年齢を重ねる毎に、慢性の疾患などに罹りやすくなり、より多くの薬を服用する様になります。実際、65歳以上の90%は何らかの薬を服用し、その内の約半数は5種類以上、約10%は10種類以上の薬を服用しています。
しかし高齢者では、薬の服用による副作用のリスクが高まっているのです。その理由は、①肝臓での薬の分解能の低下、②腎臓が薬を尿中に排泄する能力の低下、③身体の水分量の減少による水溶性の薬の高濃度化、④脂肪組織の増加による脂溶性薬の体内の蓄積などがあります。その上、多くの薬剤の服用による薬物相互作用のリスクが格段に増加しています。
薬剤の中でも特に、睡眠薬と抗不安薬は高齢者にとってリスクが高くなっています。即ち、これらの薬を高齢者が服用することで、転倒や認知機能障害が起こりやすくなることが報告されています。また、止められなくなる依存性を起こしやすく、死亡リスクも高くなるのです。現実に、これらの薬剤は80歳代の高齢者に最も多く処方されており、その危険性が指摘されています。
高齢者へのリスクの高い薬の処方は、本来は専門家である担当の医師が抑制していくべきなのですが、患者に求められれば断れないことや、経営を考えて多くの処方をするなどの問題点もあります。薬は必要なものではあるのですが、患者自身もその使用は最小限度に抑えるべきです。