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肺がん

飲食店が原則禁煙へ

2017年01月20日

20日から招集される通常国会で、飲食店や駅構内は原則として禁煙(喫煙室の設置は可)とし、医療機関や小中学校は敷地内が全面禁煙とする改正案が提出されます。違反した喫煙者や施設管理者には、過料の罰則も追加されます。この改正案は、非喫煙者が煙草の煙を吸い込む“受動喫煙”を防止するための対策です。

喫煙は肺がんの危険因子であることは、これまでの多くの研究により明白です。さらに、喫煙により全身の血管で動脈硬化が進展することが、滋賀医科大学の大規模研究により再確認され「Journal of American Heart Association」に掲載されています。この研究は、血管病のない健康な40~79歳の男性1019名で行われ、喫煙状況と心臓、大動脈、頸動脈および末梢血管における動脈硬化との関連を分析しています。その結果、非喫煙者と比較して喫煙者では全ての部位で動脈硬化が進行すること、並びに禁煙すれば動脈硬化の進展を予防できることが示されています。この様な喫煙の害は、自分では喫煙しない受動喫煙でも同様に生じますので、健康管理の観点から今回の改正案が提出されている訳です。

また、非喫煙者の生命保険の掛け金を割引する保険会社の商品が、健康志向者の支持を集めています。この保険は、喫煙していないことや血圧に問題がないことなどを条件に、約30%も割引されます。裏を返せば、この割引率は非喫煙者は30%も死亡リスクが減ることを示しています。

昨年度の喫煙率の調査では、男性は29.7%で緩やかに減少気味ですが、女性は9.7%で横ばいです。喫煙は、喫煙者のみならず受動喫煙で非喫煙者や家族までもリスクを高めることから、飲食店や公共機関での禁煙は世界的な流れになっています。海外からの旅行者が急激に増加していることや、オリンピックを控えていることから、日本も海外のような禁煙の流れに沿った法整備を進めようとしています。

C型肝炎治療薬ハーボニーは100%ではない?

2016年05月01日

肝炎で入院する原因は、アルコールを想像する方が多いとおもいますが実際は1割以下で、ウイルス性が約 8 割と圧倒的に多いのが現状です。ウイルス性肝炎の中でも、C型は慢性化率が高く、肝がんの原因の7~8割を占めています。C型肝炎ウイルスの種類は、主に1型と2型がありますが、日本人に多い1型ウイルス(約7割)はインターフェロンが効かない難治タイプでした。

1型のC型肝炎ウイルスの特効薬として登場したのがハーボニー配合錠で、C型肝炎ウイルスのRNA合成を阻害する薬剤です。1日に1錠(1錠当たり8万円)を3か月間服用(8 x 90 = 720万円)することで、治験では100%の著効率を謳っており、C型肝炎治療の特効薬として昨夏に保険適用されました。

その後、この薬剤を用いて治療を行っている病院での報告が聞かれるようになりましたが、治癒率は100%ではないようです。A病院の例では、ウイルスが消えた後に再燃した患者は数%でした。なお、K病院の40人の患者では、ウイルスが消えた後に肝がんの発症が2人確認されています。この症例は、治療時点で初期がんがあったものと考えられます。

病院の報告から、ハーボニー配合錠は、これまでの治療薬と比較すると極めて高率にC型肝炎を治癒できるのですが、一部の患者ではウイルスの再燃が有るので、治癒率は100%ではないと推測されます。治験で都合の悪いデータを握りつぶすのは、製薬会社の常套手段ですから、再燃の患者がある程度存在することを念頭に入れておいた方がよさそうです。従って、治療後も免疫力を高く維持しておくことが不可欠であり、一定期間は再燃や発がんのないことの確認のための定期検査が必要と考えられます。

 

がん・予防 (2)

2014年10月10日

 3.  臓器別のがん死亡率

 平成24年に“がん”で亡くなった方は36万人で、死亡総数の28.7%と約3人に1人の割合で、死因のトップになって以来増え続けています。従って、がんを予防すれば平均寿命が延び、医療費の削減にも貢献します。

