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高血圧・高脂血症・高血糖

健常人を病人にする方法(3:血圧、追記)

2013年11月30日

ご存知かもしれませんが、血圧は常に変動しています。例えば、夏と比較すると冬の血圧は、寒さで血管が収縮するために高くなります。入浴の前後で、血圧は大きく変動します。脱衣場が寒いときは上昇し、適温の入浴では下降します。この変化は、高血圧の症状が酷い人ほど大きくなりますので、この様な方は浴室の温度を温めておいた方が賢明です。また、よく耳にするのは、病院高血圧とか白衣高血圧とか言われている症状です。殆どの方は、病院で医師や看護師が血圧を測る時には緊張していますので、家で測った時よりも20~30 mmHg 位高いことがしばしばです。この値で高血圧の診断をされて薬を飲まされているケースも多々あるのです。家でリラックスしている時の血圧を測っておいて、ノートに記録しておくと、自分の正確な状態が分かります。

血圧に関しては、塩分を取りすぎると高血圧になるといわれていましたが、この説は必ずしも正しくありません。すべての人が食塩をとると血圧が上がり、減塩すると血圧が下がるというわけではないのです。食塩の摂取量によって血圧が変動する、食塩感受性のある人と食塩感受性のない人がいるのです。塩感受性で最も広く使われている定義は、アメリカの国立衛生研究所(NIH)のプロトコールで使われているもので、7日間の10 mmolナトリウム摂取量から7日間の240 mmolナトリウム摂取量になった時、平均動脈血圧が10%以上上昇している場合を食塩感受性であるとしています。前者が食塩感受性(salt-sensitive)、後者が食塩非感受性(nonsalt-sensitive)です。東京大学医学部の藤田敏郎教授の研究(1995年)では、日本人の多くは後者であり、塩感受性のある人は約2割と報告しています。食塩感受性の人は、腎臓からのナトリウム排せつ機能に異常が生じ、ナトリウムが体内に蓄積し、その結果、血圧が上昇します。一方、食塩非感受性の人は、腎臓のナトリウム排せつ機能が正常に働くので、体内に入った余分なナトリウムは排せつされやすいため、血圧への影響は少ないのです。このことから、食塩非感受性の人が高血圧の治療で減塩治療を行っても、効果が現れにくく、無理をして極端に塩分を落とすと、塩分不足や栄養不足のため、かえって無気力になったり疲れやすくなったりする可能性がある。特に夏場などは、発汗によって大量の塩分が失われるため、注意が必要となります。高血圧になった人の多くも食塩非感受性で、こういったタイプの人は、いくら塩分を減らしても、それだけでは高血圧症を好転させることは難しいです。最近、欧米では、すべての人に減塩を勧めるのではなく、食塩感受性の人だけに勧めるべきであるという考え方が強くなってきました。この様に、食塩摂取量に関する保健政策は質的な変換を求められるようになった。食塩摂取量に影響される人は注意すべきであるが、少なくとも高血圧家系でない人は注意する必要は少ないと思われます。

健常人を病人にする方法(3:血圧)

2013年11月20日

総コレステロールと同様に、血圧も基準値を下げることによって患者を増やしているのです。現在の基準値は130 mmHg以下ですが、1987年から2000年までの老人基本健診での高血圧の基準値は180 mmHgだったのです。その後、2000年には年代別になり、80歳代では160 mmHgで59歳以下は130 mmHgとなったのです。2004年、2008年と変更があり、現在の130 mmHgが採用されています。この様に、20年で血圧の基準値は50 mmHgも低くなり、約3000万人が高血圧の病名を頂戴することになるのです。

では、本当に健康を維持するのに適切な血圧の基準値はどれなのでしょうか?最初に、年代別の平均血圧を示します。40歳代までは130 mmHgの基準値でぼぼ問題ないのですが、50歳代からは健常者でも130 mmHg を超えて、70歳代の平均値は140 mmHgを超えるのです。
高血圧の基準値である130 mmHgを超える割合は、40歳代で既に半数が高血圧の診断になり、70歳代では正常範囲に入るのは2割にも満たないのです。基準範囲の設定方法の項で説明した様に、本来は健常者の95%が入るように設定すべきなのです。しかしながら、現状の基準値である130 mmHg では、この様に多数の中高年者が病人にされているのが現状なのです。

