薬の「飲み残し」や「飲み忘れ」は、処方された薬全体の24%にあたり、年間では475億円にもなります。何故に、これほど多くの薬が無駄になるのでしょうか?いくつかの要因があるのでしょうが、その中の1つには、高齢者が多種類の薬を処方されて「何をどう飲めば良いのか分からない」ことがあります。高齢者の場合、10種類以上の薬を処方されていることは珍しくありません。それらの薬の全てが、朝昼夕に1錠という処方であれば、飲み間違いや残薬は少なくなるのですが、現実には、A剤は朝昼夕の3回で、B剤は朝夕の2回、C剤は朝のみ1回服用といった内容なので、高齢者は正しく服用できないことは容易に想像できます。この対策としては、薬の一包化(一回に飲む複数の薬を、1つの袋に入れるサービス)があります。当然ながら手数料がかかり、医師の指示がある場合と無い場合では薬局での支払い額に差が出ますが、1回の服用分が1袋に入れてもらえるので、飲み間違いや飲み忘れの防止になり、無駄が省けることになります。
しかしながら、一包化だけでは残薬の問題は解決できません。何故なら、残薬の根本的な原因は、不必要なほど沢山の薬を処方する医師と、薬を沢山飲んでいると安心する高齢者が多いことにあります。そこで、無駄を省くという観点から残薬について考えると、475億円分の薬を最初から処方しない方が良策ではないでしょうか。何故なら、処方された薬を正しく飲まなかったために病状が悪化した症例も存在するでしょうが、これは極一部の患者であると考えられます。大部分の患者においては、飲み忘れても全く影響が報告されていません。故に、最初から必要がないと考えることができます。逆に、「薬をやめれば病気は治る:岡本裕(幻冬舎)」に書かれているように、服薬を減らすことで体調が改善することの方が多いと思われます。薬の常用は、一時的な症状の改善には有効ですが、その代償として回復力や免疫力を低下させます。また、効果とは裏腹に副作用が存在して、新たな病気を誘発します。薬は最小限にして、節約した薬代でスポーツクラブに行って体力や体調に適した運動をしたり、旬の食材をバランスよく食べた方が、健康維持には良い薬になります。無駄になっている薬代の475億円は、高齢者の年金や少子化対策のための託児所建設などに使って欲しいものです。