消毒剤の多用で肥満児

2018年10月20日

家庭で消毒剤を多用すると、子供が肥満になりやすいことを、カナダの小児科医などの研究チームが医学専門誌に(CMAJ)に発表しました。

乳児757人において、家庭で掃除に使用する ①消毒剤、②合成洗剤、③天然素材の洗剤と、肥満度を反映するBMIおよび腸内細菌叢との関連を、3歳時点で調べています。その結果、殺菌作用のある洗剤で拭き掃除を多くする①群では「ラクノスピラ科」の腸内細菌が優勢になり、3歳時点でのBMIが高くなる肥満傾向が認められました。逆に、③の天然素材の洗剤を使用している群では、ラクノスピラ科の細菌が減少して肥満のリスクが半分に低下していました。

腸内細菌のバランスは3歳ころまでに決まるのですが、殺菌作用の強い消毒剤は腸内細菌のバランスに影響を与えている可能性が示唆されます。また、腸内のラクノスピラ科の細菌群が多いと、脂肪が蓄積しやすいことが動物実験で明らかになっていますので、結果として肥満になり易いと考えられます。

小児期は、抗生剤の多用で肥満になり易いこと(抗生剤で肥満児)や、アレルギー疾患が発症しやすい体質になること(抗生剤使用の乳幼児はアレルギー疾患の発症リスクが1.7倍)も報告されています。これらも同じように、抗生剤で腸内細菌が死んで細菌叢のバランスが崩れる事が原因と考えられています。大切な家族を衛生的な環境で生活させたい気持ちは理解できるのですが、化学薬品を必要以上に使用することは、逆に健康を害することになります。何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」ですので、程々に。

 

オプジーボの効果は2割のみ

2018年10月10日

京都大学の本庶佑特別教授がノーベル医学生理学賞に決まったのは、誠に喜ばしいことであり、同じ日本人として嬉しい限りです。本庶先生の開発した抗がん剤のオプジーボは、本ブログでも2年前に紹介しました(超高額抗がん剤“オプジーボ”の使用は如何にあるべきか?)ので、お読み下さい。

ノーベル賞を受賞するような抗がん剤ですので、一般の方々には「全てのがんに特効薬的に効く!」と勘違いされているケースもあるようですので、説明を追加します。

① 効果の期待できるがんの種類は、悪性黒色腫(メラノーマ)、非小細胞性肺がん、腎細胞がん(腎臓がん)などに限られており、他のがんに対する効果はデータが不十分。

② 効果が期待できるのは使用患者の2割程度で、全ての患者に特効薬的に効くわけではない。

③ 使用する病期は、末期のステージ4で転移の認められる場合、外科手術後に再発したケースなどであり、全ての患者に初期段階から使用することはありません。

④ 副作用はこれまでの化学療法の抗がん剤よりは少ない(医師は自分に抗がん剤は使用しない)が、甲状腺機能障害、1型糖尿病、肝炎、腎炎、重症筋無力症などが有り、それぞれの頻度は低いが重症例が多い。

がん患者さんは藁にもすがりたい心境ですので、オプジーボの治療を望まれることは十分に理解できますが、例えば初期の大腸がん、胃がんや乳癌などは、外科手術で取り除けばほぼ完治しますので、オプジーボは必要ありません。上記の事を理解した上で、主治医と良く相談してから治療方針を選択して下さい。

テニスで死亡リスク減

2018年10月01日

前回のブログでは、4人に1人が運動不足になっており、運動不足に起因する死亡者が年間5万人にも及ぶことをお知らせしました(4人に1人が運動不足)。では、運動不足を解消するためにはどの様なスポーツが推奨されるのでしょうか?

英国のオックスフード大学の研究チームの報告では、運動と死亡リスクの関係を平均年齢52歳の8万人の男女で、平均9年間にわたって調査しています。その結果は、テニスなどのラケットを使う運動が死亡リスクを下げる効果が最も高く、リスクを47%も減少させていました。2位は水泳で28%、3位はエアロビクスで27%でした(英国スポーツ医学会誌)。

大坂なおみ選手が全米オープンで優勝したことの反響は大きく、大坂選手の使用しているラケットやウェアーは品切れになるほどに売れているようです。これを機に、小さい子供達ばかりでなく沢山の中高年の方々も健康目的のテニスを始める事でテニスブームが起こると、死亡リスクが下がることも期待できます。

健康寿命を延ばすには、バランスの良い食事と適度な運動です。楽しいと思う運動を長く継続することが必要です。