死因

 がんの罹患者数と死亡者数を下図に示しました。臓器別の死亡者数で多いのは、男性では肺、胃、大腸の順で、女性では大腸、肺、胃です。なお、男性の前立腺がんおよび女性の乳がんは罹患者が人口10万人当たり100人を超えるのですが、死亡者では共に20人を下回っています。これは、癌の種類によって発見されやすいもの、および悪性度や治癒率の高低があることを示しています。以下に、死亡率の高いがんについて説明します。

人工10万人当たりのがん罹患者(左)と死亡者数(右)

① 肺がん

 肺がんには、小細胞がんと非小細胞がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)があります。肺の入り口の太い気管支部分(肺門部)には扁平上皮がんが多く発生し、喀痰検査や気管支鏡の検査が有効です。気管支の奥の肺胞がある部分(肺野部)では、殆どが腺がんで、X線検査が有効です。肺がんの原因は、喫煙が挙げられます。近年、禁煙志向が高まっているのもかかわらず肺がん患者が多いのは、肺がん発症までには長期間かかるので、以前の喫煙者が現在発症しているのです。近い将来には、禁煙の効果で肺がんの発症者は減少するものと推測されます。

②. 胃がん

 胃がんは、胃の表面の粘膜に発症し、徐々に粘膜下層、筋層、漿膜へと浸潤していきます。粘膜下層までの進行はまだ早期胃がんなので、非常に高い確率(ほぼ100%)で根治できますが、筋層より深くまで進行すると治癒の可能性が低下していきます。原因は、食生活が大きく影響すると考えられています。また、ヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)の感染も、胃がんの発症に関与します。中高年では7~8割がピロリ菌に感染していますが、その内で胃がんになるのは約0.5%(200人に1人)の割合です。しかし、胃がん患者には高確率でピロリ菌の感染がみられます。抗生物質による除菌は、現在は健康保険が使えるので安くできるようになりました。副作用は、肝障害や下痢などがあります。病院は除菌を勧めますが、がんになる確率が0.5%なので、除菌をするかしないかは本人の意志次第です。ただし、すでに胃に障害がある場合には除菌が必要です。また、症状がなく除菌を望まない場合には、定期的に胃カメラなどでの検診が望まれます。

③ 大腸がん

 大腸は約2 mの長さで、結腸(上向結腸、横行結腸、下向結腸、S字結腸)、直腸、肛門の3部位に分けられます。大腸がんの発生し易い部位は、直腸35%とS字結腸34%で、約8割の大腸がんは肛門から近くの部位に発症します。初期の大腸がんであれば、内視鏡手術で簡単に除去できますし、予後も良好です。定期的に便の潜血反応や内視鏡検査を受けることで、早期発見が可能です。大腸がん発症の原因として、食の欧米化で動物性脂肪の摂取量が増えたことが挙げられます。本来、農耕民族である日本人は、農作物の食事に対応した腸の形状になっているので、洋食よりも和食が適しているのです。

4.最新のがん検査(マイクロRNA)

ヒトの体は、細胞の核内にあるから転写されたRNAにより合成されたタンパク質で出来ています。RNAの中には、タンパク質合成の遺伝情報を含まないRNA(ノンコーディングRNA)が大量に存在しています。その中でも、マイクロRNA(miRNA)と呼ばれる長さ20から25塩基ほどのRNAは、遺伝子の働きを抑制する機能を持ち、がんなどの疾患と関連することが、近年明らかになり注目されています。このマイクロRNAは、細胞内に存在するタンパク質への翻訳はされないで、他の遺伝子の発現を調節する機能を有すると考えられているRNAの一種です。ヒトには2500種類以上あり、がん患者の血液中では種類や量が変動することが明らかになったので、そのパターンを調べることで、がんの種類を特定する検査です。


開発対象となっている13種類のがんは、
胃がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胆道がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、乳がん、肉腫、神経膠腫
です。1回の採血で検査が出来る上に、初期の癌も発見できるメリットがあります。現在実用化できているのは、乳がんと膵臓がんの2種類のがんで、他にアルツハイマー病があります。採血し、血中のマイクロRNAを抽出したのち、発現パターンを調べます。その有力な手法が、マイクロアレイです。この方法では数千から数万種類の遺伝子の発現パターンを短時間で網羅的に調べることができます。近い将来には、健康診断などの1回の採血で多種類のがんの有無を簡単に調べられるようになるでしょう。 

 

抗がん剤の副作用(1)

