がん患者における糖質制限とケトン生成食への異議

2017年12月20日

今年も残すところ僅かとなりました。本ブログには沢山のアクセスがあり、また無料健康相談も多くの方々にご利用いただきまして、有り難うございます。健康相談の内容で多かったのは、がんに関するものでした。近年では、がんは二人に一人が罹患し、三人に一人が亡くなる疾患ですから、ご相談の件数が多くなります。その中で、治療中や予防における「糖質の制限とケトン生成食」に関するご相談があります。研究者の中には、がん患者は糖質を制限して、ケトン生成食(脂肪とタンパク質)にすべきとの意見がありますが、私はこの意見には反対であり、3代栄養素(糖質、タンパク質、脂質)のバランスを大きく崩すべきでないと考えています。この意見の相違を解説します。

糖質制限とケトン体食の主張

がん細胞は、通常の細胞と比べると3~8倍くらい多くのブドウ糖を消費して、爆発的な速度で増殖します。従って、栄養源であるブドウ糖を与えなければ、がん細胞は飢え死にするとの考えです。さらに、肉や脂肪などのケトン生成食からは、がん細胞は栄養を補給できないが、正常細胞では栄養源となるので、ケトン生成食にすることで正常細胞だけが生き残るとの論理です。

異議

確かに、がん細胞はブドウ糖をエネルギー源として増殖しているので、上記の論理によりがん細胞が飢え死にして、回復しそうな気がします。しかし、この理論は実験室のシャーレの中で培養しているがん細胞を死滅させることは出来るでしょうが、複雑な人間の身体を維持するには当てはまりません。なぜなら、ブドウ糖を制限するとがん細胞は飢え死にしますが、その前に正常細胞の方が先に飢えて死んでしまいますので、生命を維持出来ません。さらにがん細胞は、ケトン生成食を栄養源として利用できないとのことですが、脂肪とタンパク質だけでも生き延びることが出来るという研究報告があります。さらに、糖質制限とケトン生成食では、米や果物などを全て絶ち、脂肪とタンパク質だけの食事になりますから、栄養のバランスを崩してしまい、回復力が低下します。

免疫力と体力をつける食事

がんと闘うには、免疫力と体力をつけることが不可欠です。そのためには、糖質としての炭水化物や良質のタンパク質、腸内細菌を活性化する発酵食品、抗酸化力を高める野菜や果物などをバランス良く摂取するべきです。加えて、ウォーキングやラジオ体操などの有酸素運動で、代謝活性を促進させることが、がんと闘うためには必要です。(がん・予防(1)、(2)(3)(4)

将来的に、ご自身や家族ががんとの闘病になったとき、どちらの主張が正しいかを吟味して対応して下さい。

* 健康で幸せな年をお迎え下さい。

 

風邪とインフルエンザ(罹患時の対処)

2017年12月10日

3.症状が軽度なら入浴可

風邪をひいたときでも、入浴してさっぱりしてから寝たいものです。症状が軽度なら入浴しても可ですが、そのおおよその基準は熱が38℃以内で、酷い悪寒や倦怠感がない場合です。これ以上の症状がある場合には、体力を消耗することで状態が悪化する可能性がありますので、入浴は控えましょう。

入浴するときの注意点は、脱衣場や浴室を暖めておいて、身体を冷やさないことが大切です。湯温は、熱いと体力を消耗しますので、ぬるめにします。入浴後は、湯冷めを防ぐために、早めに布団に入りましょう。

4. 解熱剤は免疫力(回復力)を低下させる

風邪やインフルエンザに感染したときは、発熱する場合が多いのですが、その時に使う解熱剤は、正しい使い方をしないと逆に回復を遅らせることになります。

罹患して発熱するのは、免疫力を高めて回復するための反応なのです。即ち、ウイルスは熱に弱いので、体温を上げることでウイルスを弱らせているのです。さらに、免疫を担当する白血球は、体温が高い方が活性が上昇します。例えば、体温が36.5℃から37.5℃に1℃上昇すると、免疫力は5~6倍上昇します。従って、解熱剤で平熱まで下げてしまうと、回復が遅れることになるので、38℃くらいまでは解熱剤は使用しない方がより早く回復します。インフルエンザの場合には、これ以上に発熱することが多いので、解熱剤を使用して38℃くらいにまで下げることはOKです。

5. 風邪薬は症状を抑えているだけ

風邪薬(総合感冒薬)は、咳、鼻水、発熱、喉の腫れなどの症状を緩和する成分が入った薬剤で、服薬するとこれらの症状は緩和します。症状が治まっていても、風邪の原因となっているウイルスをやっつけた訳ではありません。症状が改善しても治ったと勘違いせずに、安静と栄養補給を心がけて下さい。

