中高生を対象としたピロリ菌の検診をする自治体が拡大しています。佐賀県は2016年度から始め、鹿児島県は今年度から高校生を対象に実施の予定です。大分県や北海道でも計画中です。
ピロリ菌が胃がん発症のリスク因子であることは知られていますが、感染経路や感染による胃がん発症率などは比較的知られていないので解説します。感染経路は、子供のころに感染者の箸などからの感染が主です。一度感染すると、除菌しない限り一生涯に渡って胃の中に住み続けます。
感染率は、生まれたときはゼロですが、加齢とともに上昇して、中高年では約8割が感染しています。感染すると炎症を起こすことがありますが、症状が全くない人が殆どです。ピロリ菌に感染すると胃がんを発症すると思っている方も多いのですが、実際に胃がんを発症する確率は0.5%程度(感染者の200人に1人)です。なお、胃がんを発症しても初期段階ならばほぼ100%治癒できますので、年に1度の定期検診は必須です。
除菌は、抗生物質を1週間程度投与すれば約8割の確率で菌を除去できます。除去できなかった残りの2割の人は、抗生剤の種類を変えてさらに投与します。除菌には健康保険が適用になりますので、経済的な負担は小さくなっています。
ピロリ菌の感染率は、除菌処置などにより年々低下しています(上図)。中高生からの検診の広がりで、感染率はさらに低下することが期待されます。