離婚や死別は脳卒中のリスクを高める!

2016年04月10日

離婚や死別で配偶者を失うと脳卒中のリスクが高まることを、大阪大学などの研究チームがアメリカの心臓学会誌「ストローク」に発表しました。(脳卒中とは、脳の血管がつまって発症する脳梗塞と、血管が破れて出血する脳出血とくも膜下出血を総称したものです。)

研究対象は45~74歳の男女5万人で、既婚(配偶者と同居)から非婚(配偶者と同居なし)の変化の有無と、その後の脳卒中発症リスクの関係を15年間追跡調査しています。この間に、2134人が脳卒中を発症しました。婚姻状況の変化との関連では、離婚や死別で配偶者を失った人は、脳卒中のリスクが男女ともに26%も高まる結果になりました。特に、くも膜下出血や脳出血のリスクは、男性が48%増、女性が35%増でした。なお、仕事をしていない女性が夫を失った場合には、夫がいて仕事をしている女性と比較すると、3倍も脳卒中のリスクが高くなっています。

一般的には、既婚者は非婚者(離別&死別)と比較すると健康状態が良いことが知られていました。この要因として、既婚者は精神的安定感や食生活のバランスが良いことなどが考えられます。逆に、配偶者を失うと、飲酒量の増加などの食生活の乱れや精神的および経済的な負担が悪影響を与えるものと考えられます。

前回は、笑わないと脳卒中や心臓病に成り易いことを報告しました。今回の報告と合わせると、健康で長生きするには、夫婦が円満で笑いのある家庭を作ることが重要なようです。

笑わない高齢者は脳卒中、心臓病に成り易い!

2016年04月01日

笑いが、免疫細胞を活性化して健康増進に寄与することが知られています。例えば、漫才や喜劇などで大笑いすると、がん細胞を攻撃するリンパ球の一種であるナチュラルキラー(NK)細胞の活性が上昇します。また、脳がリラックスした時に出現するアルファー(α)波は増え、大脳新皮質の血流量も増加して脳の活性が上昇します。さらに、カロリー消費を増加させるので運動と同じ効果があることも知られています。従って、笑いはストレス解消のみならず、生活習慣病やがんなどの病気の予防効果がある万能薬と考えられます。

しかしながら、笑いの回数は年齢とともに減少してしまいます。「よく笑う」と答えた人の割合を世代別にみると、30歳代では65%、40歳代では50%、50歳代では45%と、徐々に減少しています。この加齢に伴う笑いの減少の主因は、人生経験の積み重ねとともにストレスも蓄積している“ストレス説が”有力です。では、笑わなくなると健康にどのように影響するのでしょうか?

殆ど笑わない高齢者は、毎日よく笑う高齢者と比較すると、脳卒中や心臓病になる確率が高くなることが、東京大学などの研究チームから発表されました。65歳以上の男女2万人以上を対象にした調査で、殆ど笑わない人は脳卒中が1.6倍、心臓病は1.2倍も高い結果となりました。男女別では、特に高齢女性で危険性が高く、脳卒中は1.95倍、心臓病は1.41倍も高くなっています(男性では1.47倍、1.11倍)。この結果から、毎日の生活に笑いを入れることが健康管理につながることは明らかです。私は、笑点の大喜利が大好きで毎週見ていますが、脳卒中や心臓病の予防に役立っているようです。

父の食生活の乱れが精子を介して子に伝わる?

2016年03月20日

これまで母親の健康状態が胎児に影響を与えることは、周知の事実でした。例えば、過度のダイエットをした女性から生まれた低体重の子は、将来的にメタボや生活習慣病に罹患しやすくなります(成人病胎児起源節)。従って、妊婦の健康管理の重要性は認識されていました。

近年の研究例では、父親の影響に関する研究がみられます。マウスの研究ですが、父親に高脂肪食を与え続けると、生まれた雌の子はインスリン分泌が低下する。父親に低タンパク質食を与え続けると、生まれた子は脂肪肝に成り易くなるというものです。もちろん、母親は健常ですので、父親の食生活の影響が示唆されます。

最新の研究でも、雄マウスを通常の食事群と高脂肪食で糖尿病状態の2群に分け、16週間飼育します。それぞれの雄を正常な雌マウスと交配して生まれた子供マウスで、どちらの群に同じ通常食を与えても、高脂肪食の親から生まれた子供マウスで血糖値が高くなっています。

これまでは、糖尿病などの生活習慣病は、親から受け継いだ遺伝子変異と、不摂生な食生活や運動不足などの後天的な因子がプラスして発症すると考えられていました。しかし、上記の研究結果は“父親の高脂肪食の影響が遺伝情報として子供に伝わった”と考えられます。子供が健康に成長するためには、母親のみならず父親も節制した生活をしないといけないようです。世の中のお父さん方、会社帰りの一杯もたまには良いのですが、運動と気分転換を兼ねたスポーツクラブも考えた方がよさそうです。

健康食品: トクホ表示やうたい文句に騙されるな!

