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糖尿病

健康クイズ ② 糖尿病

2018年03月10日

健康クイズの第2回目は、患者数が多い糖尿病に関する問題です。予防や改善のためにお役立てください。

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問題①  日本人は2型糖尿病に

a.  なり易い

b.  なりにくい

 

問題② 肥満は糖尿病に

a. なり易い

b. 関係ない

 

問題③ 小児の糖尿病(1型糖尿病)の原因は

a.  不摂生な生活

b.  免疫疾患

 

問題④ 糖尿病患者は尿糖が

a.  常に陽性

b.  コントロールが良い時は陰性

 

問題⑤ 糖尿病で尿量は

a. 血糖値が高いと増える

b. 特に関係は無い

 

問題⑥ HbA1c(糖化ヘモグロビン)は

a.  その日の平均的血糖値を反映

b.  1~2ヶ月前の平均的血糖値を反映

 

問題⑦ 糖尿病で食事療法が必要な理由は

a.  少なくなったインスリンの量に食事量を合わせる

b.  食費を節約して薬代にする

 

問題⑧ 糖尿病でトクホのウーロン茶やコーラを飲んだ場合

a. 沢山食べても構わない

b. 食事療法を守る

 

問題⑨ 糖尿病で運動は

a.  疲れるからやらない

b.  毎日の習慣にする

 

問題⑩ 糖尿病患者は

a.  高血圧になり易い

b.  血圧とは関係ない

 

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正解① 日本人は2型糖尿病に

a.  なり易い

日本人の祖先は農耕民族なので、栄養価の低い農作物で生き延びられる体質になっていて、インスリンの分泌量が少ないのです。現代の高カロリーの食事は沢山のインスリンが必要なので、インスリン分泌する膵臓が疲れてしまい、糖尿病を発症し易い傾向があります。

 

正解② 肥満は糖尿病に

a. なり易い

肥満では、白色脂肪細胞が増加して、インスリンの伝達を妨げる物質(TNF-α)やインスリンを働きにくくする物質(レジスチン)などが分泌されます。インスリンの効きが悪くなるので、沢山のインスリンを分泌しなければいけなくなり(高インスリン血症)、膵臓が疲れてしまい糖尿病を発症します。糖尿病以外でも、肥満では高血圧や高脂血症など、多くの疾患を発症し易くなります。

 

正解③ 小児の糖尿病(1型糖尿病)の原因は

b.  免疫疾患

糖尿病には、1型と2型があります。2型糖尿病は、全体の約95%を占め、不摂生な生活とストレスなどで発症します。主に小児にみられる1型糖尿病(約5%)は、自己免疫疾患が原因で、外敵を攻撃する免疫が自分の膵臓を敵と勘違いして攻撃して破壊してしまうことで発症します。治療は、インスリン注射が必須です。

 

正解④ 糖尿病患者は尿糖が

b.  コントロールが良い時は陰性

尿中に糖分が排泄されるのは、血糖値が170 mg/dl以上になったときに、超えた分だけ排泄されます。糖尿病患者でも、血糖値を170 mg/dl以下に良好にコントロールしていれば、尿糖は陰性です。

 

正解⑤ 糖尿病で尿量は

a. 血糖値が高いと増える

血糖値が高ければ高いほど、それを薄めようとして周りの細胞から水分を奪います。血液中に増えた水分は尿として排泄されるので、尿量が増えます。水分を奪われた細胞は、干からびないように、喉が渇いたというサインを出して、水を沢山飲んで補充するので、多飲多尿になります。

 

正解⑥ HbA1c(糖化ヘモグロビン)は

b.  1~2ヶ月前の平均的血糖値を反映

HbA1cは、赤血球中のヘモグロビンに糖が結合したものです。この結合反応は、赤血球が生まれてから壊れるまでの寿命である120日間直線的に進行します。血液中の赤血球は、生まれたばかりから120日たったものまでが均等に含まれるので、60日(約2ヶ月)前の平均的血糖値が反映されます。

 

正解⑦ 糖尿病で食事療法が必要な理由は

a.  少なくなったインスリンの量に食事量を合わせる

健康なときは、食べた量に合わせてインスリンが分泌されます。糖尿病では、インスリンの量が少なくなっている(または効果が低下)ので、インスリンに合わせて食事量を調整します。

