推定糸球体濾過量(eGFR)

2018年12月20日

光陰矢のごとしで今年も残り僅かとなり、本ブログも今年の最後となります。お陰様にて、本ブログには沢山のアクセスが有りました。アクセスが多い記事は、コレステロールの基準値に関する解説で、数年前からのロングヒットになっています。

ブログと並行して、メールによる無料健康相談を行ってきました。一部の利用者で、自身のメールアドレスを間違って記入しているために、私からの返信が出来ない方がおられます。相談メールをいただいた場合は、直後に自動で受け取りのメッセージが届きます。メールアドレスが記載違いしている場合は、自動返信が届きませんので、メールアドレスを確認してください。

尚、これまでにコメントを返信した方の殆どは、返信コメントを受け取ったのか受け取っていないのか、役に立ったのか役に立たなかったのか、反応がありませんでした。無料健康相談が役に立っていないのなら閉鎖も考えていたのですが、先週に数年間で初めて丁寧なお礼の返信メールをいただきました。その中で推定糸球体濾過量(eGFR)の解説を希望されていましたので、今回はこれを解説をします。

推算糸球体濾過量(eGFR:estimated Glomerular Filtration Rate)とは、腎臓がどれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示しており、この値が低いほど腎臓の働きが悪いということになるので、慢性腎臓病(CKD)の指標として使用されています。

結果の解釈の仕方については、eGFRはおおよその目安であり、基準値の60を下回ったから直ぐに治療が必要という訳ではありません。蛋白尿、糖尿病や高血圧などの疾患がなければ経過観察のみになり、基準値を大きく下回った場合や他の疾患がある場合は、専門医の指導が必要になります。その理由を下に詳しく説明します。

eGFRは血清クレアチニン値(Cr)と年齢(Age)と性別から、次の式で計算できます。

クレアチニン(Cr)とは、筋肉で使われたエネルギー物資の燃えカスです。蒸気機関車に例えると、動力源の石炭(エネルギー物質:クレアチン)の燃えカスがクレアチニンです。クレアチニンはいらない物質なので尿中に排泄するのですが、腎臓の機能が低下すると尿中に排泄する量が減るので、血液中に溜まってきます。血液検査でクレアチニンを計ると腎機能が解るのは、この原理です。

クレアチニンの尿中への排泄量は、身体の大きさと関係しているので、標準的な体型(170cm、63kg)の場合の体表面積が1.73m2を使用しています。従って、体型に影響されるので、体型が大きいと過小評価(実際よりも悪い結果)になり、逆に体型が小さいと過大評価(実際よりも良好な結果)されます。女性の場合は、男性よりも体型が小さいので、男性の値に0.739を乗じて計算します。また、年齢が計算式に入っていますので、同じクレアチニン値であっても、図のように、高齢者ほどeGFRの値は小さくなります。この理由は、高齢者では筋肉量が少なくなるので、その分だけ血中クレアチニン値も低くなることを考慮しているからです。従って、運動を習慣化して筋肉の衰えが少ない高齢者は、eGFRは実際よりも低く(悪く)計算されることになります。

この様に、計算された推算糸球体濾過量(eGFR)の結果は大まかな推定値ですので、正確に腎機能を反映してはいません。従って、結果の解釈も体型や年齢、他の疾患の有無により総合的に判断します。腎機能を悪くしない生活は、塩分を取り過ぎないことや肥満しないバランスの良い食生活にすることなどです。

酒の季節 ⇒ 健康的に飲みましょう

2018年12月10日

師走も半ばになりました。これからは、忘年会や新年会など飲酒の機会が多くなります。身体に悪影響がないように、健康的に飲みましょう。

気をつけたいことは、飲酒後の入浴ではヒートショックによる死亡事故を起こしやすくなります。前回のブログのように、ヒートショックは気温の変化が大きいときに、血圧の変動が大きくなって起こります。アルコールを飲むと血管が拡張するので、血圧が低下します。この状態で熱い湯船につかっていると、血圧の低下が大きくなるので、頭に血が十分に回らず気を失って倒れる可能性が高くなります。倒れた場所がお湯を張った浴槽だと、溺死につながってしまうのです。飲酒後に風呂に入ると酔いがさめるような気になりますが、それはありません。酔いがさめるまで入浴を待てないのなら、ぬるめの温度のシャワーにしましょう。

もう一つ気をつけたいことは、次の日の車の運転です。寝たから大丈夫と思っても、アルコールが残っていることもあります。個人差はありますが、日本酒1合またはビール大瓶1本のアルコールを分解するには、一般的には4時間程度かかります。沢山の量を飲んだ場合には、翌朝には飲酒運転で検挙されることもあり得るのです。翌朝にアルコールが分解されていたとしても、その代謝産物のアセトアルデヒドが体内に残っていると、判断力の低下やとっさの動きが鈍くなって、事故を起こす可能性が高くなります。翌日のことも考えた酒量にしましょう。

お酒は、楽しく安全に。

ヒートショックに注意

2018年12月01日

今日から12月(師走)です。寒さも本番に入りますので、健康管理に注意をしましょう。特に、12月と新年の1月に多いのが、ヒートショックによる入浴中の死亡事故です。

ヒートショックとは、暖房の効いた暖かい部屋から、入浴のために寒い脱衣場や浴室に入ったことや、次に熱い湯船に入ることで血圧が急激に高低変化して起こる死亡事故です。年間で約1万7千人が亡くなっていますが、交通事故の死亡者数は約4万1千人ですから、4倍以上も多いのです。特に高齢者など血圧変動の大きい方は、要注意です。

ヒートショックは部屋の寒暖差によって起こるので、寒い地方に多いと考えられますが、最もヒートショックの事故が少ないのは寒さの厳しい北海道なのです。何故に北海道が少ないかというと、家中の暖房がしっかりしているので、脱衣場や浴室も暖かく、部屋の寒暖差が無いからです。

部屋の温度以外での注意点は、飲酒後の入浴を避けること、41度以上の熱い湯は避けることなどがあります。冬場の入浴は、身体が温まるので天国ですが、危険と隣り合わせであることにも留意しましょう!