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抗生物質

風邪とインフルエンザ(罹患時の対処)

2017年12月10日

3.症状が軽度なら入浴可

風邪をひいたときでも、入浴してさっぱりしてから寝たいものです。症状が軽度なら入浴しても可ですが、そのおおよその基準は熱が38℃以内で、酷い悪寒や倦怠感がない場合です。これ以上の症状がある場合には、体力を消耗することで状態が悪化する可能性がありますので、入浴は控えましょう。

入浴するときの注意点は、脱衣場や浴室を暖めておいて、身体を冷やさないことが大切です。湯温は、熱いと体力を消耗しますので、ぬるめにします。入浴後は、湯冷めを防ぐために、早めに布団に入りましょう。

4. 解熱剤は免疫力(回復力)を低下させる

風邪やインフルエンザに感染したときは、発熱する場合が多いのですが、その時に使う解熱剤は、正しい使い方をしないと逆に回復を遅らせることになります。

罹患して発熱するのは、免疫力を高めて回復するための反応なのです。即ち、ウイルスは熱に弱いので、体温を上げることでウイルスを弱らせているのです。さらに、免疫を担当する白血球は、体温が高い方が活性が上昇します。例えば、体温が36.5℃から37.5℃に1℃上昇すると、免疫力は5~6倍上昇します。従って、解熱剤で平熱まで下げてしまうと、回復が遅れることになるので、38℃くらいまでは解熱剤は使用しない方がより早く回復します。インフルエンザの場合には、これ以上に発熱することが多いので、解熱剤を使用して38℃くらいにまで下げることはOKです。

5. 風邪薬は症状を抑えているだけ

風邪薬(総合感冒薬)は、咳、鼻水、発熱、喉の腫れなどの症状を緩和する成分が入った薬剤で、服薬するとこれらの症状は緩和します。症状が治まっていても、風邪の原因となっているウイルスをやっつけた訳ではありません。症状が改善しても治ったと勘違いせずに、安静と栄養補給を心がけて下さい。

6. 抗生物質は風邪やインフルエンザのウイルスには効果無し

風邪やインフルエンザに罹患したときに、病院から抗生剤を処方された経験はありませんか?抗生物質は細菌を殺す薬剤なので、ウイルスには効果はありません。最初に述べたように、風邪の約9割はウイルス感染が原因です。インフルエンザもウイルスなので、抗生物質は効果がありません。医師の中には、ウイルス感染時は体力が低下しているので他の細菌の感染を予防する意味で処方している場合や、何か薬を処方しないと患者が納得しないという理由で効果の無い抗生物質を処方している場合などがありますが、医療費の無駄遣いになっています。(風邪には抗生物質を使わない

7. 抗インフルエンザ薬はウイルスの増殖を抑える(殺す作用はない)

治療薬として使われている抗インフルエンザ薬(リレンザ、タミフルなど)の作用は、ウイルスを殺しているわけではなく、増殖を抑えているのです。この作用により、回復までの期間を早くすることと、重症化を防ぐ目的で使用されています。ウイルスの増殖は、発症後48時間(2日)程度でピークに達し、その後は免疫力により減少しますので、これ以降は投与しても意味がありません。抗インフルエンザ薬を使用する場合は、発症の当日または翌日までです。インフルエンザに罹患した場合は、回復までには一般的に1週間程度かかりますが、抗インフルエンザ薬の投与により4~5日になりますので、2~3日短くなる程度です。

8. 窓やドアの施錠(異常行動による転落事故の防止)

インフルエンザ感染者では、異常行動による転落事故が多数報告されています。その殆どは子供で、男の子が殆どです。この異常行動は、抗インフルエンザ薬を投与した患者に多いのですが、使用していない患者にも見られており、原因はまだ解明されていません。従って、インフルエンザに感染した子供(特に男の子)の場合は、異常行動による転落事故を未然に防ぐために、窓やドアを施錠しておくことが必要です。親御さんはお子さんの行動に気をつけて観察して下さい。

免疫力の向上!

風邪やインフルエンザに罹患しないための基本は、うがいと手洗いですが、重要なことは普段の生活で免疫力を高めるような習慣をつけることです。バランスの良い食事、適度な運動、規則正しい生活です。特に受験生にとっては大切な時期ですので、健康管理に努めましょう。(受験生の健康管理

 

 

風邪には抗生物質を使わない:厚生労働省の医師向け手引き

2017年10月01日

厚生労働省は医師向けに、「風邪には抗生物質を処方しない事」を推奨する手引きを示しました。その理由は、①風邪のウイルスには抗生物質は効果がないこと、②過度な抗生物質の使用で薬剤耐性菌を増やしてしまうことにあります。

風邪の原因の約90%はウイルスなので、抗生物質は効かないことは本ブログで示してきました(風邪への対処法)。抗生物質は細菌には効果があるのですが、ウイルスには効果が無いのです。従って、風邪をひいた場合は、栄養と水分を十分に摂って暖かくして休むのが正しい対処法なのです。

