カテゴリー
新着医療情報

「血圧120 mmHg未満で病死27%減」の本当の意味

2015年12月01日

医学研究者なら誰でも知っている世界の一流医学雑誌のNew England Journal of Medicineに、「血圧120 mmHg未満で病死27%減」に関する論文が発表されたことを、多くのメディアが報じました。この題目だけなら、血圧は低くした方が良いと受け取れますし、私が本ブログで書いてきた「中高年の血圧130~150 mmHgは薬不要」という記事は間違いなの?と思われるかもしれません。しかし、この論文の中身を正しく理解していただければ、血圧を120 mmHg以下にする必要はないことがお解りいただけます。

この研究では、患者群を血圧140 mmHg以下にする群(4678名)と、120 mmHg以下にする群(4683名)の2群に分けています。両群の人数は、ほぼ同じです。3年半の研究期間の後に、140の群では210名(4.5%)が死亡し、120の群では155名(3.3%)が死亡しています。従って、(4.5-3.3)÷4.5=0.27 (27%)から、120の群で死亡率が27%減少したとの結論に至っています。確かに、計算は間違いではありませんが、実際に差があるのは210-155=55人なので、4600名からみると僅かに1.2%の差しかありません。この手法は、研究者が自分の研究成果を誇張したい時に用いて、インパクトを大きくしているのです。

逆に、急性腎不全および急性腎障害で救急搬送された患者は、120以下の群では2倍近くおり、低血圧で救急搬送された患者も1.5倍多くなっています。この一因として、降圧剤を多量に使用することの副作用が考えられます。また、両群の肥満度の指数であるBMIは、29.8と29.9の著しい肥満患者です。このBMIは、日本人の一般的な身長である175 cmでは体重が92 kgに相当します。BMI>30の肥満率は、アメリカ人では35~36%と高いのですが、日本人では3~4%程度と低いので、この患者群での研究結果をそのまま日本人にあてはめるのは適当ではありません。この英語の論文を原文で読む日本人は殆どいないのを良いことに、製薬会社や病院に都合の良い情報のみがメディアで報じられているのです。

日本人を対象としたこれまでの研究で、降圧剤で血圧を20 mmHg以上下げる群では、20以内の低下群と比較すると、脳梗塞発症率が高くなり、総死亡率が1.5~5倍も高くなっています。さらに、転倒や交通事故の確率が増加し、うつ等による自殺や認知症に成り易いことが知られています。これは、血圧が低すぎることで脳の神経細胞に栄養分や酸素が十分に供給されないことによると考えられます。

本ブログでこれまで書いてきたように、中高年の血圧130~150 mmHgは問題ありません。降圧剤による大幅な血圧の低下は逆に危険が多いので、肥満の解消や有酸素運動での血流改善を基本に考えてください。製薬会社や病院に都合の良いメディアの情報を鵜呑みにせず、薬は必要最小限度に!

トイレ後に手を洗わない人は15%

2015年11月20日

食中毒の原因で過半数を占めるノロウイルスは、12月から3月の冬場に多く発生し、嘔吐や下痢、腹痛などを起こします。ノロウイルスにはワクチンが無いので、感染した場合は輸液などの対症療法しかありません。従って、抵抗力の弱い乳幼児や高齢者は、重症化し易いので注意が必要です。ノロウイルス感染者の糞便には、1 g 当たり数億個のウイルスが含まれています。このうち、僅か10~100個程度が感染すると発症します。主な感染経路は、経口感染ですから、頻繁な手洗いが有効な防御手段になります。

消費者庁が2000人の男女を調査した結果、トイレ後に手を洗わない人は、大便後、小便後、大小便後を合わせると15%にもなっていました。また、家庭での食事の前に必ず手を洗うのは52.6%のみで、約半数の方は手洗いをしていませんでした。

駅やスーパーマーケットのトイレでは、用便後に手洗いをしない人をよく見かけるので、上記の倍くらいはいる様に感じています。なお、トイレで手洗いをした後でも、ドアノブや照明スイッチなどは感染源になる可能性が高い場所です。従って、食事の前には更に手洗いが必要です。また冬場になると、デパートや公共施設などの入り口にアルコールが設置してある場合があります。ウイルスは、アルコールでは死なないので、手洗いがより有効です。感染防止の観点から、手洗いを習慣化してください。

ソーセージやベーコンでがんになる?

