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遺伝子変異

タバコと酒で食道がんのリスク増

2019年01月10日

がんの発症率は2人に1人で、死亡原因の約3割はがんと高率です。従って、健康長寿を目指すには、がんのリスクを避けることが重要です。以前のブログにて「喫煙で遺伝子変異」が起きやすくなり、がんの発症を誘発することを示しました(喫煙で遺伝子変異)。京都大学や東京大学医科学研究所などの研究チームが、喫煙や飲酒により食道がんを発症する詳しい仕組みを解明し、世界でトップレベルの科学誌:ネイチャーに発表しました。

研究方法は、健康な人と食道がんの患者の計134名(23~85歳)の食道から、がん化していない細胞を採り、遺伝子の変異を比較しています。その結果、喫煙と飲酒が多いほど発がんに関わる遺伝子(NOTCH1、TH53など)に変異が多く起きていることを観察しています。この変異が、がんの発症の元になっているのです。

少量の酒は健康に役立ちますが、過ぎたるは及ばざるがごとしです。一方、喫煙は百害あって一利なしです。食道がんの他にも肺がんのリスクを高くしたり、高血圧の原因になるので血管系の疾患のリスクも高めますので、禁煙しましょう。日常生活でのがんの予防は以前のブログをご覧下さい。(がん・予防(3)(4)

 

 

遺伝性乳癌はもう一方も予防的切除を推奨(日本乳癌学会)

2018年05月20日

日本乳癌学会は、遺伝子変異による乳癌を発症した患者では、未だ癌になっていない側の乳房も予防的に切除することを「強く推奨する」としました。

乳癌は女性に最も多いがんで、乳癌の年間発症者は約8万人にのぼります。このうち遺伝性の乳癌は5~10%を占めており、BRCA1またはBRCA2と呼ばれる遺伝子に変異の認められる女性の場合は乳癌になりやすく、生涯のうちに40~90%の高い確率で乳癌を発症します。従って、遺伝子変異の認められる乳癌を発症した場合は、再発防止の観点から、もう一方の未だ発症していない乳房も、予防的に切除することを強く推奨するとしています。この予防切除で10年後の生存率を、切除しなかった71%から89%に上昇するという英国の研究結果があります。

生存率が上昇することは結構なことですが、問題点も考えられます。第一に、予防切除は健康保険の適用外ですので、自費負担額は約150万円と高額です。第二には、切除しなくても再発しないかもしれませんので、心理的に女性のシンボルである乳房はできる限り切除したくないと考える方も多くいます。予防切除は、健康保険の適用で安価にできるように健康保険制度を改正することと、心理カウンセリングが十分に行われることで女性患者の心理的負担が取り除かれることが必要です。