しかしながら、風邪で受診した患者の約6割は効果のない抗生物質が処方されています。その原因として、4割以上の患者は抗生物質はウイルスをやっつけるので、風邪やインフルエンザに効果がある、と間違った知識を持っていることにあります。一方の医師の方にも問題があり、万一細菌が原因だったら重症化の危険があるとの過度な心配、薬を処方しないと患者が納得せずにヤブ医者扱いされること、処方箋で収入になる、などの理由で効果のない抗生物質を処方している現実があるのです。

その結果として、抗生物質の多用は薬剤耐性菌を増やす一因になっているのです(薬剤耐性菌)。薬剤耐性菌とは、抗生物質にさらされながらも生き残った菌は、その抗生物質に耐えて生き残れるように変化してしまうのです。薬の効かない菌が増えることで、患者の命を脅かすことになってしまいます。加えて、抗生物質の常用は、腸内細菌が死んでしまうことで、下痢や免疫力の低下も招きます。

医師が正しい処置をするのは当然ですが、患者の方々も薬や病気に関する知識を身につけることも必要です。本ブログは、一般の方々の健康維持に必要な内容をお届けしていますので、ぜひ参考にしてください。

 

中高生のピロリ菌検診

2017年03月10日

中高生を対象としたピロリ菌の検診をする自治体が拡大しています。佐賀県は2016年度から始め、鹿児島県は今年度から高校生を対象に実施の予定です。大分県や北海道でも計画中です。

ピロリ菌が胃がん発症のリスク因子であることは知られていますが、感染経路や感染による胃がん発症率などは比較的知られていないので解説します。感染経路は、子供のころに感染者の箸などからの感染が主です。一度感染すると、除菌しない限り一生涯に渡って胃の中に住み続けます。

感染率は、生まれたときはゼロですが、加齢とともに上昇して、中高年では約8割が感染しています。感染すると炎症を起こすことがありますが、症状が全くない人が殆どです。ピロリ菌に感染すると胃がんを発症すると思っている方も多いのですが、実際に胃がんを発症する確率は0.5%程度(感染者の200人に1人)です。なお、胃がんを発症しても初期段階ならばほぼ100%治癒できますので、年に1度の定期検診は必須です。

除菌は、抗生物質を1週間程度投与すれば約8割の確率で菌を除去できます。除去できなかった残りの2割の人は、抗生剤の種類を変えてさらに投与します。除菌には健康保険が適用になりますので、経済的な負担は小さくなっています。

ピロリ菌の感染率は、除菌処置などにより年々低下しています(上図)。中高生からの検診の広がりで、感染率はさらに低下することが期待されます。

 

抗生物質の多用で耐性菌

2014年04月20日

  抗生物質は、ご承知の通り、細菌感染症から人類を救ってくれたといっても過言ではありません。しかしながら、現在の医療ではその使用量が度を超しているために、抗生剤の耐性菌を生み出し、また使用過多による体内の有益菌までも死滅させることがあるのです。抗生剤の効かない耐性菌は、昔はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が話題になり、その後はバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)が問題になりました。これらの菌がなぜ出現したのかと言えば、抗生物質を使いすぎたために、細菌がそれに対抗して抗生物質が効かないように進化したのです。日本は世界の中でも最も抗生剤を多用しているので、耐性菌であるMRSAの院内感染の多いのが現状です。感染症の患者から検出される黄色ブドウ球菌の内、耐性菌のMRSAが検出される頻度は、長崎大学では約60%位の高頻度です。海外ではアメリカやイタリアでも40%程度、ドイツでは10%以下、オランダは殆ど検出されていません。如何に日本の検出率が高いかが解ります。何故に、この様な高い頻度で耐性菌が蔓延するのでしょうか?それは抗生剤の使い過ぎにあるのです。例えば、風邪をひいて病院にいくと抗生物質が処方されることが多いです。でも、インフルエンザなどのウイルスには抗生物質は効かないのは常識です。でも、何か薬を出さないと患者が納得しないので、抗生剤を処方するのです。患者は薬はいらないと断った方が良いのです。


耐性菌の歴史

  抗生物質の多用は、薬剤耐性菌を生み出すばかりではありません。皆さんも、抗生物質を飲んだ後に下痢をした経験はありませんか?腸内には100兆個と言われる腸内細菌が住んでいて、食物の消化吸収を助け、感染防御や免疫刺激を行うことで体内の半分以上の免疫機能を担っているのです。その腸内細菌までもが、抗生剤の多用で死んでしまうために、下痢をしたり、免疫機能が低下したりしているのです。また女性では、膣内細菌が有害な菌の繁殖を抑えているのですが、抗生剤の多用でその有益菌が死んでしまい、膣内に雑菌が繁殖しやすくなるのです。この様に、抗生剤は正しい使用方法では有益なのですが、多用することにより免疫力が落ちて、健康を害するのです。