抗がん剤の副作用(2)

2014年02月20日

抗癌剤の副作用を軽減する漢方の効果を研究した論文を紹介します。抗癌剤は癌細胞だけでなく、骨髄細胞、免疫組織、消化管粘膜など、細胞分裂の盛んな組織にもダメージを与え、免疫力の低下、貧血、食欲低下、吐き気、下痢、脱毛など、様々な副作用を起こします。副作用を抑える支持療法の進歩はあるものの、未だ十分ではありません。例えば、制吐剤を用いて吐き気を抑えても食欲の亢進は有りませんし、消化吸収率も高まりません。根本的な改善には、適切な漢方治療が適しており、化学療法中に漢方治療を行うと、抗癌剤の副作用が軽減することが知られています。この抗癌剤の副作用の緩和効果の医学的メカニズムは、カリフォルニア大学医学部コンクリン教授の論文に明らかにされています。この論文の要旨を日本語に訳すと、次のような内容が書かれています。

Conklin KA. Dietary antioxidants during cancer chemotherapy: impact on   chemotherapeutic effectiveness and development of side effects. Nutr Cancer. 2000; 37: 1-18.(コンクリン教授;癌化学療法中の食事由来抗酸化物質;化学療法の有効性と副作用の発生における影響)抗酸化作用を持った食品サプリメントが、癌の化学療法に対する反応性のみならず、抗癌剤の副作用の発生にも影響することがいくつかの研究によって示唆されている。抗癌剤の投与は、フリーラジカルや活性酸素を産生して酸化ストレスを引き起こす。抗癌剤投与中の酸化ストレスの増大は、抗癌剤の殺細胞効果を阻害する可能性がある。抗酸化剤は活性酸素を消去して化学療法の抗腫瘍効果を高めることが期待できる。ある種のサプリメントでは、抗酸化作用の他にも、トポイソメラーゼIIやプロテイン・チロシンキナーゼの阻害作用などもその抗腫瘍効果を高めることに寄与しているかもしれない。多くの抗癌剤投与中に見られる胃腸障害や発癌性などの副作用の発生には活性酸素が原因になっている。ドキソルビシンによる心筋障害、シスプラチンによる腎臓障害、ブレオマイシンによる肺線維症などの、特定の抗癌剤に限られた副作用にも、活性酸素は関与している。抗酸化剤はこのような副作用の多くを減らしたり予防したりできる。さらに、ある種のサプリメントに関しては、抗酸化作用以外の作用も副作用予防効果に関与している。

少々難しい内容ですが、内容をわかり易く説明すると、抗癌剤の投与により体が酸化ストレス(金属が錆びてボロボロになる反応と同じことが、体の細胞で起こって臓器機能が低下すること)を起こすことで、胃腸障害による食欲不振や吐き気、腎臓障害、造血組織の障害による貧血などの多くの副作用が発生します。植物由来の漢方薬は、非常に強い抗酸化作用(錆取り剤)の成分を多く含んでいるので、抗炎症作用や、血液循環を良くする作用を持つものが多いので、副作用が緩和されるのです。

 

抗がん剤の副作用(1)

2014年02月10日

皆さんは、抗がん剤にどのようなイメージをお持ちでしょうか?一般には、がんが治る薬として理解されていることでしょう。では、実際に抗がん剤でがんが治る確率がどの位かを、下図に示します。この中で有効率や消失率などの言葉が出て来ますので、先に説明を加えておきます。有効率とは、部分寛解のことで、腫瘍の縮小率が50%以上で、新しい病変出現が4週間以上無い状態を示しています。また、消失率とは、がんが全く無くなることを意味しています。抗がん剤が有効ながんは、急性白血病、悪性リンパ腫、睾丸腫瘍、咽頭がんなどですが、それでも消失率は約半分の症例です。しかも、これらの年間死亡者は1500人程度の少数派なのです。乳がん、卵巣がん、骨髄腫などへの抗がん剤の投与は、病気の進行を遅らせることが出来る程度と解釈すべきで、治癒は殆ど期待できません。がんの中で最も頻度が高く、年間数万人以上が死亡する胃がん、大腸がん、肺がんなどは、抗がん剤による有効率は極めて低く、一部の患者で症状が和らぐ程度なのです。ましてや、消失率に至ってはほぼ期待できない結果です。脳腫瘍、腎がん、膵がん、肝がんでは、効果は無いと考えるべきでしょう。では、何故にこの様な低い効果にも関わらず抗がん剤が使われているのでしょうか?