2015年11月10日

先月26日に、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)から、ソーセージやベーコンなどの加工肉がタバコやアスベストなどと同じ「発がん性がある物質」に分類され、毎日50g食べると発がん率が18%上昇するとの報告がありました。近年、大腸がんの患者が増えているのは、農耕民族の日本人が肉食の西洋食に急変していることが原因と考えられているので、肉や加工肉を大量に摂取することは大腸がんのリスクを上昇させる可能性は高くなります。では、どの位の摂取量なら問題ないのでしょうか?これに対して色々な分野から反響がありますが、本ブログにて私見を述べます。

毎日50gの加工肉を食べたと計算すると、年間では18.3㎏になります。日本では年間平均の摂取量は6.1㎏程度ですから、現在の消費量ではがんの誘発には問題外の量ということになります。ソーセージをよく食べるドイツでは、年間では30.7㎏程度食べていますが、がん患者は多くはありません。今回の報告では、加工肉を食べすぎたことに起因する死亡例は、世界で31000件と推測されています。日本のがんによる死亡者数は年間で約36万人ですから、加工肉以外の要因が大きいという解釈になります。従って、通常量の加工肉の摂取では、発がんの心配をする必要はありません。

問題になるとするならば、肉や加工肉を大量に食べて、野菜、ヨーグルトや納豆などの発酵食品、ごはんなどの割合が極端に少ない場合と考えられます。元気な高齢者は、肉類も十分に摂取している方が多いですが、野菜やくだもの、ヨーグルトや納豆、ごはんなどのバランスが良いのです。なお、テレビの番組で納豆、ヨーグルト、トマトなどが体に良いと放送すると、マーケットの商品棚からこれらが消えることがありました。健康に良い物もそればかりを食べていると栄養が偏るので、逆に不健康になってしまいます。多種類の食品のバランスが大切です。

結論として、

ソーセージやベーコンなどの加工肉は、通常の摂取量ならば発がんの心配はないと考えられます。肉、野菜、発酵食品、炭水化物などをバランスよく摂ることが、健康寿命を延ばす秘訣です。

要介護期間は約10年

2015年09月10日

米ワシントン大学などの国際チームが、世界188か国の2013年の健康寿命データを分析し、結果を英国の医学誌「ランセット」に発表しました。日本の健康寿命は、男性71.11歳で女性は75.56歳で、男女ともに世界一でした。厚生労働省の発表した平均寿命も、男性80.50歳(世界3位)で女性は86.83歳(世界1位)ですので、世界でも長寿の国になり、大変喜ばしいことです。

しかしながら、平均寿命と健康寿命の差、即ち、他人の手を借りなければ生きていけない要介護期間は、男性で9.39年、女性では11.27年もあるのです。約80年の生涯の中で10年間も要介護期間があるのですから、何とももったいない話です。長生きしても、健康で人生を楽しまなければ、生きている意味は極めて小さくなってしまいます。健康寿命を平均寿命に限りなく近づけるには、如何すればよいのでしょうか?

多くの方は、健康でいるためには「医者のいう事を聞いていれば良い」や「薬に頼れば良い」と思っておられます。ですが、医師のいう事の全てが正しい訳ではありません。何が正しくて何が間違っているのかを、自分で判断できるように勉強することが必要です。また、薬は症状の緩和と引き換えに、免疫力や回復力を低下させます。薬は、本当に必要な場合のみに、最小限度にすべきです。以前の本ブログの記事を参考に、じっくりと考えていただければ幸いです。

