東京都の公立病院で、透析治療を中止した40歳代の女性患者が死亡した件が話題になっていますが、皆様は如何お考えでしょうか?
人工透析治療とは、低下した腎機能に代わって人工的に血液の浄化を行うものです。上図の左のように、腕の血管にチューブをつなぎ、ポンプで血液を透析装置の中に誘導します。機械の中は右図のようになっていて、ダイアライザー(透析する機械)の中の透析膜には小さな穴が開いていて、周りは透析液が流れています。身体に必要な血球やタンパク質などは、透析膜の穴よりも大きいので、そのまま通過して身体に帰って行きます。一方、不要なものはこの穴から通り抜けて、透析液の方に移動します。透析液は、1回の治療で約120~150㍑必要で、使用後は廃棄します。この様な仕組みで、人工的に腎臓の代わりをしています。
腎不全患者が透析治療を中止すると、身体にとって不要なものが除去できないので、死亡してしまいます。日本透析医学会が2014年に発表した透析を中止するガイドラインでは、「多臓器不全などで、透析措置が生命を著しく損なう場合」や「がんの末期などで全身の状態が極めて不良」状態などを定めています。
疾患時にどの様な治療を選ぶかは、患者自身の意思で決めるべきです。ただし、病気の時は多くの人はネガティブな思考回路になるので、的確な判断が出来ない場合も多いために専門的なアドバイスが必要です。患者が透析治療を拒否した場合は、医師は治療の必要性を説明することは出来ても、強制的に透析治療をすることは難しいでしょう。今回のケースでは、担当医が40代の女性患者に対し人工透析治療をやめる選択肢を提示し、患者は透析治療をしないことを希望しています。しかし、治療を中止した結果として苦痛が大きくなってきたために、治療の再開の意思を示したと報道されています。この場合には、担当医が治療中止の選択肢を提示しても良いのか?と言う点に問題が残されます。また医師の立場としては、患者が透析治療を再開することを求めた時点で、希望通りにすべきと考えられます。
人間は、永遠には生きることはできないので、必ず死が訪れます。臨終に際して、患者としてどの様な治療を望むのか、また医師はどの様な治療をすべきかは、難しい問題です。(安楽死を認めるべきか?)