抗がん剤の副作用(1)

2014年02月10日

皆さんは、抗がん剤にどのようなイメージをお持ちでしょうか?一般には、がんが治る薬として理解されていることでしょう。では、実際に抗がん剤でがんが治る確率がどの位かを、下図に示します。この中で有効率や消失率などの言葉が出て来ますので、先に説明を加えておきます。有効率とは、部分寛解のことで、腫瘍の縮小率が50%以上で、新しい病変出現が4週間以上無い状態を示しています。また、消失率とは、がんが全く無くなることを意味しています。抗がん剤が有効ながんは、急性白血病、悪性リンパ腫、睾丸腫瘍、咽頭がんなどですが、それでも消失率は約半分の症例です。しかも、これらの年間死亡者は1500人程度の少数派なのです。乳がん、卵巣がん、骨髄腫などへの抗がん剤の投与は、病気の進行を遅らせることが出来る程度と解釈すべきで、治癒は殆ど期待できません。がんの中で最も頻度が高く、年間数万人以上が死亡する胃がん、大腸がん、肺がんなどは、抗がん剤による有効率は極めて低く、一部の患者で症状が和らぐ程度なのです。ましてや、消失率に至ってはほぼ期待できない結果です。脳腫瘍、腎がん、膵がん、肝がんでは、効果は無いと考えるべきでしょう。では、何故にこの様な低い効果にも関わらず抗がん剤が使われているのでしょうか?

 抗がん剤の認可は、他の薬剤よりも極端に甘い基準でされているのです。先ず、第一段階の健康者での安全確認は他の薬剤と同じです。しかし、第2段階以降がお目こぼしの様な審査なのです。第2段階では、ごく少数のがん患者で効果の範囲や適正量の調査がなされますが、ここでは部分寛解が20%の患者で認められれば良いのです。即ち、80%の患者では全く効果がなくても認可になるのです。次に、第3段階の一定規模の患者での効果や安全性の最終確認ですが、抗がん剤の場合には必要ないのです。恐ろしいことだと思いませんか?現在ある100種類近い抗がん剤のうち、延命効果が確認されたものは殆どありません。

抗がん剤の効果

その上、副作用の発言頻度の調査も必要ありません。この様に、抗がん剤の効果は極限られたものですが、ご承知のように抗がん剤の副作用は沢山あるのです。最も多いのは吐き気、食欲不振や下痢などの消化器症状です。次に、骨髄抑制による貧血、他には腎機能障害や神経障害などもあります。抗がん剤の効果の恩恵を受けるのは極々一部の患者のみで、半数以上の患者は副作用のみで、逆に体力を奪われ、早死にしているのが現状なのです。

この様な抗がん剤ですが、ほとんどの医師は何のためらいもなく使用しています。私も、病院に勤務していた時には、がん治療には手術と抗がん剤という組み合わせに何の疑問も持っていませんでした。なぜなら、その様に教育されているのですから、それが正しいと思っているのです。この会社に籍を置いてから、沢山のがん患者さんと接し、その状況を知ると、何かが間違っていると感じるようになったのです。どうしてこのような現実が教育現場で知らされないのかといえば、やはり、製薬会社の売り上げ至上主義といえるでしょう。がん患者一人当たりの治療費は、発症してから死に至るまでの平均3年間で、約1500万円といわれています。ちなみに、2010年のがん領域のT製薬会社の1社のみの売り上げは、1400億円以上あるのです。この利権を手放すはずはありません。抗がん剤を使用するべきか否は、次のことを充分に考慮したうえで判断してください。効果より副作用がはるかに大きく、寿命を縮めることが多い。従って、効果と副作用の重さを天秤にかけ、どちらが重いかを熟考してください。

この様な抗がん剤ですから、本来は抗がん剤の効果や副作用に精通した専門医が行うべきなのですが、今の日本の現状は、殆どの場合は外科医が行っています。日本のがん薬物療法専門医は、全国で約600名しか認定されていません。アメリカの約1万人と比較すると、極端に少ないのがご理解いただけると思います。専門医の少ない理由は、資格取得の難易度が高く、5年以上のがん治療経験、認定施設での2年以上の研修に加え、過去5年以内で30症例以上の症例報告が必要だからです。利権ではなく、患者のことを考えてくれる専門医が、現在の10倍くらいに増えてほしいものです。