2016年03月10日

ライオン株式会社の特定保健用食品(トクホ)の「トマト酢生活」は、“驚きの血圧低下作用”や“”薬に頼らず食生活で血圧対策”などの表示が著しくその効果を誤認させるとして、消費者庁から再発防止勧告を受けました。トクホで許されている表示は、「血圧が高めの人に適している」などであり、上記のような表示は禁止されています。

「トマト酢生活」の原材料のトマトと食酢は、どちらも健康には良い食物です。昔から、トマトが赤くなると医者が(仕事が無くなるので)青くなると言われています。トマトはGABA、グルタミン酸、カリウムなど、食酢も血管拡張作用が報告されているので、降圧効果が期待できます。しかながら、いずれの作用も穏やかであり、医薬品のような急激な改善効果は薄いと考えられます。従って、「血圧が高めの人に適している」といった表現が適切です。多くの消費者は、トクホの表示やうたい文句を信用して購入していますが、必ずしもその通りではありません。

トクホとは、表向きは健全な健康食品に対して政府がお墨付きを与えたものですが、現実はトクホの審査や認可機関の職員の殆どが天下り役人で、1件当たり約1億円の審査費用は天下り役人の収入源になっています(本ブログ2014年9月1日と10日の“特保のウソ”をご覧ください。)。従って、中小企業では1億円の壁のために良品でもトクホは取得できないので、必ずしもトクホの有無が製品の良・不良という訳ではありません。トクホを取得したメーカーは、審査費用の回収の為に多量の商品を販売したいので、如何にも効果がありそうなイメージで宣伝します。多くの消費者は、そのうたい文句にひかれて購入するのですが、殆ど効果のない商品や不当表示に近い商品も存在しています。従って、トクホという表示だけでなく、うたい文句通りの効果が有るのかも吟味する必要があります。

トクホを取得するには研究データが必要ですが、一般的には“1~2ヶ月間摂取すると、○○も低下しました。”というデータです。これには裏があります。先ず研究対象が、肥満のある人や、高脂血症、糖尿病などの患者を用いていることが多々あります。このようなケースでは、一般の消費者に同様の効果は期待できません。次に、○○低下しましたというデータです。1ヶ月や2か月で一時的に低下しても、それが長期で継続性があるかはわかりません。長期的な検討は費用も労力も必要なので、私の研究している漢方飲料の美露仙寿(めいるせんじゅ)のように、複数の医学論文に長期の検討結果を掲載している製品は、ほんの一握りだけです。信頼できるデータのある製品を選択してください。

トクホとは別の話題ですが、輸入健康食品の半数以上に副作用の危険性が高い医薬品が含まれているという厚生労働省の調査が公表されました。特に、「劇的に痩せる」や「精力増進」などのうたい文句は危険性が高いです。他には、エナジードリンクのカフェイン中毒での死亡例がありました。かっこ良い、可愛い、簡単に栄養が摂れるなどの理由で飲みすぎると、食品栄養のバランスを崩す可能性があり、健康食品で逆に健康を害してしまいます。健康を守るのは、バランスの良い食事と適度な運動です。健康食品で補うときは、安全性と効果をよく吟味して良い物を選びましょう。

しかしながら、一般の方にはどれ位の効果があるのか、危険性がないのかを判断するのは非常に困難です。そこで、健康食品を選ぶ最もわかり易いポイントを挙げてみます。それは、販売している会社に医療の国家資格(医師、看護師、薬剤師など)を有した常勤社員が、商品に対する質問や相談に対応しているかです。医療職の社員を雇用すると人件費がかさむので、利益第一主義の会社ではあり得ません。さらに、全く効果のない場合などは対応が煩わしくなるので、相談窓口を作ることはありません。相談窓口の直通の電話番号や住所などが明記されている会社は、製品の内容に自信があり、かつ信用第一の理念を持った企業なので、信用度は高いといえます。

朝食抜きは脳出血リスク36%増

2016年03月01日

朝食を抜くことが多い人ほど、脳出血のリスクが上昇することを、国立がん研究センターなどの研究グループが発表しました(Stroke 2016年47;477-481)。

対象は、国内8県の45~74歳の8万2772人(男性38,676人、女性44,096人)で、平均で13年間追跡調査しています。この間に脳卒中を起こした3772人で、朝食の摂取回数と発症の関係を解析しています。その結果、毎日朝食を摂る群と脳出血のリスクを比較すると、朝食の回数が週に「0~2回」では36%増、「3~4回」では22%増、「5~6回」では10%増でした。この結果は、明らかに朝食の回数が少ない方が脳出血のリスクが高いことを示しています。この因子として指摘されているのが、朝食を抜くと空腹によるストレスで血圧が上昇することです。

血圧は、一日の間で常に変動しています。日内変動のパターンとして、昼は仕事で体を動かすので高めになっていて、夜に寝てから徐々に低下します。翌朝に目覚めると徐々に上昇して日中の活動に備えます。この朝の上昇カーブが、朝食を抜くことで急激になります。特に、早朝の急な血圧上昇は脳出血のリスクを高めるのです。

これまでに、朝食を欠食することで高血圧のみならず、肥満、脂質異常症、糖尿病などのリスクが上昇することが指摘されていました。子供では、学力低下を招くことも知られています。本ブログで常に「健康の基本は、バランスの良い食事と適度な運動」と書いています。一般的に、朝食を毎日食べる人は健康的な生活習慣の人が多いので、脳出血のみならず、他の疾患の発症率も低下します。食事の重要性が再確認される発表でした。