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ビール

ビールと脱水

2015年08月01日

今日から8月。酷暑は暫く続きそうです。

こんな時期には、ギンギンに冷えたビールが、灼熱砂漠の中にある緑のオアシスのように、汗で乾燥した体に水分の潤いを与えてくれるように感じます。ですが、ビールは逆に脱水をもたらすので、飲み方に注意が必要です。

アルコールには利尿作用があります。この利尿作用は、血液中の抗利尿ホルモン(ADH)の分泌を抑制することで生じます。これは、体内に取り込んだ余分な水分だけを排出しているわけではなく、アルコールに反応して尿をだすために、水分の少ない度数の高いお酒を飲むと「利尿による脱水症状」がより発生しやすくなります。さらに、飲んだお酒の水分が吸収されるまでにタイムラグがあるために、血液中に蓄えられている水分から排出されます。故に、お酒を飲んでいる最中に体が脱水状態になるという変わった現象を起こしているのです。

ビールは、アルコール度数が5.0~5.5%程度と低く、水分を沢山含んでいるので、水分補給になるようなイメージがあります。ですが、ビールはアルコールの抗利尿ホルモンの抑制の他に、含まれているカリウムが新陳代謝を活発にさせるという効果も加わり、他のお酒より利尿作用が強くでます。どの位の利尿作用があるのか計算してみます。ビールの大瓶は633 mlでアルコール濃度を5.0%とすると、1本当たり31.7gのアルコールと約600mlの水分を含んでいます。50gのアルコールの摂取で600から1000mlの利尿作用があるとのデータで計算すると、31.7gでは380~634mlになります。従って、飲んだ水分(600ml)の殆どがアルコールの利尿作用で排泄されます。その上に、カリウムの利尿作用が加わります。ビール大瓶1本当たりのカリウム量は約220 mgです。1日に食事から摂取するカリウム量は、男性2500mg、女性で2000mgですから、大瓶1本で約10分の1に相当します。カリウムは筋肉の働きに必要な他に、ナトリウムを水分とともに尿中へ排泄する利尿作用もあります。夕食に野菜や果物をたくさん食べると、夜中に何度も尿意をもよおすのは、水分の他にカリウムが多量に含まれているからなのです。従って、アルコールとカリウムを含むビールでは利尿作用が重なって、飲んだ量以上の水分が排泄されることで、逆に脱水状態を引き起こすのです。

アルコールを飲みすぎると二日酔いになりますが、これはアルコールの分解産物のアセトアルデヒドと上記の脱水が主因になっています。アルコールによる脱水症状を治すのに有効なのはスポーツドリンクです。迎え酒は、アルコールで感覚を麻痺させているだけで、体にはさらなる負担になりますので、論外です。なお、“ちゃんぽん”(色々な種類の酒を飲むこと)は二日酔いや悪酔いをするといいますが、酒の種類が変わると美味しく感じて飲みすぎるためにアルコールの総量が増えることが理由で、酒の種類のせいではありません。

美味しいビールも、飲み方によっては危険に変わります。大量に汗をかく季節は、水分を上手に摂取して、脱水状態にならない様に注意しましょう!