今年も残すところ僅かとなりました。本ブログには沢山のアクセスがあり、また無料健康相談も多くの方々にご利用いただきまして、有り難うございます。健康相談の内容で多かったのは、がんに関するものでした。近年では、がんは二人に一人が罹患し、三人に一人が亡くなる疾患ですから、ご相談の件数が多くなります。その中で、治療中や予防における「糖質の制限とケトン生成食」に関するご相談があります。研究者の中には、がん患者は糖質を制限して、ケトン生成食(脂肪とタンパク質)にすべきとの意見がありますが、私はこの意見には反対であり、3代栄養素(糖質、タンパク質、脂質)のバランスを大きく崩すべきでないと考えています。この意見の相違を解説します。
糖質制限とケトン体食の主張
がん細胞は、通常の細胞と比べると3~8倍くらい多くのブドウ糖を消費して、爆発的な速度で増殖します。従って、栄養源であるブドウ糖を与えなければ、がん細胞は飢え死にするとの考えです。さらに、肉や脂肪などのケトン生成食からは、がん細胞は栄養を補給できないが、正常細胞では栄養源となるので、ケトン生成食にすることで正常細胞だけが生き残るとの論理です。
異議
確かに、がん細胞はブドウ糖をエネルギー源として増殖しているので、上記の論理によりがん細胞が飢え死にして、回復しそうな気がします。しかし、この理論は実験室のシャーレの中で培養しているがん細胞を死滅させることは出来るでしょうが、複雑な人間の身体を維持するには当てはまりません。なぜなら、ブドウ糖を制限するとがん細胞は飢え死にしますが、その前に正常細胞の方が先に飢えて死んでしまいますので、生命を維持出来ません。さらにがん細胞は、ケトン生成食を栄養源として利用できないとのことですが、脂肪とタンパク質だけでも生き延びることが出来るという研究報告があります。さらに、糖質制限とケトン生成食では、米や果物などを全て絶ち、脂肪とタンパク質だけの食事になりますから、栄養のバランスを崩してしまい、回復力が低下します。
免疫力と体力をつける食事
がんと闘うには、免疫力と体力をつけることが不可欠です。そのためには、糖質としての炭水化物や良質のタンパク質、腸内細菌を活性化する発酵食品、抗酸化力を高める野菜や果物などをバランス良く摂取するべきです。加えて、ウォーキングやラジオ体操などの有酸素運動で、代謝活性を促進させることが、がんと闘うためには必要です。(がん・予防(1)、(2)、(3)、(4))
将来的に、ご自身や家族ががんとの闘病になったとき、どちらの主張が正しいかを吟味して対応して下さい。
* 健康で幸せな年をお迎え下さい。