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脳ドック

脳外科医の仕事を増やすための脳ドック

2013年09月20日

 脳ドックは本当に意義があるのでしょうか?脳ドックは、日本では普及してきましたが、海外では全く普及していないのは何故でしょうか?脳ドックの意義として、動脈瘤の発見や腫瘍の発見に有用といわれています。これらは初期には自覚症状がないのですが、特に動脈瘤はくも膜下出血の予防に役立つので、早めに動脈瘤を見つけられれば、そこを塞ぐような処置をすることで(足や手の血管からカテーテルを入れて治療します。)くも膜下出血を未然に防ぐことができるというものです。確かに、この様なメリットがありますが、ではデメリットはというと全く知らされていないのです。メリットとデメリットを天秤にかけて、どちらがより重いかを判断しなければいけません。

脳ドックで検査すると、ある程度年を重ねれば、誰でも微細な脳梗塞や脳梗塞跡が見つかるのは良くある事で、数ミリの小さな脳動脈瘤が見付かるケースも特別な事ではありません。未破裂脳動脈瘤を有する頻度は、健康成人の3~6%です。この内、一年間に破裂する頻度は1~2.3%(未破裂脳動脈瘤を有する方100人の中で一年間に1~2.3人破裂するという意味です)といわれていましたが、欧米での大規模研究では1cm未満の小さな瘤が破裂することはきわめて稀で、1cm以下なら0.05%、1cm以上の瘤でも年に1%程度でした。年間破裂率を1%として計算すると、20年で20%が破裂し、残り80%は破裂しません。1cm以下の大きさなら破裂する確率はこの半分ですから、20年間でも90%の患者は破裂することはないのです。つまり破れない確率の方がはるかに高いのです。全国で500以上の病院で脳ドックが行われ、脳ドック学会も毎年開かれている日本においても、脳ドックで見つかった未破裂脳動脈瘤の年間破裂率を科学的に追跡調査したデータは未だありません。恐らく、この様なデータを調査して公表したら、脳ドックを受ける患者が激減することを恐れているのではと想像してしまいます。

脳ドックで未破裂脳動脈瘤が見つかった場合、手術をするか放置するかの選択になりますが、いずれの場合にもデメリットが大きいのです。手術の危険性は、動脈瘤の部位や大きさ、術者の経験と技量、また合併症の有無とその種類によって左右されるものです。一般的には、開頭手術による後遺症の出現率は2-7%、死亡率は1%以下と報告されています。また、脳血管内治療によるコイル塞栓術も、十分に経験のある術者が行う場合には、開頭手術とほぼ同等の危険率であるとされています。放置しても破裂する頻度は上記のように極めて低いのに、この様な危険を冒すメリットは低いでしょう。

放置の場合は、見付かった事によるショックは本人に取っては大きく、逆にそれが多大なストレスになる可能性は高いのです。例え「この位なら放って置いても大丈夫ですよ」、と言われたとしても、自分の脳の中にそんな嫌な物を抱えて今後も生活するというのは、爆弾を抱えている様な気持ちになり、かなりのストレスになると思いますし、こっちの方が胃癌とかになりそうで余程怖いです。いざ知ってしまったら、どんなに「大丈夫!」と言われても、もう元の平穏な生活には2度と戻れません。普段の生活にこそ注意を払って、しかるべき時には迷うことなく即座に病院に行く方がより健康的といえます。

 本誌の最初で、病人作りの健診・ドックについて書きましたが、脳ドックも全く同じで、脳外科医の仕事を増やすことが主目的なのです。