サマータイムは健康リスク増

2018年08月20日

2020年のオリンピック・パラリンピックを期に、サマータイムを導入して2時間早める検討がなされています。しかし、この時間のズレは健康へのリスクを高める可能性が高いとえます。

人間の身体の中には体内時計が存在していて、この時計により日中は交感神経を働かせて活動し、夜間は副交感神経に切り替えて睡眠に入るリズムをコントロールしています(睡眠と健康:体内時計)。サマータイムを導入して2時間早めた時間にすると、体内時計とのズレが生じることで自律神経のバランスを崩し、不眠、めまい、心筋梗塞などのリスクが高まることが多くの研究で知られています。

2007年にドイツで55000名で行われた研究では、サマータイムで1時間早めたときに、身体がなれるのに導入時には4週間、終了時には3週間が必要との結果でした。サマータイムの終了時よりも導入時でリスクが高くなる理由の一つは、体内時計は1日が24時間ではなく24時間10分(以前は25時間と考えられていましたが、最新の研究では24時間10分)なので、毎日10分間のズレが存在します。このズレを日光や食事で毎日修正しているのです。サマータイムが導入されて2時間早まった場合は、2時間10分の大きなズレを修正しなければいけなくなるので、様々な障害が生じます。サマータイムの終了時には2時間遅くなるので、1時間50分のズレを修正することになり、導入時よりは修正時間は小さくなります。2つ目は、旅行での時差ボケが東方向で大きく、太陽の進行方向の西側では小さいのと同じで、時間を遅くする方が体内時計のズレは小さいのです。いずれにしても、ヨーロッパでの1時間の変更でさえも身体への負担が大きいのに、約2時間のズレを修正するのはより大きな負担であり、健康リスクが高まるのは明白です。健康管理には、規則正しい生活が基本ですので、サマータイムはこれに逆行します。

東京医科大の女子一律減点問題

2018年08月10日

東京医科大の入試で、女子受験生が一律に減点されていたことが連日報道されています。その減点の理由には、女性医師が結婚や出産での離職や、育児による当直勤務の拒否などが挙げられています。

確かに、女性医師の産休や育児による当直勤務の回避では、男性医師に負担がくるので、そのような言い分が出てきます。しかしその根本を考えると、育児や家事などを女性の仕事と考えて、任せきりにしている男性が多いことに行き着きます。

医療現場においては、医師として女性が劣っているということは全くなく、むしろ内科では女性医師の方が患者の死亡率や再入院率は低い結果になっています(女性医師の担当で死亡率・再入院率は3%も低くなる)ので、女性医師は必要な戦力であるのです。この傾向は医療関係ばかりで無く、他の多くの業種にも共通しています。超高齢化社会に直面している日本という船が世界の荒波の海を渡っていくためには、女性のパワーが必要不可欠なことは容易に理解できます。

患者のためには、男女関係なく優秀な人に医師になってもらうことであり、医師のみならず全ての女性が働きやすい環境整備を、国レベルで改善していくことが必要です。

コレステロール:糖質制限により急上昇のメカニズム

2018年08月01日

糖質制限により脂質(総コレステロール、中性脂肪、LDL、HDL)が上昇したとの相談を複数の方からいただきましたので、その機序を説明します。

コレステロールは、食事から20~30%、体内合成が70~80%で成り立っていて、食事で摂取する量が多ければ、体内合成が減って、トータルで一定になるように調整されています。ところが、極端な糖質制限をするとエネルギー源の殆どが脂質とタンパク質になります。食事からの脂質の摂取量が極端に増えると、体内の合成を減らす調節が対応出来ずに、脂質(総コレステロール、中性脂肪、LDL、HDL)が増えていきます。

糖質は取り過ぎるといけないのですが、極端な糖質制限は栄養バランスを崩すので、健康を害する因子になります(糖質制限で糖尿病のリスク増)。理想的で健康的な栄養の取り方は、糖質50%でタンパク質と脂質で50%です(健康長寿は炭水化物の減と脂肪の増)。

なお、LDLが高いと血管を詰まらせて心筋梗塞などを引き起こすというのは、単なる脅しで医学的根拠はありません。アメリカではコレステロール値の測定は必要ないし、高くても治療はしません。(遺伝性の高脂血症を除く)(コレステロール:アメリカでは検査も治療も必要なし )しかしながら、何事もバランスが大事です。
私の意見は、極端な糖質制限を止めて、食事のバランスを糖質50%とタンパク質と脂質で50%にすることです。理想的な食事のバランスは、糖尿病の食事療法であり、これは健康な方にも適用されます。