認知症の予防と改善に水

2018年01月20日

認知症の予防と改善には、1日1500 mlの水が有効です(国際医療福祉大学:竹内教授)。人間の身体の多くは水分で構成されており、その含有量は子供では約75%であるのに対して、成人では約60%、高齢者では約50%へと、加齢とともに減少していきます。水分量が減少して細胞が脱水状態になると、意識レベルが低下して物忘れが多くなり、ひいては認知症になり易くなります。

竹内教授の研究によれば、水分摂取の量と物忘れの度合いは相関関係に有り、水を飲ませると覚醒水準が上昇するとのこと。既に認知機能が衰えて、徘徊や大声を上げるなどの症状も、十分な量の水分摂取(1日当たり1500 ml程度)で短期間で劇的に改善する症例が多いとのことです。

水分の摂取は、熱中症の予防や心筋梗塞、脳梗塞の予防にもなりますので、こまめに飲むようにして下さい。ただし、腎臓病や心臓病の方は水分制限がありますので、多量の水分摂取はできません。これらの疾患のある方の水分摂取量は、担当医の指示に従って下さい。

女性医師の担当で死亡率・再入院率は3%も低くなる

2018年01月10日

前回は世界中で最も注目された研究論文を紹介しましたが、今回は注目度が3番目の日本人研究者の論文の紹介です。

米国の急性期病院に入院した65歳以上の150万人の調査で、内科では女性医師が治療した方が男性医師よりも死亡率や再入院率が3~4%も低い結果が出ています。この理由を過去の研究の結果をもとに考えると、男性医師と比較すると女性医師は診療ガイドラインにのっとった治療を行う傾向があり、患者とのコミュニケーションスキルも男性医師よりも高いことにあると推測できます。すなわち、女性はリスクを回避する傾向があるために、患者とコミュニケーションを取りながらより安全で確実な治療法を選択することで、死亡率や再入院率が低下するようです。

なお、外科で執刀医が女性と男性で比較したカナダの調査では、女性の執刀医の方が死亡率が低いと報告されていますが、執刀医の性別を選べない緊急入院患者のみで比較すると、男女の医師で性別による差は認められませんでした。

患者さんの中には、女性医師はなんとなく頼りないと思われている方も多いのではないかと想像しますが、逆に女性医師が担当医になった場合の方が死亡率や再入院率が低いのですから、ラッキーです。もちろん、男性医師にも名医は沢山いますのでご安心を。医師を選ぶときには、性別ではなく腕を見極めることですので、本ブログを参考にして下さい。(名医の特徴ダメ医師の見分け方

 

健康長寿食は炭水化物の減と脂肪の増

2018年01月01日

新年明けましておめでとうございます。本年も健康な年でありますように!

人生で最も大切なものは、自分と家族の健康です。その健康を守るための第1の基本は、バランスの良い食事です。昨年2017年に世界で影響を与えた論文の中で最も注目を集めたのは、死亡リスクを低下させるための食事は、炭水化物を減らし、脂質を増やす研究でした。

世界のトップレベルの医学誌であるLancetに掲載された論文では、18カ国の35~70歳の13万5335人を対象に調査した結果、炭水化物の摂取率の平均値は65%で、脂質は24%でした。この中で、炭水化物の摂取率が60%を超えるグループでは死亡率は高く、摂取率が高いほど上昇する傾向がありました。逆に、脂肪の摂取量と心筋梗塞などの心疾患との関連はなく、摂取率が多いグループで死亡率は低下していました。従って、健康長寿のためには、炭水化物は50~55%に減らし、脂肪は35%に増やした方が良いと言うことです。

巷では、炭水化物ダイエットが流行しています。しかし、多くの方が誤解しているのは、炭水化物の摂取量を極力ゼロにしようとして、ご飯のない牛丼やシャリのない寿司など、訳のわからないものが登場することです。炭水化物は、身体を動かすためのエネルギーとして必要不可欠なものです。過ぎたるは及ばざるがごとしで摂り過ぎ(60%以上)はいけませんが、極端に減らすのは身体に負担をかけてしまいます。全体の約半分のエネルギーは炭水化物から摂取して下さい。(糖質制限で糖尿病のリスク)また、肉はコレステロールを上昇させるので、特に高齢者は良くないと言われる方もおりますが、健康長寿者は肉をよく食べてタンパク質と脂質を摂取しています。(コレステロールは食事制限の必要なし!

3代栄養素の炭水化物、脂質、タンパク質をバランス良く摂取して、適度な運動をすることが健康長寿の秘訣です。

がん患者における糖質制限とケトン生成食への異議

2017年12月20日

今年も残すところ僅かとなりました。本ブログには沢山のアクセスがあり、また無料健康相談も多くの方々にご利用いただきまして、有り難うございます。健康相談の内容で多かったのは、がんに関するものでした。近年では、がんは二人に一人が罹患し、三人に一人が亡くなる疾患ですから、ご相談の件数が多くなります。その中で、治療中や予防における「糖質の制限とケトン生成食」に関するご相談があります。研究者の中には、がん患者は糖質を制限して、ケトン生成食(脂肪とタンパク質)にすべきとの意見がありますが、私はこの意見には反対であり、3代栄養素(糖質、タンパク質、脂質)のバランスを大きく崩すべきでないと考えています。この意見の相違を解説します。

糖質制限とケトン体食の主張

がん細胞は、通常の細胞と比べると3~8倍くらい多くのブドウ糖を消費して、爆発的な速度で増殖します。従って、栄養源であるブドウ糖を与えなければ、がん細胞は飢え死にするとの考えです。さらに、肉や脂肪などのケトン生成食からは、がん細胞は栄養を補給できないが、正常細胞では栄養源となるので、ケトン生成食にすることで正常細胞だけが生き残るとの論理です。