では、血圧は低い方が元気で長生きできるのでしょうか?80歳の老人の5年生存率と血圧の関係を示しました。これによると、血圧を130 mmHg 以下の基準値内に保っていると5年生存率は低く、逆に160以上の高血圧と診断されている方が長生きなのです。なぜなら、130 mmHgの基準値は若者には適合していますが、老人には合わないのです。老人の場合、加齢とともに血管の弾力が落ちてきますから、ある程度の血圧がないと血液を全身に送れません。だから、図のように、健常者でも加齢とともに血圧は上昇して、70歳代では平均で140 mmHg 以上になるのです。

一般に、高血圧になると脳出血を起こすので危険であると宣伝し、降圧治療を勧めています。確かに、血圧が200 mmHg を超えるような場合には正解です。しかし、脳卒中の内、出血による死亡は約3割なのですが、脳血栓による死亡はその倍の約6割もあるのです。薬剤による過度な降圧治療は血流障害を引き起こし易く、脳血栓の可能性を高めているのです。さらに、高齢者で130 mmHg を少し超えた程度で、全く必要のない薬剤を飲まされて、血圧が100 mmHg 程度になっている方がたくさんいます。この方々の多くは、ふらふらしたり、体に力が入らないなどの症状がある場合がしばしばです。降圧剤を止めるようにアドバイスすると、直ぐに体調を回復されます。降圧治療で長生きするよりも、体調を崩し、命を縮めている場合の方が多いことを知るべきです。何のための薬剤なのでしょうか?

健常人を病人にする方法(2:高コレステロール血症)

2013年10月30日

前項の様に、多項目の検査をすれば大部分の健常者を病人に仕立て上げることが出来るのです。これに加えて、多くの病人を作る方法がもう一つあるのです。それは、基準値を厳しく設定することなのです。前項で説明しましたように、基準値は健常者の95%が入る範囲なのですが、例えば、健常者の半分が入る範囲に狭めれば、残りの半分は病人になります。この最も典型的なものは、総コレステロールと血圧なのです。では、総コレステロールの分布範囲と基準値の関係を図に示します。全体の95%が入る範囲は2SDとして表現してあります。基準値は赤い太線で示してあります。本来は2SDと基準値は同じになるはずなのです。しかしながら、下図では2SDの範囲と基準値の範囲が大きくずれていることがお分かりでしょう。特に、中高年の男性では約の半分が異常高値になっていますし、女性でも中高年の三分の一位が基準値をオーバーしています。従って、病人を沢山作るための基準値が設定されていることが一目瞭然です。
*標準偏差(Standard Deviation)は、平均値に対する観測データの散らばりをあらわす記述統計量で、SDと省略して表現されます。変数が正規分布にしたがう場合は、平均値から1×標準偏差の範囲内に、約68%の観測データが含まれることを意味します(2×標準偏差で考えると約95%が含まれます)。

では、何時から何故にこの基準値が設定されたのでしょうか?私が就職した1976年(昭和51年)には、総コレステロールの基準値は260 mg/dlだったのです。それが1990年(平成2年)には250 mg/dlになり、その後に基準値は220 mg/dl に引き下げられているのです。何故にこの様な基準値の変更があったのでしょうか?その要因は、高脂血症薬メバロチンの発売が関係しているとしか考えられません。メバロチンの発売時期は1990年(平成2年)で、総コレステロールの基準値が220 mg/dl に引き下げられたのが、その半年前なのです。総コレステロールの基準値が220 mg/dlに変更されると、一夜にして約2000万人に高脂血症という病名が付けられ、病人にされたのです。一部の心ある医療関係者の間では、メバロチンを販売するために、御用学者に総コレステロールの基準値を引き下げるための研究報告をさせたという話題があったのです。実際、現在のコレステロール関連の年間医療費は、なんと7500億円以上なのです。
では、本当に総コレステロールの基準値は220 mg/dl が妥当なのでしょうか?長生きした人の総コレステロールの値を統計的にみてみると、240~280 mg/dl が最も長生きしているのです。即ち、上図で示した健常人の2SDの範囲である95%の健常人が入る範囲が良いことになります。ですから、1916年に示された260 mg/dl の基準範囲が適切であるのです。

