新薬の副作用調査で不正

2016年05月20日

製薬会社の「帝人ファーマ」で、医師が記入すべき新薬の副作用などの調査票を営業担当者が代筆の不正をしていたことが明らかになりました。前々回のC型肝炎治療薬の記事で、「治験で都合の悪いデータを握りつぶすのは、製薬会社の常とう手段」と書きましたが、新薬開発での不正は昔から行われていることで、病院関係者の間では周知の事実です。2年前にも、ノバルティスの降圧剤「ディオバン(一般名バルサルタン)」が脳卒中の発症抑制があるとのデータ改ざんが行われ、刑事告発さています。

では、何故に不正が行われるのでしょうか?その答えは、新薬開発の成否が会社の存亡にかかわっているからです。一般に、製薬会社の研究開発費の割合は20%前後と一般企業の数倍で、新薬開発の成功率は1万の候補物質から1つ程度と極めて低いのです。さらに、1つの新薬開発の平均費用は数十億~数百億円、開発期間は10~20年を要します。しかし、開発された新薬が画期的なものであれば、数千億円以上の利益を生み出します。従って、製薬会社の社員は、新薬の効果がより高く、副作用はより少ないと見せかけたいのです。

患者さんの中には、新薬は現行薬よりも効きが良くて副作用が少ないと信じている方も多いのですが、発売されてから隠蔽されていた重篤な副作用が発生することはしばしばです。従って、発売から2~3年経過して、一般病院での効果や副作用情報が報告されてからの使用の方が賢明なのです。また、多くの患者さんでは安価なジェネリック薬で問題ありません。最も良いのは、食事療法や運動療法で抵抗力や回復力を高め、薬は最低限しか使わないことです。

健診で病人にされる!

2016年05月10日

年に1度の健康診断で、都内のH病院の健診センターに行ってきました。私(62歳)は健康を指導する立場にあるので、自分の健康状態は常に気を使っています。ですから、検査結果は全てA評価で当然と思いきや、BやCがあります。以前から書いてきたように、健診に行くと健康人も病人にされてしまう典型例ですので、BやCの結果についてコメントを書いてみます。

脂質は、総コレステロール204 mg/dl、LDLが130 mg/dl で基準値を超えているので、B判定になっています。現在の総コレステロールの基準値199 mg/dl、LDLは119 mg/dl以下ですが、この値をクリアする健康な中高年は半分もいません。健康な中高年の値は総コレステロールは男性で250 mg/dl、女性280 mg/dl、LDLは男女ともに180 mg/dl 位までなら問題ありません。コレステロールは細胞膜やホルモンの材料で、LDLはコレステロールを組織に運ぶ大切な成分なので、悪玉ではありません。実際、総コレステロールもLDLも基準値以下の人より、基準値を少し超えた人の方が長生きしているのです。基準値を超えて病院に行くと脅されて薬を飲まされますが、薬が改善するのは病院の経営状態(収入)であり、患者の健康ではありません。参考として、

2014年5月1日:基準値(正常値)のウソが修正される?

2013年10月30日:健常人を病人にする方法(2:高コレステロール血症)  をご覧ください。

血糖値は104 mg/dl で、基準値の99 mg/dl を越えていてC判定でした。健康な中高年の値は、男性114 mg/dl、女性106 mg/dl 位までは心配いりません。私の場合は、昨年も同じ値なので、体質と解釈できます。ただし、毎年少しづつ上昇して100 mg/dl を超えている方は、近い将来に糖尿病の可能性がありますので、食事と運動の改善が必要です。

肝機能はγ-GTが75 U/l で、基準値を超えているのでB判定でした。晩酌は週に3~4日で日本酒1~1.5合位、居酒屋はたまに行く程度です。検診の直前に飲みに行ったのが影響しているのでしょう。でも、GPTが20 U/l 台なので、肝臓の疲れは極軽いものと考えられます。大目に見ましょう。

全体を評価すると、62歳では全く問題ないので、BやC評価は心外です。私の場合、今の食事や運動(主に水泳)を継続していれば良いと考えています。BやC評価を多くしているのは、病院のお得意様(患者)を増やす作戦ですので、協力する必要は有りません。

健診の問題点は、①基準値が厳しすぎるので、全く健康な中高年でも半分以上は再検査になること、②昨年や一昨年のデータは考慮せずに機械的に判定するので、体質的に高い・低い場合も異常値とみなされることです。真に治療が必要な人を見つけるような健診であって欲しいものです。

C型肝炎治療薬ハーボニーは100%ではない?

2016年05月01日

肝炎で入院する原因は、アルコールを想像する方が多いとおもいますが実際は1割以下で、ウイルス性が約 8 割と圧倒的に多いのが現状です。ウイルス性肝炎の中でも、C型は慢性化率が高く、肝がんの原因の7~8割を占めています。C型肝炎ウイルスの種類は、主に1型と2型がありますが、日本人に多い1型ウイルス(約7割)はインターフェロンが効かない難治タイプでした。

1型のC型肝炎ウイルスの特効薬として登場したのがハーボニー配合錠で、C型肝炎ウイルスのRNA合成を阻害する薬剤です。1日に1錠(1錠当たり8万円)を3か月間服用(8 x 90 = 720万円)することで、治験では100%の著効率を謳っており、C型肝炎治療の特効薬として昨夏に保険適用されました。

その後、この薬剤を用いて治療を行っている病院での報告が聞かれるようになりましたが、治癒率は100%ではないようです。A病院の例では、ウイルスが消えた後に再燃した患者は数%でした。なお、K病院の40人の患者では、ウイルスが消えた後に肝がんの発症が2人確認されています。この症例は、治療時点で初期がんがあったものと考えられます。

病院の報告から、ハーボニー配合錠は、これまでの治療薬と比較すると極めて高率にC型肝炎を治癒できるのですが、一部の患者ではウイルスの再燃が有るので、治癒率は100%ではないと推測されます。治験で都合の悪いデータを握りつぶすのは、製薬会社の常套手段ですから、再燃の患者がある程度存在することを念頭に入れておいた方がよさそうです。従って、治療後も免疫力を高く維持しておくことが不可欠であり、一定期間は再燃や発がんのないことの確認のための定期検査が必要と考えられます。