ライオン株式会社の特定保健用食品(トクホ)の「トマト酢生活」は、“驚きの血圧低下作用”や“”薬に頼らず食生活で血圧対策”などの表示が著しくその効果を誤認させるとして、消費者庁から再発防止勧告を受けました。トクホで許されている表示は、「血圧が高めの人に適している」などであり、上記のような表示は禁止されています。
「トマト酢生活」の原材料のトマトと食酢は、どちらも健康には良い食物です。昔から、トマトが赤くなると医者が(仕事が無くなるので)青くなると言われています。トマトはGABA、グルタミン酸、カリウムなど、食酢も血管拡張作用が報告されているので、降圧効果が期待できます。しかながら、いずれの作用も穏やかであり、医薬品のような急激な改善効果は薄いと考えられます。従って、「血圧が高めの人に適している」といった表現が適切です。多くの消費者は、トクホの表示やうたい文句を信用して購入していますが、必ずしもその通りではありません。
トクホとは、表向きは健全な健康食品に対して政府がお墨付きを与えたものですが、現実はトクホの審査や認可機関の職員の殆どが天下り役人で、1件当たり約1億円の審査費用は天下り役人の収入源になっています(本ブログ2014年9月1日と10日の“特保のウソ”をご覧ください。)。従って、中小企業では1億円の壁のために良品でもトクホは取得できないので、必ずしもトクホの有無が製品の良・不良という訳ではありません。トクホを取得したメーカーは、審査費用の回収の為に多量の商品を販売したいので、如何にも効果がありそうなイメージで宣伝します。多くの消費者は、そのうたい文句にひかれて購入するのですが、殆ど効果のない商品や不当表示に近い商品も存在しています。従って、トクホという表示だけでなく、うたい文句通りの効果が有るのかも吟味する必要があります。
トクホを取得するには研究データが必要ですが、一般的には“1~2ヶ月間摂取すると、○○も低下しました。”というデータです。これには裏があります。先ず研究対象が、肥満のある人や、高脂血症、糖尿病などの患者を用いていることが多々あります。このようなケースでは、一般の消費者に同様の効果は期待できません。次に、○○低下しましたというデータです。1ヶ月や2か月で一時的に低下しても、それが長期で継続性があるかはわかりません。長期的な検討は費用も労力も必要なので、私の研究している漢方飲料の美露仙寿(めいるせんじゅ)のように、複数の医学論文に長期の検討結果を掲載している製品は、ほんの一握りだけです。信頼できるデータのある製品を選択してください。
トクホとは別の話題ですが、輸入健康食品の半数以上に副作用の危険性が高い医薬品が含まれているという厚生労働省の調査が公表されました。特に、「劇的に痩せる」や「精力増進」などのうたい文句は危険性が高いです。他には、エナジードリンクのカフェイン中毒での死亡例がありました。かっこ良い、可愛い、簡単に栄養が摂れるなどの理由で飲みすぎると、食品栄養のバランスを崩す可能性があり、健康食品で逆に健康を害してしまいます。健康を守るのは、バランスの良い食事と適度な運動です。健康食品で補うときは、安全性と効果をよく吟味して良い物を選びましょう。
しかしながら、一般の方にはどれ位の効果があるのか、危険性がないのかを判断するのは非常に困難です。そこで、健康食品を選ぶ最もわかり易いポイントを挙げてみます。それは、販売している会社に医療の国家資格(医師、看護師、薬剤師など)を有した常勤社員が、商品に対する質問や相談に対応しているかです。医療職の社員を雇用すると人件費がかさむので、利益第一主義の会社ではあり得ません。さらに、全く効果のない場合などは対応が煩わしくなるので、相談窓口を作ることはありません。相談窓口の直通の電話番号や住所などが明記されている会社は、製品の内容に自信があり、かつ信用第一の理念を持った企業なので、信用度は高いといえます。