逆に、高脂血症と診断されている人の方が、高脂血症でない人と比較して、脳卒中で入院した場合の死亡率は2分の1から3分の1に低いと報告されています。脳梗塞では、高脂血症のない人約9900人の内で死亡は5.5%であるのに対し、入院時に高脂血症と診断された人約2300人の死亡は2.4%でした。脳出血では、高脂血症のない人約2800人の内で死亡は13.4%であるのに対し、入院時に高脂血症と診断された人約440人の死亡は6.3%でした。くも膜下出血では、高脂血症のない人約1300人の内で死亡は17.3%であるのに対し、入院時に高脂血症と診断された人約2300人の死亡は6.3%と、いずれも高脂血症患者で低かったのです。この要因として、コレステロールが血管を作る材料になるので、高脂血症患者の方が血管の状態が良いことが挙げられます。となると、高脂血症の定義自体が怪しいことは明らかです。
コレステロールは、何故か悪者扱いされて、その危険性がアピールされています。しかし、コレステロールの生体内での役割は全くと言っていい程に示されていません。実際、皆さんはコレステロールが体の中でどの様な働きをしているのかご存知ですか?コレステロールの最も重要な働きは、生体内で細胞膜や各種ホルモンの材料となることなのです。従って、コレステロール150 mg/dl 以下にしてしまうと、これらの材料が十分に提供できなくなってしまうのです。また、うつ病の発生率が高くなるとの報告や、発がん率がとの報告もあるのです。
同様に、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールの基準値は140  mg/dl 以下になっています。テレビのコマーシャルでは、有名人を使ってLDLが高いと心筋梗塞になるので“LDLが高い人はお医者さんへ”と宣伝しています。LDLコレステロールと心臓病死ならびに総死亡率との関係を図に示しました。統計的には、LDLコレステロール値と心臓病死との間には相関は無いのです。逆に、総死亡率はLDLコレステロールが高い方が低い結果を示しています。LDLコレステロールは、基準値より高めで、男性は100~180 mg/dl、女性は120 mg/dl 以上が長生きの傾向があるのです。日本脂質学会では、血中脂質を薬で下げすぎると危険であると警告していますが、まさにその通りなのです。私は、日本脂質学会の言い分が正しいと考えています。基準値を少々超えても問題ありません。もし、下げようとする場合には、先ずバランスの良い食事と適度な有酸素運動を試みるのが健康的と言えます。

健常人を病人にする方法(1:基準値のからくり)

2013年10月20日

健康な人を病人にする方法には、大きく2つの方法があります。1つ目は、生化学検査や血液学的検査で測定項目を増やすことなのです。これでなぜ病人が作れるかと思われるでしょうが、次のようなカラクリがあるのです。それは、各測定項目にはそれぞれ基準範囲があります。この基準範囲がどのように決められているのかをご存知の方はあまりいないでしょうから説明します。
基準範囲とは、健康な人(健常者)を沢山集めて、その内の95%の人が入る範囲なのです。解り易くするために、仮に100人の健常者を集めたとします。その人たちである検査項目を測定した時に、95人が入る範囲が基準値なのです。ですから、残りの5人の健常者は、この範囲から外れます。即ち、2.5人は低めに外れて、2.5人は高めに外れます。この方たちは、その測定項目に関して生まれつき低いまたは高い体質なのです。基準値を外れたから即異常ということではありません。

健常者で1項目を測定した場合は、上記の様に、基準範囲に入る確率は95%(0.95)なので、2項目の測定では 0.95 x 0.95 = 0.90 になりますので、100人中では90人が正常で、残りの10人は基準値を外れます。さらに多項目の測定をした場合、異常無しの確率はどの位になると思いますか?なんと、10項目では0.60、20項目なら0.36、30項目で0.21、40項目は0.13、50項目では0.08になるのです。異常無しは、健常者100人の内たったの8人だけなのです。残りの92人の健常者は、結果の表に赤い字で“H”と書かれます。すると、多くの方は動揺して、本当に病人になった気分に変化していくのです。これが病院へ招き入れる手口になることを知っておきましょう。


この様に、多項目を測定すると、異常値のHマークをつけられる人が多く出ます。この中の多く方達は、遺伝的に高い値の要素を持った健常者なのですが、一部には病的に上昇した人も入っています。では、どの様に病人かを見分ければ良いのでしょうか?例えば、今年の検診の測定値が120だったとします。当然、Hマークがついてきます。この場合、体質が原因なのか、それとも体に異常があるのかは、検査データを見慣れた医療関係者なら他の検査結果を含めたデータ全体のバランスで判断します。しかし、一般の方にはこれはできません。簡単は判断の仕方は、一昨年も昨年も今年もずっと120だった場合には、体質的な結果の可能性が高いと考えます。一方、昨年や一昨年の結果が80位で、今年になって急に120に上昇した場合には、病的な要因が発生している可能性が高いと考えます。この様な場合は、専門家の判断を仰いだ方が賢明です。