2014年02月10日

皆さんは、抗がん剤にどのようなイメージをお持ちでしょうか?一般には、がんが治る薬として理解されていることでしょう。では、実際に抗がん剤でがんが治る確率がどの位かを、下図に示します。この中で有効率や消失率などの言葉が出て来ますので、先に説明を加えておきます。有効率とは、部分寛解のことで、腫瘍の縮小率が50%以上で、新しい病変出現が4週間以上無い状態を示しています。また、消失率とは、がんが全く無くなることを意味しています。抗がん剤が有効ながんは、急性白血病、悪性リンパ腫、睾丸腫瘍、咽頭がんなどですが、それでも消失率は約半分の症例です。しかも、これらの年間死亡者は1500人程度の少数派なのです。乳がん、卵巣がん、骨髄腫などへの抗がん剤の投与は、病気の進行を遅らせることが出来る程度と解釈すべきで、治癒は殆ど期待できません。がんの中で最も頻度が高く、年間数万人以上が死亡する胃がん、大腸がん、肺がんなどは、抗がん剤による有効率は極めて低く、一部の患者で症状が和らぐ程度なのです。ましてや、消失率に至ってはほぼ期待できない結果です。脳腫瘍、腎がん、膵がん、肝がんでは、効果は無いと考えるべきでしょう。では、何故にこの様な低い効果にも関わらず抗がん剤が使われているのでしょうか?

 抗がん剤の認可は、他の薬剤よりも極端に甘い基準でされているのです。先ず、第一段階の健康者での安全確認は他の薬剤と同じです。しかし、第2段階以降がお目こぼしの様な審査なのです。第2段階では、ごく少数のがん患者で効果の範囲や適正量の調査がなされますが、ここでは部分寛解が20%の患者で認められれば良いのです。即ち、80%の患者では全く効果がなくても認可になるのです。次に、第3段階の一定規模の患者での効果や安全性の最終確認ですが、抗がん剤の場合には必要ないのです。恐ろしいことだと思いませんか?現在ある100種類近い抗がん剤のうち、延命効果が確認されたものは殆どありません。

抗がん剤の効果

その上、副作用の発言頻度の調査も必要ありません。この様に、抗がん剤の効果は極限られたものですが、ご承知のように抗がん剤の副作用は沢山あるのです。最も多いのは吐き気、食欲不振や下痢などの消化器症状です。次に、骨髄抑制による貧血、他には腎機能障害や神経障害などもあります。抗がん剤の効果の恩恵を受けるのは極々一部の患者のみで、半数以上の患者は副作用のみで、逆に体力を奪われ、早死にしているのが現状なのです。

この様な抗がん剤ですが、ほとんどの医師は何のためらいもなく使用しています。私も、病院に勤務していた時には、がん治療には手術と抗がん剤という組み合わせに何の疑問も持っていませんでした。なぜなら、その様に教育されているのですから、それが正しいと思っているのです。この会社に籍を置いてから、沢山のがん患者さんと接し、その状況を知ると、何かが間違っていると感じるようになったのです。どうしてこのような現実が教育現場で知らされないのかといえば、やはり、製薬会社の売り上げ至上主義といえるでしょう。がん患者一人当たりの治療費は、発症してから死に至るまでの平均3年間で、約1500万円といわれています。ちなみに、2010年のがん領域のT製薬会社の1社のみの売り上げは、1400億円以上あるのです。この利権を手放すはずはありません。抗がん剤を使用するべきか否は、次のことを充分に考慮したうえで判断してください。効果より副作用がはるかに大きく、寿命を縮めることが多い。従って、効果と副作用の重さを天秤にかけ、どちらが重いかを熟考してください。

この様な抗がん剤ですから、本来は抗がん剤の効果や副作用に精通した専門医が行うべきなのですが、今の日本の現状は、殆どの場合は外科医が行っています。日本のがん薬物療法専門医は、全国で約600名しか認定されていません。アメリカの約1万人と比較すると、極端に少ないのがご理解いただけると思います。専門医の少ない理由は、資格取得の難易度が高く、5年以上のがん治療経験、認定施設での2年以上の研修に加え、過去5年以内で30症例以上の症例報告が必要だからです。利権ではなく、患者のことを考えてくれる専門医が、現在の10倍くらいに増えてほしいものです。