2020年のオリンピック・パラリンピックを期に、サマータイムを導入して2時間早める検討がなされています。しかし、この時間のズレは健康へのリスクを高める可能性が高いとえます。
人間の身体の中には体内時計が存在していて、この時計により日中は交感神経を働かせて活動し、夜間は副交感神経に切り替えて睡眠に入るリズムをコントロールしています(睡眠と健康:体内時計)。サマータイムを導入して2時間早めた時間にすると、体内時計とのズレが生じることで自律神経のバランスを崩し、不眠、めまい、心筋梗塞などのリスクが高まることが多くの研究で知られています。
2007年にドイツで55000名で行われた研究では、サマータイムで1時間早めたときに、身体がなれるのに導入時には4週間、終了時には3週間が必要との結果でした。サマータイムの終了時よりも導入時でリスクが高くなる理由の一つは、体内時計は1日が24時間ではなく24時間10分(以前は25時間と考えられていましたが、最新の研究では24時間10分)なので、毎日10分間のズレが存在します。このズレを日光や食事で毎日修正しているのです。サマータイムが導入されて2時間早まった場合は、2時間10分の大きなズレを修正しなければいけなくなるので、様々な障害が生じます。サマータイムの終了時には2時間遅くなるので、1時間50分のズレを修正することになり、導入時よりは修正時間は小さくなります。2つ目は、旅行での時差ボケが東方向で大きく、太陽の進行方向の西側では小さいのと同じで、時間を遅くする方が体内時計のズレは小さいのです。いずれにしても、ヨーロッパでの1時間の変更でさえも身体への負担が大きいのに、約2時間のズレを修正するのはより大きな負担であり、健康リスクが高まるのは明白です。健康管理には、規則正しい生活が基本ですので、サマータイムはこれに逆行します。