介護期間を極力短縮するためのモデルとして、美露仙寿の販社さんたちを挙げてみます。販社さんたちは、70~80歳台の方が多いのですが、90歳を超えた方も3人いらっしゃいます。皆さんすこぶる元気で、見た目にも10歳から20歳くらい若く見えます。もちろん、介護などとは無縁です。こんなにも若くて健康でいられる理由は、3つあると思っています。1つ目は、販社さんたちは講演会や集いなどに積極的に参加して、勉強をしています。医学的な知識を得ることに加え、勉強することで脳を活性化していますので、老化が遅れると考えられます。2つ目は、販社さんたちの殆どは、以前は体調不良に悩んでおられた方々ですが、美露仙寿で元気を回復した経験をお持ちです。その美露仙寿を、今でも飲み続けていることで健康を保っています。2014年の医療費は、40兆円にもなっており、75歳以上の後期高齢者の一人当たりの医療費は93.1万円と高額です。販社さんたちの医療費は、けた違いに少ない額です。3つ目は、自分が元気を回復した経験(幸せ)を、他の人にも分けてあげようという使命感で、美露仙寿の普及の仕事を続けていることです。隠居して毎日が日曜日になってしまうと、すぐに老け込んでしまうし、免疫力も低下します。販社さんたちは、年を重ねても、生涯現役で仕事をして税金を払っています。日本中の高齢者がこんなに元気になったら、介護問題も解消され、医療費も削減されて財政が安定することでしょう。全国で「美露千寿の集い」があり、販社さんたちが活躍されていますので、是非とも足を運んで、元気の秘訣を聞いてみてください。健康寿命が平均寿命に近づくヒントが得られるでしょう。

エボラ出血熱のワクチン

2015年08月10日

エボラ出血熱(エボラウイルス病)のワクチンの臨床試験で、好結果が報告されました。

エボラ出血熱は、エボラウイルスの感染症で、潜伏期間の2~21日後に発熱、頭痛、筋肉痛に始まり、症状が進むと歯肉や消化管から出血し、致死率が非常に高いのが特徴です。感染経路は、発症者の血液や排泄物等との接触で、空気感染は有りません。エボラウイルスの5つの株のなかで人に感染するのは4株で、病原性があるのはスーダン株(致死率50~55%)とザイール株(致死率80~90%)の2種類です.

これまで治療方法が確立されていないために、アフリカのギニア、リベリア、シオラネオネの3か国で多くの死者が報告され、本年6月24日現在では患者数27476名、死者は11222名でした。この内、医師や看護師などの医療スタッフの感染者は872名、死者は507名でした。多くの方が無くなったのは残念なことですが、この方たちを助けようと尽力された医療スタッフが大勢亡くなったことは、痛恨の極みです。多くの医療スタッフが亡くなったのは、現地が貧しい地域であり、防護服や消毒設備などがけた違いに不備であることが大きな要因です。そのような悪条件の中でも、彼らは自らの危険を顧みずに医療に命をささげた“英雄”であり、このような勇気ある人たちこそが長生きして、奉仕活動を継続していただきたいものです。

エボラウイルスワクチン(VSV-ZEBOV:対ザイール株)の臨床試験は、西アフリカのギニアで行われ、エボラ出血熱患者が身近に発生して感染の危険性が高い4123人にワクチンを投与したところ、1人も感染が認められませんでした。また既に感染した患者に投与した場合にも、全員に予防効果が認められました。さらに、重大な副作用も報告されていません。このワクチンの使用により、患者の回復率は格段に向上することが期待できますし、治療に携わる医療スタッフの命を守る事が出来ることは何よりの朗報です。日本政府には、ワクチンの開発と製造への資金と人的な貢献などにより、日本の存在を世界に示していただくことを期待します。

日本では、東京都東村山市の国立感染症研究所で、エボラウイルスのような非常に危険なウイルスを扱う事が出来る施設がようやく稼働することになりました。この施設は、周辺住民の反対で建設から34年も稼働出来ずに、低いレベルの業務のみを行ってきました。周辺住民の方の不安は理解できるのですが、この様な施設を稼働させないと、エボラウイルスが日本に侵入した時の防御態勢に支障が出かねません。施設の業務を丁寧に説明することで、不安を和らげていただきたいと思います。また、エボラ出血熱の患者が出た場合の入院施設では、搬送や防御服の脱着の訓練などが行われています。空港などの検閲だけでは100%の侵入防止はできません。国内発症の場合を想定した訓練は充分にしておいて、ワクチンも早急に備蓄をしていただきたいものです。