 

正解⑧ 糖尿病でトクホのウーロン茶やコーラを飲んだ場合

b. 食事療法を守る

トクホのウーロン茶やコーラを飲むと、沢山食べても問題が無いようなイメージのCMが見受けられます。しかし、これらの飲料で抑制できるのは微々たるものなので、効果を過信して多く食べてしまうと、逆効果になります。食事療法(カロリー制限)を守らなければいけません。

 

正解⑨ 糖尿病で運動は

b.  毎日の習慣にする

運動療法は、食後高血糖を抑えて血糖コントロールをよくすることや、運動を継続することでインスリンの働きをよくします。ただし、合併症がある場合は逆効果になる場合がありますので、担当医の指示に従って下さい。

 

正解⑩ 糖尿病患者は

a.  高血圧になり易い

血糖値が高くなると、正解⑤で述べたように、細胞から水分を引き込むことで血管内の体積が増えるので、血圧が上昇します。他にも、脂質の代謝も低下するなど、様々な疾患を起こしやすくなります。

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糖尿病の予防と管理には、バランスの良い食事と適度な運動が不可欠です。この知識を武器に糖尿病に勝利しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

糖質制限で糖尿病のリスク増

2017年09月20日

ダイエットや糖尿病の予防を目的とした“糖質制限”がブームになっています。巷ではシャリのない寿司、ご飯のない牛丼、麺のないラーメンなど、訳のわからないメニューも登場していますが、無理な糖質制限は糖尿病のリスクを高めますのでご注意!

糖質制限が糖尿病のリスクを高めるメカニズムは、次の2つです。1つ目は、使わないと衰えてしまう筋肉と同じで、糖質制限を続けると膵臓のベータ細胞の機能が衰えてインスリンの分泌低下を招きます。元々、日本人は農耕民族でインスリンの分泌が少ない体質ですから、糖尿病になるリスクがより高まってしまうのです。世界のトップレベルの科学誌である「nature」の論文にも、糖質制限したマウスではインスリンを分泌するベータ細胞の機能が低下することが報告されています。

もう1つのメカニズムは、筋肉の減少です。極度の糖質制限で体内の糖質が不足して脳が活動できなくなるなどの危険が迫ると、筋肉を分解して糖を生み出す「糖新生」という反応が起こります。その結果、糖をエネルギーとして消費する筋肉が減ることで、血糖値をコントロールできなくなり糖尿病が発症します。

本ブログで常に主張している健康の基本は、バランスの良い食事(食と健康)と適度な運動(ジョギング運動)です。バランスの良い食事とは、3大栄養素である糖質、脂質、たんぱく質のバランスを守ることです。糖質だけを制限すればこのバランスを崩してしまうので、健康を害します。ダイエットする場合は、このバランスを崩さずに、全体のカロリーを制限し、1か月で1~2キロ程度の緩やかな減量(リバウンド防止)をすべきです。

糖尿病治療の最新研究

2017年02月01日

糖尿病は、国民病と言われるほどに多くの方が罹患しています。糖尿病の新しい治療法として、マイクロRNAを用いる方法が東北大学の研究チームから発表され、iPS細胞を用いる方法を東大医科研チームが発表しました。

マイクロRNAとは、たんぱく質を合成するRNAと異なり、塩基対が22塩基の小さなRNAで、遺伝子の発現を調整する機能を持っています。マイクロRNAは500~600種類が認識されていますが、このうちの2種類(106bと222)が膵臓のβ細胞の再生に関わっていることが明らかになりました。この2種類のマイクロRNAを糖尿病のマウスに注射すると、β細胞が増殖して、インスリンの分泌が回復し、血糖値が改善することが確認されました。

この方法は、2型糖尿病に応用が期待されます。日本人の糖尿病の95%は2型糖尿病で、不摂生な生活が原因で発症するタイプです。この2型糖尿病の患者のうちの半数以上は、経口薬やインスリンなどの薬剤は不要で、食事療法と運動療法のみで血糖コントロールが可能です。従って、第一には生活習慣の見直しが不可欠ですが、それでもコントロール不能な場合に上記のような治療法の活用が望まれます。

