エボラ出血熱(エボラウイルス病)のワクチンの臨床試験で、好結果が報告されました。
エボラ出血熱は、エボラウイルスの感染症で、潜伏期間の2~21日後に発熱、頭痛、筋肉痛に始まり、症状が進むと歯肉や消化管から出血し、致死率が非常に高いのが特徴です。感染経路は、発症者の血液や排泄物等との接触で、空気感染は有りません。エボラウイルスの5つの株のなかで人に感染するのは4株で、病原性があるのはスーダン株(致死率50~55%)とザイール株(致死率80~90%)の2種類です.
これまで治療方法が確立されていないために、アフリカのギニア、リベリア、シオラネオネの3か国で多くの死者が報告され、本年6月24日現在では患者数27476名、死者は11222名でした。この内、医師や看護師などの医療スタッフの感染者は872名、死者は507名でした。多くの方が無くなったのは残念なことですが、この方たちを助けようと尽力された医療スタッフが大勢亡くなったことは、痛恨の極みです。多くの医療スタッフが亡くなったのは、現地が貧しい地域であり、防護服や消毒設備などがけた違いに不備であることが大きな要因です。そのような悪条件の中でも、彼らは自らの危険を顧みずに医療に命をささげた“英雄”であり、このような勇気ある人たちこそが長生きして、奉仕活動を継続していただきたいものです。
エボラウイルスワクチン(VSV-ZEBOV:対ザイール株)の臨床試験は、西アフリカのギニアで行われ、エボラ出血熱患者が身近に発生して感染の危険性が高い4123人にワクチンを投与したところ、1人も感染が認められませんでした。また既に感染した患者に投与した場合にも、全員に予防効果が認められました。さらに、重大な副作用も報告されていません。このワクチンの使用により、患者の回復率は格段に向上することが期待できますし、治療に携わる医療スタッフの命を守る事が出来ることは何よりの朗報です。日本政府には、ワクチンの開発と製造への資金と人的な貢献などにより、日本の存在を世界に示していただくことを期待します。
日本では、東京都東村山市の国立感染症研究所で、エボラウイルスのような非常に危険なウイルスを扱う事が出来る施設がようやく稼働することになりました。この施設は、周辺住民の反対で建設から34年も稼働出来ずに、低いレベルの業務のみを行ってきました。周辺住民の方の不安は理解できるのですが、この様な施設を稼働させないと、エボラウイルスが日本に侵入した時の防御態勢に支障が出かねません。施設の業務を丁寧に説明することで、不安を和らげていただきたいと思います。また、エボラ出血熱の患者が出た場合の入院施設では、搬送や防御服の脱着の訓練などが行われています。空港などの検閲だけでは100%の侵入防止はできません。国内発症の場合を想定した訓練は充分にしておいて、ワクチンも早急に備蓄をしていただきたいものです。