風邪に抗生剤を使わない病院に報酬⇒?????

2018年02月20日

厚生労働省は、3歳未満の乳幼児で、風邪や下痢に抗生剤を使わずに適切な説明をすれば、医療機関に報酬(1件当たり800円)を支払う新たな仕組みを4月からの診療報酬改定に盛り込みます。さらに、病院内で抗生剤を適正に使うよう教育したり、耐性菌の発生率を調べたりする医師や薬剤師らのチームを設置した場合の報酬も新たに設ける予定になっています。その理由は、誤った使い方によって薬が効かなくなる「耐性菌」の広がりを抑えるためですが、本来は処方する必要の無い抗生剤を処方しないだけで報酬を与えるのか、超高齢化社会で医療費が膨れあがっている状況の中で、疑問を感じます(風邪には抗生物質を使わない:厚生労働省の医師向手引き)。この報酬は、私たちが支払っている健康保険料から支払われるのです。

風邪の原因の約9割はウイルスが原因なので、抗生剤は効果が無いことは本ブログで度々書いています(風邪への対処法風邪とインフルエンザ)ので、読者の皆様は既に理解されている事でしょうし、ましてや医療従事者なら常識です。しかしながら、必要の無い抗生剤が処方され続けるる理由は、患者側と医師側の両方にあります。患者は、約半数がウイルスには抗生剤が効かない事を知らないし、薬をもらうと安心します。医師側は、薬を処方しないと患者からヤブ医者扱いされることや、処方箋で利益がでることなどが挙げられます。

医師は、必要の無い薬は「必要ない」とはっきりと説明しなければいけません。その結果、耐性菌の減少や、飲み残しの薬剤が減少します(残薬(飲み残しの薬)が年475億円分)。患者側も、健康を守るのは自分自身であることを自覚して、基本的な医療の知識を勉強することが必要です。本ブログが活用されることを願っています。

セカンドオピニオン(前立腺がんにおける漢方)

2018年02月10日

がんの患者数は年間約98万人(男性56万人、女性42万人)で、死亡者は約37万人(男性22万人、女性15万人)と増加傾向にあります。これらの中で前立腺がんは、死亡者数は全がんの1%程度(男性で5.6%)と少ないのですが、患者数では男性がん患者の17.6%を占め、最も多く発症しています。治療法は、手術、放射線、ホルモン療法などがあります。

事例(80歳男性):

排尿の際に痛みを感じて受診。PSAが64(基準値:70歳以上 4.0 ng/mL 以下)と高値で、前立腺癌と診断される。担当医からは手術を勧められるが、本人は後遺症などを考慮して手術は望まず、他の治療法を模索。

治療法は、手術、放射線、ホルモン剤などがあり、がんの悪性度や進行度、年齢などを総合的に考慮して選択します。手術の後遺症には、尿管括約筋の損傷により尿漏れや失禁が多発し、性機能障害(勃起障害:ED)などもあります。放射線治療では、外部照射では排便障害、内部照射でも排便困難や排尿痛などがあります。ホルモン剤療法では、生活に支障が出るような副作用は比較的少ないのですが、乳房の女性化や性機能障害が少数見られます。

セカンドオピニオン:

漢方により免疫力を向上させることで自己治癒力を高めると共に、ホルモン剤の投与で回復することを期待して、1~2ヶ月の間PSAで経過観察する。

漢方飲料は、がん細胞を攻撃する白血球(NK細胞およびキラーT細胞)を活性化することが確認されている美露仙寿(めいるせんじゅ)を用いた(医学検査 2012年 541-547)(がん・予防(4)医師は自分に抗がん剤は使用しない)。美露仙寿の15 ml 瓶 を1日15本飲用し、その後に徐々に飲用本数を減らした。加えて、ホルモン剤を3ヶ月毎に投与と、内服薬2種類を毎朝夕の2回を継続した。その結果、治療開始の直後には、PSAは低下傾向を示して治療の有効性が認められたので、この方法を継続する事を選択した。診断から4ヶ月後にはPSAは基準値付近までに劇的に低下し、5ヶ月後には基準値内に低下した。その後も低下し続け、現時点でもPSAは低値を示している。副作用などは全くなく、体調は良好。担当医は、放射線治療の追加を提案するが、本人は拒否し、現行法を望んでいる。

前立腺がんでは、多くの患者で必要の無い手術が行われています。その結果、尿漏れなどの後遺症に悩むことになるのですが、その後遺症の治療を行うことで病院は継続して患者を確保しています。放射線治療も同様ですので、その必要性を考慮するべきです(医は算術のシナリオ)。

漢方とホルモン剤を選択するには、がんの悪性度と進行度を考慮することが必要です。がんの悪性度を示すグリーソンスコアが8以上の場合や、PSAが半年以内に2倍以上に急上昇している場合などでは、悪性度が高いので治療法は慎重に考慮しなければなりませんが、これらの患者は一部のみです。ホルモン剤を使用せずに、漢方のみでもPSAが低下するケースも多くあります。治療法は情報を収集して慎重に選択することと、よりリスクの少ない有効な治療を提供してくれる医師を選んで下さい。

 

セカンドオピニオン(偽高カリウム血症)

2018年02月01日

健康相談に電話をいただいた中年女性の事例です。この方は糖尿病はあるものの、血糖コントロールは極めて良好で、腎症などの合併症も一切ありません。行きつけの病院で血液検査の結果、カリウム(基準値 3.6~5.0 mEq/L)が6.9と高値でした。(カリウムは心臓の筋肉の動きに関与しているので、6.0 mEq/L以上の高値になると危険な不整脈の原因となり、心停止のリスクが大きくなります。)そこで、心電図の検査をしたが異常はなく、カリウムを多く含む野菜や果物の摂取を控えるように指導され、再検のための採血をおこない帰宅。翌日の検査結果は、カリウムは5.8になり、昨日の高カリウムは検査の機械が調子悪かったのだろうとコメントされたそうです。

*セカンドオピニオン

この例は、「血液検体の取り扱いが悪いことにより、赤血球中のカリウムが血清中に出てきて、偽の高カリウム血症になっている」可能性が極めて高く、心配はいりません。その根拠は、主に2つです。1つ目は、腎症もなく、カリウムを含んだ薬剤の大量投与もないのに、カリウムが6.9の高値に急上昇することは考えられない。2つ目は、何の処置もしていないのに次の日に5.8まで変化するのは不自然です。従って、病的な要因での高カリウム血症ではなく、人為的な要因が関与している偽の上昇といえます。

血液検体の取り扱いの不備でカリウム値が上昇する機序は、以下の通りです。血液検体は、採血後に遠心分離して、上澄みの血清部分だけを冷凍などの低温で保存します。しかし多くの開業医では、検査は検査センターに外注しています。その際に、遠心分離をせずに検査センターの収集時間まで長時間に渡って血液検体を放置すると、赤血球の中に高濃度に存在するカリウムが血清中に染み出してくるので、カリウムの測定値が高くなります。このカリウム値の上昇は、血液検体を放置した場所の温度が低いほど大きくなります。例えば、冷蔵庫のような低温状態ですが、冬は室温が低いので冷蔵庫と同じようなカリウム値の上昇を起こし易くなるのです。

血液検査のデータは、病的に変化するばかりではなく、検体の取り扱いの不備にも影響されます。