東大医科研チームの発表したiPS細胞を用いる方法は、健康なマウスから作ったiPS細胞をラットの子宮内で育て、その子供のラットの膵島を採取して糖尿病のマウスに移植すると、糖尿病が改善しました。この方法の特徴は、マウスとラットという異なる種で治療に必要な膵島が用意できることです。従って、ブタにヒトの膵島を作らせて移植すれば、ヒトの1型糖尿病の治療も可能になります。1型糖尿病は、自己免疫疾患などで膵島が破壊されるために、一生の間インスリン注射が必要な疾患ですので、この方法により根本的治療が期待できます。

 

ブタ膵細胞の1型糖尿病患者への移植を容認へ

2016年04月20日

糖尿病の主要な病型は、1型と2型に分類されます。日本人に多い糖尿病は2型で、遺伝的に糖尿病になりやすい人が、肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに発病します。多くの患者は、食事療法と運動療法で血糖値をコントロール可能です。一方、1型糖尿病の原因は自己免疫疾患で、自分の膵臓のβ細胞を外敵と勘違いして攻撃して壊してしまい、インスリンが分泌できなくなり発症します。治療は、インスリン注射を一生涯続けるしかありません。

厚生労働省は、これまで動物の臓器や細胞を人へ移植することを事実上禁止していました。その最も大きな理由は、ブタのレトロウイルスなどが人へ感染する可能性でした。しかし、海外ではブタのすい臓を人に移植する臨床研究が始まり、国際学会でもレトロウイルスの人への感染がないことが報告されていました。もう一つの問題点は、異種間移植による拒絶反応の克服でした。移植細胞を、免疫細胞や抗体を通さない特殊な膜に包むことにより、拒絶反応を避けることができるようになりました。これらの最新技術により、1型糖尿病患者へのブタ膵細胞を移植する治療が容認されたのです。

1型糖尿病の治療として研究されている他の方法は、iPS細胞からβ細胞を作製して移植する方法ですが、がん化しないことの確認の研究などが必要なので、臨床応用までには未だ数年は必要な現状です。

何れの治療法であっても実用化されれば、一生涯のインスリン注射から解放されるので、1型糖尿病患者にとっては朗報です。

食と健康: 医食同源

2015年10月01日

10月になり、すっかり秋めいてきました。先月末から、短大での講義が始まりました。その為に無料健康相談は、月曜日の午後は休みになりますので、ご了承ください(2月末まで)。

授業を担当しているのは栄養士の卵達で、大切な命を如何に有効(幸せ)に過ごすかという内容です。人生で最も大切なものは健康ですから、毎年の講義で話しているのは、「家族や患者の健康状態に合わせて、献立や調理法を考えられる栄養士を目指して!」という事です。食事は、健康の基本です。バランスの良い食事が健康を守り、適切な栄養摂取が病気の回復を助けます。即ち、医食同源。栄養士ではない皆さんにも共通することですので、代表的な食事療法を、以下に紹介します。

食事療法が最も重要な疾患は、糖尿病です。他の疾患は、投薬などの治療である程度の回復は期待できますが、糖尿病の場合は食事療法(カロリー制限)が適切でないと改善はできません。糖尿病の食事療法の本を買って、本人と主に食事を作る方は勉強してください。本の選び方は、難しい文章が少なく、写真などで説明している方が理解しやすいと思います。

肝障害の食事の基本は、原因により異なります。ウイルス性の場合は、低脂肪、高蛋白が基本です。暴飲暴食が原因のアルコール性肝障害や脂肪肝では、飲酒量を減らしてカロリー制限の節制が不可欠です。

腎障害では、塩分制限と蛋白制限が基本です。カリウムは腎臓に負担になるので、野菜は湯通して果物は量を減らします。肥満のある方は、血圧が上がることで腎臓に負担になりますので、カロリー制限で減量します。

家族で食卓を囲む回数が多い家庭では、子供の非行が少ないというデータがあります。即ち、食事は単なる栄養補給ばかりでなく、精神面の健康作りにも有効なことが示されています。これからの季節は、家族そろって暖かい鍋物が良いですね。