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脳卒中

コレステロール:検診や治療で心筋梗塞や脳卒中は減らない

2018年07月20日

前回の本ブログで、アメリカではコレステロールは測定も治療も行わないことを記載しました(コレステロール:アメリカでは検査も治療も必要なし)。この根拠について、追加の説明です。

日本では、2008年からメタボ健診が行われています。検診で指導対象になると、1年後には腹囲は2~3 cm、体重は2~2.3 kg 程度低下し、脂質代謝が改善します。「コレステロールが血管を詰まらせ心筋梗塞や脳卒中を引き起こす」のが事実であるならば、メタボ健診が始まってから10年が経過した現時点では、これらの発症率や死亡者数が激減してるはずです。しかし、肝心の心筋梗塞や脳卒中の発症率や死亡率が改善したというデータは未だにありません。従って、本ブログで度々主張しているように、コレステロールが基準値を超えても血管を詰まらせて心筋梗塞や脳卒中を起こすことと関連はないのです。(検診で病人にされる病人を作る検診・ドック腹囲(メタボ健診)に根拠無し

コレステロールのみならず、検診も死亡率を低下させる効果が無く税金の無駄使いとの考えから、欧米では行われていません(がん検診で死亡率は低下しない)。英国の医学雑誌(BMJ:British Medical Journal)の2012年の論文では、欧米の信頼性の高い14の臨床試験での18.3万人を総合的に解析した結果、定期的に検診を受けても、心血管病やがんの死亡率は減少しないことを報告しています。デンマークでの6万人を解析した結果でも、検診を受けた人と受けない人で、心臓病や脳卒中の発症率や死亡率に違いが無いことが報告されています。このような結果から、アメリカではコレステロールの検査も治療も必要ないと判断しているのです。

既に疾患を有している方や体調不良など感じている場合は、定期検診は有用です。しかし、健康に全く違和感がない人の半分近くが異常高値になるようなコレステロールの検査や、心筋梗塞や脳卒中による死亡率が低下しない高脂血症薬の治療は本当に必要なのか、読者の皆様はどの様にお考えでしょうか?

 

 

人工甘味料で脳卒中・認知症のリスク3倍

2017年05月11日

人工甘味料入りのダイエット飲料を1日に1本以上飲んでいた人は、全く飲まない人よりも脳卒中や認知症に3倍なり易いことを、米国ボストン大学の研究チームが発表しました。なお、砂糖入りの飲料を飲んでいる人では、飲まない人との差は認められませんでした。

人工甘味料は、血糖値を抑えたい人や、肥満を心配する人がカロリー制限を目的として摂取されています。しかしながら、現実には逆の結果を招いています。例えば、人工甘味料入りの水を飲んだマウスでは、糖尿病につながり得る耐糖能障害を起こすことが報告されています。また、人工甘味料のカロリーはゼロに近いにもかかわらず、脂肪を蓄積して体重の増加を招くことも知られています。これらの人工甘味料による身体への影響の機序は不明な点は多いのですが、耐糖能障害や体重増加の原因として、膵臓が砂糖と同じように人工甘味料にも反応してインスリンを分泌することにより、インスリン抵抗性や脂肪の蓄積を招く結果と考えられます。

人工甘味料で脳卒中や認知症のリスクが高まる機序は明らかではありませんが、私の個人的見解としては次のように考えます。身体が活動するエネルギーとして血糖が利用されていますが、特に脳細胞の活動には多量の糖分を消費しています。糖が身体にとって重要なエネルギーであることから、“甘い=美味しい”と感じることで必要な糖分を補給するシステムが成り立っているのです。ところが、人工甘味料では実際の“糖”は補給されていないにもかかわらず、脳は“甘い”と感じて錯覚が引き起こされることで、感覚と現実の乖離が生じます。その結果、脳のエネルギー不足などの障害が起きて、脳卒中や認知症などが発症すると考えます。上記の耐糖能障害や肥満を引き起こすことと同じメカニズムが、脳にも影響を与えている可能性です。

化学的に合成された物質が、身体に良い訳がありません。自然の食品をバランス良く摂ることが大切です。

離婚や死別は脳卒中のリスクを高める!

2016年04月10日

離婚や死別で配偶者を失うと脳卒中のリスクが高まることを、大阪大学などの研究チームがアメリカの心臓学会誌「ストローク」に発表しました。(脳卒中とは、脳の血管がつまって発症する脳梗塞と、血管が破れて出血する脳出血とくも膜下出血を総称したものです。)

研究対象は45~74歳の男女5万人で、既婚(配偶者と同居)から非婚(配偶者と同居なし)の変化の有無と、その後の脳卒中発症リスクの関係を15年間追跡調査しています。この間に、2134人が脳卒中を発症しました。婚姻状況の変化との関連では、離婚や死別で配偶者を失った人は、脳卒中のリスクが男女ともに26%も高まる結果になりました。特に、くも膜下出血や脳出血のリスクは、男性が48%増、女性が35%増でした。なお、仕事をしていない女性が夫を失った場合には、夫がいて仕事をしている女性と比較すると、3倍も脳卒中のリスクが高くなっています。

一般的には、既婚者は非婚者(離別&死別)と比較すると健康状態が良いことが知られていました。この要因として、既婚者は精神的安定感や食生活のバランスが良いことなどが考えられます。逆に、配偶者を失うと、飲酒量の増加などの食生活の乱れや精神的および経済的な負担が悪影響を与えるものと考えられます。

前回は、笑わないと脳卒中や心臓病に成り易いことを報告しました。今回の報告と合わせると、健康で長生きするには、夫婦が円満で笑いのある家庭を作ることが重要なようです。

笑わない高齢者は脳卒中、心臓病に成り易い!

2016年04月01日

笑いが、免疫細胞を活性化して健康増進に寄与することが知られています。例えば、漫才や喜劇などで大笑いすると、がん細胞を攻撃するリンパ球の一種であるナチュラルキラー(NK)細胞の活性が上昇します。また、脳がリラックスした時に出現するアルファー(α)波は増え、大脳新皮質の血流量も増加して脳の活性が上昇します。さらに、カロリー消費を増加させるので運動と同じ効果があることも知られています。従って、笑いはストレス解消のみならず、生活習慣病やがんなどの病気の予防効果がある万能薬と考えられます。

しかしながら、笑いの回数は年齢とともに減少してしまいます。「よく笑う」と答えた人の割合を世代別にみると、30歳代では65%、40歳代では50%、50歳代では45%と、徐々に減少しています。この加齢に伴う笑いの減少の主因は、人生経験の積み重ねとともにストレスも蓄積している“ストレス説が”有力です。では、笑わなくなると健康にどのように影響するのでしょうか?

殆ど笑わない高齢者は、毎日よく笑う高齢者と比較すると、脳卒中や心臓病になる確率が高くなることが、東京大学などの研究チームから発表されました。65歳以上の男女2万人以上を対象にした調査で、殆ど笑わない人は脳卒中が1.6倍、心臓病は1.2倍も高い結果となりました。男女別では、特に高齢女性で危険性が高く、脳卒中は1.95倍、心臓病は1.41倍も高くなっています(男性では1.47倍、1.11倍)。この結果から、毎日の生活に笑いを入れることが健康管理につながることは明らかです。私は、笑点の大喜利が大好きで毎週見ていますが、脳卒中や心臓病の予防に役立っているようです。