 抗がん剤の認可は、他の薬剤よりも極端に甘い基準でされているのです。先ず、第一段階の健康者での安全確認は他の薬剤と同じです。しかし、第2段階以降がお目こぼしの様な審査なのです。第2段階では、ごく少数のがん患者で効果の範囲や適正量の調査がなされますが、ここでは部分寛解が20%の患者で認められれば良いのです。即ち、80%の患者では全く効果がなくても認可になるのです。次に、第3段階の一定規模の患者での効果や安全性の最終確認ですが、抗がん剤の場合には必要ないのです。恐ろしいことだと思いませんか?現在ある100種類近い抗がん剤のうち、延命効果が確認されたものは殆どありません。

抗がん剤の効果

その上、副作用の発言頻度の調査も必要ありません。この様に、抗がん剤の効果は極限られたものですが、ご承知のように抗がん剤の副作用は沢山あるのです。最も多いのは吐き気、食欲不振や下痢などの消化器症状です。次に、骨髄抑制による貧血、他には腎機能障害や神経障害などもあります。抗がん剤の効果の恩恵を受けるのは極々一部の患者のみで、半数以上の患者は副作用のみで、逆に体力を奪われ、早死にしているのが現状なのです。

この様な抗がん剤ですが、ほとんどの医師は何のためらいもなく使用しています。私も、病院に勤務していた時には、がん治療には手術と抗がん剤という組み合わせに何の疑問も持っていませんでした。なぜなら、その様に教育されているのですから、それが正しいと思っているのです。この会社に籍を置いてから、沢山のがん患者さんと接し、その状況を知ると、何かが間違っていると感じるようになったのです。どうしてこのような現実が教育現場で知らされないのかといえば、やはり、製薬会社の売り上げ至上主義といえるでしょう。がん患者一人当たりの治療費は、発症してから死に至るまでの平均3年間で、約1500万円といわれています。ちなみに、2010年のがん領域のT製薬会社の1社のみの売り上げは、1400億円以上あるのです。この利権を手放すはずはありません。抗がん剤を使用するべきか否は、次のことを充分に考慮したうえで判断してください。効果より副作用がはるかに大きく、寿命を縮めることが多い。従って、効果と副作用の重さを天秤にかけ、どちらが重いかを熟考してください。

この様な抗がん剤ですから、本来は抗がん剤の効果や副作用に精通した専門医が行うべきなのですが、今の日本の現状は、殆どの場合は外科医が行っています。日本のがん薬物療法専門医は、全国で約600名しか認定されていません。アメリカの約1万人と比較すると、極端に少ないのがご理解いただけると思います。専門医の少ない理由は、資格取得の難易度が高く、5年以上のがん治療経験、認定施設での2年以上の研修に加え、過去5年以内で30症例以上の症例報告が必要だからです。利権ではなく、患者のことを考えてくれる専門医が、現在の10倍くらいに増えてほしいものです。

放射線(CT,レントゲン)でがんになる

2014年02月01日

寒い日が続いていますが、皆様お元気でしょうか?もう2月になります。今回から、また医療の裏側の話題に戻ります。ぜひ皆様の健康管理にお役立てください。

病院に診察に行くと、「念のためにCTやレントゲンを撮影しておきましょう」と言われることがしばしばで、高頻度で放射線の被曝を受けることになりますが、患者の方も何の疑問を持つこともありません。なぜなら、患者の心理として、丁寧に診察してもらっているという印象だからです。一方の診察する側は、万が一にも異常を見逃したら後で問題になるので、必要のない検査もしておいた方が賢明という意識があるのです。もう一つは、CT装置は高額なので、機械の維持費を賄うためには、少しでも多くの撮影をしなければならないのです。ですから、念のためという言葉を多用して、CTなどの放射線を使うのです。

 皆さんは、日本人の診療放射線の被ばく量が世界一であることや、日本で癌に罹る人の3%以上はこの被曝が原因であることをご存知でしょうか?2004年のオックスフォード大学が15か国を調査した結果なのです。被ばく量が多いのはCT検査で、その被ばく量は胸部レントゲンの200~300倍と、非常に大きいのです。さらに、日本の人口当たりのCTの普及率は段突で世界一なのです。福島の原発事故では神経質になった日本人も、CTなどの診療放射線被ばくには全くと言っていい程無頓着なのです。医師の方も、CTなどの放射線診療機器の有用性は教育されるのですが、放射線の被ばくと発がんの関係の教育は受けませんから、その危険性を認識していないことがほとんどなのです。実際、大学病院でがんの手術を受けた方の相談で、退院後の診察で毎週CT撮影をしていると伺った時、「せっかく良くなったのに、毎週のCT撮影であびる放射線で癌になってしまう」と驚き、回数を減らすようにアドバイスしたことがあります。患者の健康や命をあずかる医師は、教わらなくても放射線の危険性を自分でしっかりと勉強しなくてはいけないのですが。