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膵臓がん

がん研究最前線: ② 膵臓がんを血液検査で早期発見

2016年06月10日

膵臓がんは、その症状が乏しい上に、画像検査でも見つけ難いことが知られています。従って、発見された時点で既に進行している症例が多く、5年生存率(9.2%)や10年生存率(4.9%)が低いので、最も危険ながんの一つに分類されます(本ブログ2016年2月10日)。故に、早期発見の手法確立が望まれていました。

血液検査で早期の膵臓がんを見つける手法を、東京大学の研究チームが発表しました。この測定原理は、アメリカのがんセンターの研究グループが発表した方法を応用したもので、膵臓がんの発症時には特定の20~25塩基の短いマイクロRNAが大量に現れ、これががん遺伝子にくっつくと、がん遺伝子を抑えきれなくなり、膵臓がんを発症するというものです。(マイクロRNAとは、たんぱく質を合成する通常のRNAと異なり、遺伝子が使われる量の調整などをしています。1000種類以上のマイクロRNAが見つかっています。)従って、血液中のこのマイクロRNAを正確に測定することで、膵臓がんを早期に発見できるのですが、既存の方法では血液中の量を測定することができませんでした。東京大学の研究チームの開発した方法では、化学的な処理でこのマイクロRNAの特徴的な配列のみを抜き出すことで、血液での測定を可能にしています。この方法で測定すると、膵臓がんの患者のマイクロRNA量は健常者の5倍程度の増加が認められています。さらに、膵臓がんの前段階でも既にマイクロRNAの増加があり、膵臓がんの手術後には低下することが確認されています。

今後、さらに症例数を増やして精度を向上させることで、健康診断の血液検査でも早期の膵臓がんを見つけることが可能になりますので、生存率の向上に寄与することでしょう。

がんの5年生存率と10年生存率 (2:膵臓がん)

2016年02月10日

がんの生存率の調査結果から、膵臓がんは5年生存率(9.2%)、10年生存率(4.9%)と最も生存率が低く、危険ながんであることが示されています。最近では、ジャーナリストの竹田圭吾氏が、51歳の若さで亡くなったことがニュースになりました。一般的に、膵臓がんは症状に乏しく、検診のエコー検査などでも見つけにくいので、発見された時には既にかなり進行していること多いです。初期段階のStage Ⅰで発見されたとしても、下表のごとく、5年生存率は40.5%、10年生存率に至っては29.6%しかありません。病期の進行したⅢ~Ⅳ期では、僅かに一桁またはそれ以下の生存率です。膵臓がんでは、現時点では決定的な治療法は無く、手術と抗がん剤で対応していますが、殆ど無力な状況です。

膵臓がんは、罹患してしまうと長期生存が厳しい現実ですから、リスク因子を軽減することが大切です。膵臓がんの原因は、遺伝性は10%以下で、大部分のリスク因子は喫煙(2.2倍)、肥満(2倍)、飲酒(1.38倍)、糖尿病(血糖値10mg/l当たり14%)などがあげられます(研究者によりリスク倍率は異なります)。従って、日常生活を改善することが重要です。①煙草は百害あって一利なし。禁煙しましょう。②BMIが22~25位の体型が、最も病気が少なく長生きできます。食事療法と運動療法で、適正な体格にしましょう。③酒は百薬の長ですが、飲み過ぎは毒に変わります。適量に。④糖尿病は、多くの病気を誘発します。適正な血糖値にコントロールしましょう。これらの生活改善で、他の疾患にもなり難い健康体に近づきます。

万が一に罹患してしまった場合には、諦めずに生きる気力を保つことです。私がこの会社にお世話になってから、医学の常識では理解できない症例を幾つも経験しています。その一つが、昨年の膵臓がんでした。除去手術のために開腹した方は、既に手の施しようがなくそのまま閉じたので、通常はごく短期間で亡くなります。この方は、抗がん剤の投与を拒否して、美露仙寿(めいるせんじゅ)と免疫療法の併用を選択しました。現在は、腫瘍マーカーは正常値で、ゴルフを楽しむほどに回復しています。すい臓がんの生存率は極めて低いのですが、その低い数字の中に自分が入ることに気力を集中しましょう。生きようとする気力は、免疫力や回復力を高めます。