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喫煙

喫煙で遺伝子変異

2016年11月10日

タバコの喫煙本数が多いほど、喫煙期間が長いほど、遺伝子に変異が起きる確率が増すことを、国立がん研究センターと理化学研究所などの研究チームが、アメリカの科学誌サイエンスに発表しました。

世界の5243人のがん患者を、タバコを吸う人と吸わない人に分けて遺伝子データを解析した結果、肺、咽頭、口腔、膀胱、肝臓、腎臓のがんでは、喫煙者で遺伝子の変異が多い結果になっていました。特に喫煙との関連が指摘されている肺がんでは、毎日20本(1箱)を1年間吸うと、150個の遺伝子変異が蓄積すると推計されています。遺伝子の変異があった場合には、体の防御作用が働いて、変異を修正してがん化を防いでいるのですが、変異数が多くなると修正作業が間に合わなくなってきます。その結果、喫煙による遺伝子変異から肺がんに進行していくと推測できます。肺がんの年間患者数(死亡者数)は、男性 9.0万人(5.5万人)、女性 4.3万人(2.2万人)と、罹患率も死亡者数も多いがんです。喫煙は、百害あって一利無しですので、禁煙しましょう。

がんの5年生存率と10年生存率 (2:膵臓がん)

2016年02月10日

がんの生存率の調査結果から、膵臓がんは5年生存率(9.2%)、10年生存率(4.9%)と最も生存率が低く、危険ながんであることが示されています。最近では、ジャーナリストの竹田圭吾氏が、51歳の若さで亡くなったことがニュースになりました。一般的に、膵臓がんは症状に乏しく、検診のエコー検査などでも見つけにくいので、発見された時には既にかなり進行していること多いです。初期段階のStage Ⅰで発見されたとしても、下表のごとく、5年生存率は40.5%、10年生存率に至っては29.6%しかありません。病期の進行したⅢ~Ⅳ期では、僅かに一桁またはそれ以下の生存率です。膵臓がんでは、現時点では決定的な治療法は無く、手術と抗がん剤で対応していますが、殆ど無力な状況です。

膵臓がんは、罹患してしまうと長期生存が厳しい現実ですから、リスク因子を軽減することが大切です。膵臓がんの原因は、遺伝性は10%以下で、大部分のリスク因子は喫煙(2.2倍)、肥満(2倍)、飲酒(1.38倍)、糖尿病(血糖値10mg/l当たり14%)などがあげられます(研究者によりリスク倍率は異なります)。従って、日常生活を改善することが重要です。①煙草は百害あって一利なし。禁煙しましょう。②BMIが22~25位の体型が、最も病気が少なく長生きできます。食事療法と運動療法で、適正な体格にしましょう。③酒は百薬の長ですが、飲み過ぎは毒に変わります。適量に。④糖尿病は、多くの病気を誘発します。適正な血糖値にコントロールしましょう。これらの生活改善で、他の疾患にもなり難い健康体に近づきます。

万が一に罹患してしまった場合には、諦めずに生きる気力を保つことです。私がこの会社にお世話になってから、医学の常識では理解できない症例を幾つも経験しています。その一つが、昨年の膵臓がんでした。除去手術のために開腹した方は、既に手の施しようがなくそのまま閉じたので、通常はごく短期間で亡くなります。この方は、抗がん剤の投与を拒否して、美露仙寿(めいるせんじゅ)と免疫療法の併用を選択しました。現在は、腫瘍マーカーは正常値で、ゴルフを楽しむほどに回復しています。すい臓がんの生存率は極めて低いのですが、その低い数字の中に自分が入ることに気力を集中しましょう。生きようとする気力は、免疫力や回復力を高めます。

がん・予防(3)

2014年10月20日

5. 日常生活でのがんの予防
がんには、医学的に確立された予防法は存在しません。しかしながら、がんの発症には喫煙(30%)、食事(30%)、運動不足(5%)、飲酒(3%)などの生活習慣が間接的に関与すると考えられています(ハーバード大学がん予防センター)。従って、がんを予防するには次の項目の生活習慣の改善が望まれます。

5-1. 体型(BMI)
肥満は、直接的にがんの発症には関与しないと言われています。しかし、最近に国立がん研究センターが発表した研究では、肥満は日本人女性が乳がんになる危険性を高めるとのことです。調査結果では、閉経前でも後でもBMIが大きいほど危険性は高まり、閉経前にBMI 30以上の肥満では基準値内(23~25)の人の2.25倍で、閉経後ではBMIが1上がるごとに危険性が5 %上昇しました。なお、欧米では、閉経前は肥満が乳がん発症リスクを下げる調査結果が報告されているので、人種により異なることが考えられます。
BMIの計算式は、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)です。
実際に長生きしている方のBMIは、基準値の25を少し超えたやや肥満です。しかし、病気になる確率が最も低いのは、男女ともに22で、痩せも肥満も病気をする確率が高くなります。従って、健康で長生きするためには、BMIが22~25位の範囲になる事が望まれます。