異議

確かに、がん細胞はブドウ糖をエネルギー源として増殖しているので、上記の論理によりがん細胞が飢え死にして、回復しそうな気がします。しかし、この理論は実験室のシャーレの中で培養しているがん細胞を死滅させることは出来るでしょうが、複雑な人間の身体を維持するには当てはまりません。なぜなら、ブドウ糖を制限するとがん細胞は飢え死にしますが、その前に正常細胞の方が先に飢えて死んでしまいますので、生命を維持出来ません。さらにがん細胞は、ケトン生成食を栄養源として利用できないとのことですが、脂肪とタンパク質だけでも生き延びることが出来るという研究報告があります。さらに、糖質制限とケトン生成食では、米や果物などを全て絶ち、脂肪とタンパク質だけの食事になりますから、栄養のバランスを崩してしまい、回復力が低下します。

免疫力と体力をつける食事

がんと闘うには、免疫力と体力をつけることが不可欠です。そのためには、糖質としての炭水化物や良質のタンパク質、腸内細菌を活性化する発酵食品、抗酸化力を高める野菜や果物などをバランス良く摂取するべきです。加えて、ウォーキングやラジオ体操などの有酸素運動で、代謝活性を促進させることが、がんと闘うためには必要です。(がん・予防(1)、(2)(3)(4)

将来的に、ご自身や家族ががんとの闘病になったとき、どちらの主張が正しいかを吟味して対応して下さい。

* 健康で幸せな年をお迎え下さい。

 

風邪とインフルエンザ(罹患時の対処)

2017年12月10日

3.症状が軽度なら入浴可

風邪をひいたときでも、入浴してさっぱりしてから寝たいものです。症状が軽度なら入浴しても可ですが、そのおおよその基準は熱が38℃以内で、酷い悪寒や倦怠感がない場合です。これ以上の症状がある場合には、体力を消耗することで状態が悪化する可能性がありますので、入浴は控えましょう。

入浴するときの注意点は、脱衣場や浴室を暖めておいて、身体を冷やさないことが大切です。湯温は、熱いと体力を消耗しますので、ぬるめにします。入浴後は、湯冷めを防ぐために、早めに布団に入りましょう。

4. 解熱剤は免疫力(回復力)を低下させる

風邪やインフルエンザに感染したときは、発熱する場合が多いのですが、その時に使う解熱剤は、正しい使い方をしないと逆に回復を遅らせることになります。

罹患して発熱するのは、免疫力を高めて回復するための反応なのです。即ち、ウイルスは熱に弱いので、体温を上げることでウイルスを弱らせているのです。さらに、免疫を担当する白血球は、体温が高い方が活性が上昇します。例えば、体温が36.5℃から37.5℃に1℃上昇すると、免疫力は5~6倍上昇します。従って、解熱剤で平熱まで下げてしまうと、回復が遅れることになるので、38℃くらいまでは解熱剤は使用しない方がより早く回復します。インフルエンザの場合には、これ以上に発熱することが多いので、解熱剤を使用して38℃くらいにまで下げることはOKです。

5. 風邪薬は症状を抑えているだけ

風邪薬(総合感冒薬)は、咳、鼻水、発熱、喉の腫れなどの症状を緩和する成分が入った薬剤で、服薬するとこれらの症状は緩和します。症状が治まっていても、風邪の原因となっているウイルスをやっつけた訳ではありません。症状が改善しても治ったと勘違いせずに、安静と栄養補給を心がけて下さい。

6. 抗生物質は風邪やインフルエンザのウイルスには効果無し

風邪やインフルエンザに罹患したときに、病院から抗生剤を処方された経験はありませんか?抗生物質は細菌を殺す薬剤なので、ウイルスには効果はありません。最初に述べたように、風邪の約9割はウイルス感染が原因です。インフルエンザもウイルスなので、抗生物質は効果がありません。医師の中には、ウイルス感染時は体力が低下しているので他の細菌の感染を予防する意味で処方している場合や、何か薬を処方しないと患者が納得しないという理由で効果の無い抗生物質を処方している場合などがありますが、医療費の無駄遣いになっています。(風邪には抗生物質を使わない

7. 抗インフルエンザ薬はウイルスの増殖を抑える(殺す作用はない)

治療薬として使われている抗インフルエンザ薬(リレンザ、タミフルなど)の作用は、ウイルスを殺しているわけではなく、増殖を抑えているのです。この作用により、回復までの期間を早くすることと、重症化を防ぐ目的で使用されています。ウイルスの増殖は、発症後48時間(2日)程度でピークに達し、その後は免疫力により減少しますので、これ以降は投与しても意味がありません。抗インフルエンザ薬を使用する場合は、発症の当日または翌日までです。インフルエンザに罹患した場合は、回復までには一般的に1週間程度かかりますが、抗インフルエンザ薬の投与により4~5日になりますので、2~3日短くなる程度です。

8. 窓やドアの施錠(異常行動による転落事故の防止)

インフルエンザ感染者では、異常行動による転落事故が多数報告されています。その殆どは子供で、男の子が殆どです。この異常行動は、抗インフルエンザ薬を投与した患者に多いのですが、使用していない患者にも見られており、原因はまだ解明されていません。従って、インフルエンザに感染した子供(特に男の子)の場合は、異常行動による転落事故を未然に防ぐために、窓やドアを施錠しておくことが必要です。親御さんはお子さんの行動に気をつけて観察して下さい。

免疫力の向上!

風邪やインフルエンザに罹患しないための基本は、うがいと手洗いですが、重要なことは普段の生活で免疫力を高めるような習慣をつけることです。バランスの良い食事、適度な運動、規則正しい生活です。特に受験生にとっては大切な時期ですので、健康管理に努めましょう。(受験生の健康管理