6. 抗生物質は風邪やインフルエンザのウイルスには効果無し

風邪やインフルエンザに罹患したときに、病院から抗生剤を処方された経験はありませんか?抗生物質は細菌を殺す薬剤なので、ウイルスには効果はありません。最初に述べたように、風邪の約9割はウイルス感染が原因です。インフルエンザもウイルスなので、抗生物質は効果がありません。医師の中には、ウイルス感染時は体力が低下しているので他の細菌の感染を予防する意味で処方している場合や、何か薬を処方しないと患者が納得しないという理由で効果の無い抗生物質を処方している場合などがありますが、医療費の無駄遣いになっています。(風邪には抗生物質を使わない

7. 抗インフルエンザ薬はウイルスの増殖を抑える(殺す作用はない)

治療薬として使われている抗インフルエンザ薬(リレンザ、タミフルなど)の作用は、ウイルスを殺しているわけではなく、増殖を抑えているのです。この作用により、回復までの期間を早くすることと、重症化を防ぐ目的で使用されています。ウイルスの増殖は、発症後48時間(2日)程度でピークに達し、その後は免疫力により減少しますので、これ以降は投与しても意味がありません。抗インフルエンザ薬を使用する場合は、発症の当日または翌日までです。インフルエンザに罹患した場合は、回復までには一般的に1週間程度かかりますが、抗インフルエンザ薬の投与により4~5日になりますので、2~3日短くなる程度です。

8. 窓やドアの施錠(異常行動による転落事故の防止)

インフルエンザ感染者では、異常行動による転落事故が多数報告されています。その殆どは子供で、男の子が殆どです。この異常行動は、抗インフルエンザ薬を投与した患者に多いのですが、使用していない患者にも見られており、原因はまだ解明されていません。従って、インフルエンザに感染した子供(特に男の子)の場合は、異常行動による転落事故を未然に防ぐために、窓やドアを施錠しておくことが必要です。親御さんはお子さんの行動に気をつけて観察して下さい。

免疫力の向上!

風邪やインフルエンザに罹患しないための基本は、うがいと手洗いですが、重要なことは普段の生活で免疫力を高めるような習慣をつけることです。バランスの良い食事、適度な運動、規則正しい生活です。特に受験生にとっては大切な時期ですので、健康管理に努めましょう。(受験生の健康管理

 

 

風邪とインフルエンザ(予防)

2017年12月01日

今日から12月になり、本格的な寒さの季節になりましたので、風邪やインフルエンザの感染に注意が必要です。風邪の原因の約9割は、ウイルスの感染が原因です。ウイルスが喉や鼻の粘膜に感染して増殖し、炎症を起こすことで鼻水や発熱、頭痛などの症状を引き起こします。インフルエンザもウイルスなのですが、風邪と比較すると、その進行が急激で、発熱や咳、頭痛や筋肉痛などの症状が極めて重いことで区別されています。

風邪やインフルエンザの予防や対策には「知識」という武器が必要です。そこで、知っているようで意外と知らない基本的な知識を解説します。

1.うがいは水道水

かぜやインフルエンザの予防の基本は、うがいと手洗いです。では、毎日のうがいは何でしたら良いのでしょうか?うがい薬?水道水?のどちらが有効と思いますか?答えは、意外にも水道水なのです。うがい薬はヨードを含んでおり、ウイルスにも効果があるとされていますので、有効性が高いイメージがありますし、テレビCMでも宣伝しています。しかし、このヨードは両刃の剣です。殺菌性の効果の裏側でその刺激性が原因となって喉の粘膜を傷つけてしまうことで、感染し易くなるのです。もう一つの理由は、腸内細菌叢と同じく、口の中にも常在菌がいて、そのバランスが風邪やインフルエンザの侵入を防いでいるのですが、ヨードの殺菌性のために常在菌のバランスが崩れて、感染を引き起こしやすくなるのです。うがい薬と水道水のどちらが感染し難いかを研究した京都大学での結果は、水道水の方が感染率が低く予防効果があるという報告でした。毎日のうがいは、水道水でOKです。

インフルエンザのワクチンは、感染の確率を低くする効果はありますが完全ではなく、接種しても発症する場合もあるのです。一般には、ワクチンの予防効果は50%程度です。その意味は、接種していない100人の内10人が発症したと仮定すると、ワクチンを接種した場合には100人中5人が発症するので、予防効果は50%という解釈です。ワクチンを接種しても発症する因子は、次のように幾つかあります。①接種したワクチンが感染したウイルスと異なるタイプの場合。②感染予防の効果は、接種後約2週間から6ヶ月の期間のみなので、接種直後や半年以降は効果は無い。③接種による免疫がつきにくい体質などが考えられます。特に、子供は免疫がつきにくいので、2回の接種が必要です。

この様に、ワクチンを接種しても感染する人と、逆に接種しなくても感染したことがない人がいます。一般的に、感染し難い体質の人は適度な運動を習慣化していることや、規則正しい生活とバランスの良い食事をしている場合です。ワクチンを接種した人もしない人も、普段の生活パターンを整えて、感染予防に心がけることが必要です。

次回は、感染後の対処について解説します。