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後遺症

新型コロナ後遺症における漢方の可能性(クコを中心に)

2023年09月27日

新型コロナウイルスに多くの方が感染し、入院もできずに自宅療養(現実は放置状態)せざるを得ない状態が続いています。感染から回復した後も後遺症に苦しめられるケースが多いのですが、対応できる専門病院や外来は少ないのが現状です。後遺症は、倦怠感、味覚・嗅覚障害、脱毛、咳・痰、集中力・記憶力の低下など様々な全身症状ですが、検査しても肺や脳などには異常が認められず、原因不明の症例が殆どです。故に、治療はこれらの症状を緩和させる対症療法になっています。そこで、これらの後遺症の緩和ならびに根本的治癒を目的とした漢方の可能性を考察します。

医薬品と漢方の違いを、図に示しました。右に示した医薬品の成分は、一般的には単一の化学薬品なので、ピストルの弾に例えられます。咳や味覚障害、不眠などの的(症状)に当たれば、比較的強力に効果を発揮します。しかし、原因という的はハッキリしないので、命中させることは難しいのです。これに対して、左に示した漢方は多数の有効成分を含んでいるので、散弾銃に例えられます。自然の植物由来なので散弾の1粒(成分量)は小さいので、効き目は穏やかであり、効果が出るまでには時間を要する場合が一般的です。しかし、多数の小さな散弾(多種の成分)は広範囲に広がって、多くの症状や不明な原因にまでも命中することで、全身の症状を緩和する確率が高いのです。

漢方で上品薬(副作用が極めて少なく、効き目の穏やかな漢方薬の分類)として用いられるクコによる全身の症状緩和の医学研究論文を紹介します。クコの果汁を飲んだグループと偽の果汁を飲んだグループを30日後に比較すると、クコ果汁を飲んだグループのみで脱力感、疲労感、ストレス、息切れ、集中力、睡眠の質などの全身症状の改善が明らかになっています(J Med Food. 2012 ,15(11):1006-14、The J of Alternative and Complementary Medicine 2008, 14(4) 1089 )。また、酸化ストレス(身体の錆び)は90%以上の疾患の発症に関与する因子と考えられていますが、これらを防ぐ代表が抗酸化酵素のSOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)やGSH-Px(グルタチオンペルオキシダーゼ)です。これらの抗酸化酵素も、30日間のクコ果汁の飲用で統計学的に明らかに改善(Nutrition research 2009, 29: 19-25)していますので、全身における疾患の発症の予防や改善に寄与する可能性を示しています。

同様に、クコを主材料とする健康飲料でも、ウイルスに感染した細胞を攻撃するキラーT細胞(CD8発現T細胞)の活性の上昇や、疲労の軽減に働くHSP(ヒートショック蛋白)、GSH(抗酸化物質グルタチオン)の増加(医学検査2012, 61(3): 541-547)、血流の増加(Int. J. Phytomedicine 2016, 8: 353-358)、冷え性や便秘などの未病の改善(日本未病システム学会雑誌 2015, 21(3): 1-6)など、全身の症状の改善が報告されています。

現時点では、漢方がコロナ後遺症に有効である直接データはありませんが、これらの研究論文からクコなどの漢方が全身症状の予防や改善への寄与が示されていますので、コロナ後遺症の全身的な症状も改善する可能性を示唆しています。漢方は数千年の昔から用いられている古き治療法ではありますが、最先端の治療法にもなり得ます。試してみる価値は十二分にあるでしょう!

セカンドオピニオン(前立腺がんにおける漢方)

2018年02月10日

がんの患者数は年間約98万人(男性56万人、女性42万人)で、死亡者は約37万人(男性22万人、女性15万人)と増加傾向にあります。これらの中で前立腺がんは、死亡者数は全がんの1%程度(男性で5.6%)と少ないのですが、患者数では男性がん患者の17.6%を占め、最も多く発症しています。治療法は、手術、放射線、ホルモン療法などがあります。

事例(80歳男性):

排尿の際に痛みを感じて受診。PSAが64(基準値:70歳以上 4.0 ng/mL 以下)と高値で、前立腺癌と診断される。担当医からは手術を勧められるが、本人は後遺症などを考慮して手術は望まず、他の治療法を模索。

治療法は、手術、放射線、ホルモン剤などがあり、がんの悪性度や進行度、年齢などを総合的に考慮して選択します。手術の後遺症には、尿管括約筋の損傷により尿漏れや失禁が多発し、性機能障害(勃起障害:ED)などもあります。放射線治療では、外部照射では排便障害、内部照射でも排便困難や排尿痛などがあります。ホルモン剤療法では、生活に支障が出るような副作用は比較的少ないのですが、乳房の女性化や性機能障害が少数見られます。

セカンドオピニオン:

漢方により免疫力を向上させることで自己治癒力を高めると共に、ホルモン剤の投与で回復することを期待して、1~2ヶ月の間PSAで経過観察する。

漢方飲料は、がん細胞を攻撃する白血球(NK細胞およびキラーT細胞)を活性化することが確認されている美露仙寿(めいるせんじゅ)を用いた(医学検査 2012年 541-547)(がん・予防(4)医師は自分に抗がん剤は使用しない)。美露仙寿の15 ml 瓶 を1日15本飲用し、その後に徐々に飲用本数を減らした。加えて、ホルモン剤を3ヶ月毎に投与と、内服薬2種類を毎朝夕の2回を継続した。その結果、治療開始の直後には、PSAは低下傾向を示して治療の有効性が認められたので、この方法を継続する事を選択した。診断から4ヶ月後にはPSAは基準値付近までに劇的に低下し、5ヶ月後には基準値内に低下した。その後も低下し続け、現時点でもPSAは低値を示している。副作用などは全くなく、体調は良好。担当医は、放射線治療の追加を提案するが、本人は拒否し、現行法を望んでいる。

前立腺がんでは、多くの患者で必要の無い手術が行われています。その結果、尿漏れなどの後遺症に悩むことになるのですが、その後遺症の治療を行うことで病院は継続して患者を確保しています。放射線治療も同様ですので、その必要性を考慮するべきです(医は算術のシナリオ)。

漢方とホルモン剤を選択するには、がんの悪性度と進行度を考慮することが必要です。がんの悪性度を示すグリーソンスコアが8以上の場合や、PSAが半年以内に2倍以上に急上昇している場合などでは、悪性度が高いので治療法は慎重に考慮しなければなりませんが、これらの患者は一部のみです。ホルモン剤を使用せずに、漢方のみでもPSAが低下するケースも多くあります。治療法は情報を収集して慎重に選択することと、よりリスクの少ない有効な治療を提供してくれる医師を選んで下さい。