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iPS細胞でパーキンソン病の治療

2017年09月10日

パーキンソン病は、脳内で情報伝達をする“ドーパミン”を出す神経細胞が減少することで発症します。徐々に体が動かなくなる難病で、患者は国内で推定16万人もいますので、有効な治療法の開発が望まれています。京都大学のiPS研究所は、iPS細胞の移植によるサルのパーキンソン病の治療と、その安全性を確認しました。

その方法は、ヒトのiPS細胞から神経のもとになる細胞を培養します。パーキンソン病を発病して手足の震えのあるサルの脳に移植します。1年後には震えなどの症状が改善して、元気に動き回るように回復しました。移植後は、2年経っても移植による異常は認められていませんので、ヒトへの応用も近いでしょう。

iPS細胞を用いた治療では、本ブログで紹介しているように、種々の疾患の治療が研究されています(糖尿病心筋梗塞がん)。また、iPS細胞治療の課題であるがん化の抑制の研究は日々進展し(がん化抑制)、バンクの設立(バンク)も準備が進んでいます。1日でも早く臨床応用され、苦しんでいる患者さんたちが救われること望んでいます。

話題の最新機器(スマホ顕微鏡、レーザー血糖測定器)

2017年09月01日

話題の最新機器を2つ紹介します。

1つ目は、スマホを利用して細菌が見える小型顕微鏡のミルキン(mil-kin;見る菌)です。最近、ポテトサラダでO-157に集団感染したニュースが頻繁に報道されていますので、細菌による食中毒への関心が高まっています。この小型顕微鏡のミルキンは、高さ約15cm、幅約18cm、奥行き約11cm、重さ約450gとコンパクトサイズですが、スマホを取り付けて顕微鏡としての機能は拡大倍率約1000倍で、1ミクロンまで観察できます。ちなみに、食中毒菌のO-157は3ミクロン、黄色ブドウ球菌は1ミクロンです。価格は99800円ですので、中小企業や個人商店でも取得可能な値段です。

2つ目は、採血不要の血糖値センサーです。糖尿病患者さんが自己血糖測定器で血糖値を計る場合は、指に針を刺して採血しますので、痛みがあり負担が大きいのが現状です。このセンサーは、指に赤外線レーザーを当てるだけで、指の血液中で吸収される光の強さで血糖値が測定できます。来年度から大学病院などで臨床試験が始まり、5年後の発売予定です。

色々な機器が開発され、健康管理にも便利な世の中になってきていますが、大切なことは感染症や病気にならないようにすることです。手洗いやうがいを習慣づけること、バランスの良い食事と適度な運動で免疫力や体力をつけるようにしましょう。

ストレスで突然死するメカニズム

2017年08月20日

慢性的なストレスで突然死するメカニズムを、北海道大学の研究チームがマウス使った実験で明らかにしました。そのメカニズムとは、慢性的なストレス(本研究では、マウスの飼育箱の底に水を溜めて熟睡させない状態)により、脳内のストレス中枢が活性化して、特定の免疫細胞が脳内に集まり炎症が発生する。この炎症が消化管に広がると、血中のカリウム(K)濃度が増加して心不全を発症して死に至る、というものです。

近年、ブラック企業での加重労働で自殺する件が報道されていますが、ストレスが継続的に加わることで突然死の危険性も増加します。仕事も大事ではあるのですが、命の方がはるかに大切です。いかにストレスを回避するかを考えましょう。

ストレス解消法はそれぞれですが、一般的なものは ①カラオケで大声で歌う。②旅行で気分転換。③温泉やスーパー銭湯などでリラックスなどがあります。他には、漢方も効果があります。崇城大学薬学部で研究している漢方の健康飲料の美露仙寿(メイルセンジュ)の研究データを紹介します。この希釈液を飲料水としたマウスと、水を与えたマウスを、それぞれ水槽で長時間泳がせるというストレスを与えます。すると、水を飲んでいるマウスは短時間であきらめて泳ぐのを止め、                                                      うつ状態になってしまいます。一方、漢方飲料を飲んでいるマウスは長時間のストレスにも耐えて泳ぎ続けます。この様に、漢方には抗ストレス効果もあるのです。上記のようなストレス解消法と漢方を組み合わせることで、より効果的にストレスを解消して突然死のリスクを減らしましょう。

血液1滴で13種類のがんを早期発見のマイクロRNA法が臨床研究へ

2017年08月01日

血液1滴で13種類のがんを早期発見できるマイクロRNA法が、来月から国立がん研究センターで臨床研究が始まり、3年以内の実用化を目指します。この方法は、本ブログの2014年10月10日:がん・予防(2)の中の④最新のがん検査(マイクロRNA)で紹介しました。測定原理は、がん細胞と正常細胞では遺伝子の働きを調節するマイクロRNA(短いRNA)の種類が異なり、その違いはがんの初期段階であるステージ1でも高確率で検出できます。13種類のがんの検出率は95%以上で、乳がんでは97%です。

これまでのがん検診では、乳がん検診のマンモグラフィーに特徴的なように、陽性であるにもかかわらず検出できずに手遅れになるケースも見られており、その結果としてがん検診の受診者と受けないグループでは死亡率に差がありませんでした。2017年2月10日:乳がん検診:マンモグラフィーの問題点、2013年10月10日:がん検診で死亡率は低下しない

このマイクロRNA法によるがん検診が定期検診や人間ドックに取り入れられると、患者さんの肉体的負担は低減し、がんによる死亡率の大幅な減少が期待できます。さらに、米国立衛生研究所の小林博士の研究しているがん細胞の光治療は、外科手術の必要が無く高確率で完治できるのですが、こちらの臨床研究も進み実用化も近い様です。近い将来に、がんは“治る病気”になるでしょう。2015年7月10日:がん治療の最新研究(がん細胞の光治療&微少カプセル治療法)

 

手足口病が流行の兆し

2017年07月10日

手足口病が西日本を中心に流行の兆しを見せています。国立感染症研究所の発表によると、7月に発表した患者数は、昨年同期の6倍で、都道府県では鳥取県、香川県、滋賀県が多くなっています。

手足口病とは、7月にピークを迎えるウイルス感染症です。症状は、口の中や手のひら、足の甲や裏に水疱性の発疹が現れ、1~3日くらい発熱することがあります。通常は数日で回復しますが、希に髄膜炎などの深刻な病気に進行する場合もあります。患者の殆どは5歳未満の小児ですが、大人が発症する場合もあります。

特効薬はないので、痛み止めや粘膜保護剤の軟膏などの対処療法のみです。他の子供に感染させる可能性がありますので、手洗いやマスクの使用、玩具は共有しないことに気をつけます。症状が回復しても暫くはウイルスが残りますので、オムツの処理をした後などは十分な手洗いで、他への感染を防ぐことが必要です。