5-2. バランスの良い食事
野菜や果物にはビタミン類や食物繊維など、がん予防だけでなく、健康維持に必要な成分も含まれています。特に、季節の旬の野菜(露地物)は栄養価が高いうえに、暑さ寒さへの対策にもなる成分を含んでいます。毎食毎に野菜を摂取し、果物もデザートとして毎日1回以上は食べるようにしましょう。食後の緑茶は、健康維持やがん予防にも効果的です。なお、中高年にとって肉類はコレステロースや中性脂肪を上昇させるので良くないとの考えから、菜食主義の方もおられます。肉類は、食べすぎるのが良くないのであって、適量をバランスよく食べることが、健康維持には必要です。なお、料理や飲み物が熱過ぎると、食道などの消化管を痛め、がんを誘発しかねません。適温で。
塩分の摂り過ぎは高血圧になると言われていますが、実際には2~3割位の少数の塩感受性を持った人だけで、残りの7~8割では塩分は尿中排泄されるので高血圧にはなりません。しかし、すでに高血圧になっている場合には塩分はさらに血圧を上昇させますし、腎機能が低下している場合には負荷がより大きくなります。また、塩感受性があるか否かは検査をしないとわからないので、塩分制限が必要ということは間違いではありません。

5-3. 有酸素運動
有酸素運動の代表といえば、ウォーキング(早歩き)です。歩くことが健康に良いことは誰でも知っていますが、何故に良いのかご存知でしょうか?その答えは、心臓から全身に送り出された血液が、どの様に心臓に帰ってくるかを考えればわかります。例えば、足の血液は重力があるので、自然に心臓に帰ることはできません。足の筋肉が伸縮を繰り返して、心臓まで押し上げているのです。従って、足の筋肉が発達している程、血液循環が良くなるので、酸素や栄養分を全身に届けやすく、老廃物の回収率も良くなります。また、血液の流れが良くなるので、血圧も安定します。さらに、ラジオ体操で全身の曲げ伸ばしをすることで、効果がアップします。毎日30~60分程度の有酸素運動が、健康維持には必要です。

5-4. 禁煙
タバコは、肺がんとの関連が強く指摘されている上に、血管を細く固くして血圧を上昇させるなど、百害あって一利無しです。近年、禁煙志向が高まっているにもかかわらず肺がん患者が多いのは、肺がん発症には長期間かかるので、以前に喫煙していた人が今発症していると考えられます。今後は、喫煙率の低下で肺がんの罹患率や死亡率も低下していくでしょう。

5-4. 飲酒は適量に
酒は百薬の長といわれるように、1合以内の酒(ビールでは大瓶1本以内)は血行を改善し、血圧を調整するなど、薬として作用します。実際に、適量の飲酒をする人の方が長生きなのは統計学でも証明されています。しかし、1合以上の酒は、肝臓に負担をかけ、血圧を上昇させるなど、毒として作用します。“過ぎたるは及ばざるが如し”です。なお、日本人の半分以上は遺伝的にアルコールを分解する能力がありません。飲めない体質の方には、少量でも薬にはなりませんので、無理に飲む必要はありません。

5-5. C型肝炎ウイルス、ピロリ菌
肝炎ウイルスの内、A型は慢性化しません。B型は、乳幼児期の免疫力の弱い時期の感染か、大人の場合は透析患者のような免疫力が極端に低下した場合以外は、慢性化しません。問題なのはC型肝炎ウイルスで、60~80%位の高い確率で慢性化し、肝硬変、肝がんへと進行します。肝臓がんの約80%は、C型肝炎が原因です。インターフェロンとリバビリンの併用で治療しますが、日本人に多いウイルスのタイプである1型の場合(約70%)には、成功率は50%以下と低いのが現状です。ウイルスタイプが2型(約30%)ならば、約70%以上の確率でウイルスを消去できます。C型肝炎ウイルスに感染しても、肝臓がんに進行するまでには平均30年近くかかりますので、60歳代以上で、軽度の慢性肝炎程度ならば、治療の有無で計算上の寿命は変わらないことになります。治療には、微熱や食欲不振などの副作用が高率で見られます。年齢、ウイルスのタイプと量、肝炎の進行度などを総合的に判断して、治療を考えるべきと思います。
ヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)の感染は、上述のように、胃がんの発症に関与します。中高年では7~8割がピロリ菌に感染していますが、その内で胃がんになるのは約0.5%(200人に1人)の割合です。除菌を選択すべきか、または定期検診で初期発見を選ぶかは、本人の考え方でしょう。

以上、がんの予防として述べましたが、これらは生活習慣病の予防と基本的に同じです。免疫力を高めて、健康な生活を送ることが、即ちがん予防につながります。
次回は、美露仙寿のがん予防の研究成果についてです。お楽しみに!