定では、約25万人が前立腺がんを発症し、約2.8万人が本症関連で死亡するとしています。この内、PSAのスクリーニング検査の恩恵はどの位あるのでしょうか?アメリカの予防サービスたすくフォースの勧告では、PSAのスクリーニングテストで発見された症例のうち、90%の患者は手術などの治療を受けるのですが、実際に前立腺がんによる死亡を回避できるのは0.1%で、逆に手術による合併症で死亡するのは0.3%、1%以上の患者は尿失禁などの後遺症で苦しんでいるのが現状です。この数字を見ると、過剰な検査と治療の有害性が、スクリーニング検査の有用性を上回っています。これは、定期的な検査や過剰な手術などが、病院の収入源となっているのです。

 この様に、がん検診は病院の経営にとってメリットはあるのですが、患者にとっては危険が大きいことも知っておくべきです。