身体の外から光を当ててがん細胞を治療する臨床試験が、アメリカの3大学で始まります。この治療法を開発したのは日本人の研究者で、米国立衛生研究所の小林久隆医学博士です。小林博士の研究は、2012年のオバマ大統領の一般共教書演説で紹介されている期待の治療法です。
その治療法とは、①がん細胞に結合する抗体に、光に反応する化学物質を結合させる。②これを、がん患者に注射すると、がん細胞だけにくっつく。③体外から近赤外線を照射すると、光に反応する物質が、がん細胞と一緒に壊れる。
この治療法の画期的な点は、外科手術が必要ないので、患者への負担が極めて少ないことに加え、正常細胞への侵襲がないので抗がん剤のような副作用がありません。さらに、この治療法は大掛かりな設備投資が必要ないので、地方の一般病院でも実施されるようになれば、どれだけ多くのがん患者の命を救うのか、計り知れないほどの研究です。がん撲滅への大きなステップになることが期待されています。
他のがん治療の最新研究は、微小カプセルでがん細胞だけを放射線破壊する方法です。この研究は、東京大学の片岡一則教授らのグループの発表です。55 nm(nmは10億分の1㍍)の微細カプセルの中にガドリニウムという元素を入れます。このカプセルには、がん組織に集まる性質を持たせてあるので、これをがん患者に注射します。ガドリニウムは、中性子線が当たると放射線を出して、結合したがん細胞を破壊します。マウスの実験では、がんの増殖が大きく抑えられたとのことです。
3月20日の「線虫ががんを見つける」研究や、今回のがん細胞の光治療や微小カプセルによるがん破壊治療は、一日も早く実用化して欲しいと願っています。