健診データの読み方・考え方(8:尿糖の意味)

2019年06月10日

糖尿病は、尿に糖が出る病気と書きますが、糖尿病では常に尿糖が陽性になっているわけではありません。尿糖が陽性になる状況を説明します。

尿糖は、血糖値が170 mg/dl を超えると、超えた分だけが尿中に排泄されます。この仕組みは、①血液中の不要な物質は、腎臓で濾過されます。②血液中の糖分は、一端は濾過されるのですが、エネルギー源として身体に必要な物なので、腎臓は再吸収して血液中に戻すことで、尿中には出ないようにコントロールされています。③ところが、この糖を再吸収出来る能力は170 mg/dl までなので、この値を超えてしまうと、再吸収が間に合わなくなります。④再吸収されなかった糖分は、尿中へ排泄されます。

従って、尿糖が陰性(ー)なら血糖値は 170 mg/dl 以下で、陽性(+、2+、3+など)の場合は血糖値が 170 mg/dl を超えていることを示しており、+が大きくなるほど血糖値も高いのです。この様に、採血して血糖値を測定しなくても、大まかな血糖値が推測できます。

尿糖の試験紙は、ドラッグストアーで50枚入りが2000円位で購入できます。尿糖が陽性化しないように、コントロールしましょう。

試験紙節約の裏技:

尿検査用の試験紙を家庭で使用する場合は、下の図のように、縦に半分に切ると、1本で2回使用できます。結果は変わりませんので、節約になります。

健診データの読み方・考え方(7:糖尿病の検査データ)

2019年06月01日

糖尿病は、今や国民病になっていますが、その主原因には日本人が糖尿病になりやすい体質があります。その理由は、次のような歴史があります。日本人のルーツは農耕民族なので、カロリーの低い農作物を主食にしていたので、インスリンの分泌量が少しですんでいました。ところが、近年の飽食の時代になりカロリーの高い食べ物が増えたのですが、インスリンの分泌能力は低いままの体質は変わらないので、糖尿病を発症しやすいのです。

糖尿病の典型的な検査データを示します。空腹時の血糖値が142 mg/dl と高値なので、糖尿病が強く疑われます。その原因として、中性脂肪とγーGTが高値であることから、飲酒と過食が挙げられます。BMIも29.1で肥満があるので、長期に渡り不摂生な食生活が想像されます。クレアチニンと尿素窒素の値から、腎症の発症は無いようです。ALT(GPT)がやや高めなので脂肪肝の可能性がありますので、エコー検査や血液のコリンエステラーゼなどでの検査が必要です。また、網膜症の検査もしておくべきです。

今後は、食事療法と運動療法で生活の改善が不可欠です。

健診データの読み方・考え方(6:痛風とアルコール)

2019年05月20日

痛風にビールが良くないことは、広く知られています。その理由は、ビールに含まれるプリン体の構造が尿酸に似ているので、尿酸が合成されやすいからです。そこで酒飲みは、「プリン体のない蒸留した焼酎ならいいだろう!」と言い訳を考えます。しかしながら、アルコール自体にも尿酸を増やす作用があるのです。

アルコールは、肝臓で解毒されます。その処理に使うエネルギーはATPと言う物質で、使用後には尿酸の原料になるのです。さらに、アルコールの分解の過程で乳酸ができるのですが、これは尿酸が尿中へ排泄される量を減らしてしまいます。さらに、アルコールには利尿作用があるので、体内の水分をオシッコとして排泄します。その結果、血液の水分量が減るので、結果として血液中の尿酸濃度が高くなります。

この様に、ビール以外のアルコール飲料も尿酸値を上昇させる作用があります。また、酒に合う美味しいツマミはプリン体を多く含む物が多いので、摂取量が多くなりがちです。適量の酒は百薬の長ですが、飲み過ぎて毒にならないように注意しましょう。

 

健診データの読み方・考え方(5:痛風の検査データ)

2019年05月10日

痛風を発症した状態の典型的な検査データを示しました。

特徴は、①患者の99%は男性。②尿酸値は10 mg/dl 以上。③白血球数が増加。④CRPが陽性。です。他には、γーGTが高値で脂肪肝が認められることが多いという特徴があります。

①痛風の患者は殆どが男性です。何故に女性は痛風にならないかというと、女性ホルモンが痛風の原因である尿酸を尿中に排泄するためです。

尿酸は、食べ物から約2割、体内で約8割が合成されます。その後、尿中へ約8割が排泄され、約2割は便中に排泄されます。合成と排泄の量が等しければ、血中の尿酸値は正常値に保たれます。肉類などのプリン体の多い食品を多量に摂取すると、排泄量よりも合成量の方が大きくなるので、血中の尿酸値が高くなります。女性は、ホルモンの影響で尿中への尿酸排泄量が大きいので、血中に溜まりにくくなっています。

②尿酸値が10 mg/dl 以上になると、血液中に溶ける量をオーバーしてしまうので、栗のイガのような先の尖った結晶になります。この結晶が、指などの関節を刺激するので、痛みを感じるのです。

③すると、異常を察した白血球が痛みのある患部に急行して炎症状態になり、④CRPが陽性化します。

尿酸値が基準値を超えた場合は、食生活を改善しましょう。

 

健診データの読み方・考え方(4:血圧:変動因子)

2019年05月01日

血圧は常に変化しています。

日内変動:朝の目覚めとともに血圧は上昇し、日中は比較的高くなります。これにより、活動するために必要な酸素や栄養分などを運搬しています。また、夜になると下がり、睡眠中は最も低くなります。正確な血圧の測定は、同じ時間に同じ状態で測定することが必要です。

気候:季節によっても変動し、夏は低く、冬は高くなります。その理由は、人の体温は常に37℃に保たなければいけないので、寒くなると熱を逃がさないように血管を細くするのです。冬場にヒートショックが起きやすいのは、寒い脱衣場で血管が細くなり血圧が上昇すると脳出血などを起こしやすいのと、熱い湯船に入ると急に血管が太くなるので脳に行く血液量が減ることで意識を失い溺死する事故が起きやすいためです。

加齢:血圧は、年齢とともに上昇します。加齢とともに血管が堅くなっていくので、健康に過ごしていても、多くの高齢者の血圧は130 mmHg を超えて140 mmHg 位になります。なお、降圧剤で血圧を下げ過ぎるのは、危険です。血流量が落ちると、血管が詰まって脳梗塞を起こしやすくなり、またフラフラして転倒事故が起きやすくなります。血圧は適度に保つ必要があります。


肥満:血圧は、肥満で高くなります。一般的に、体重1 kgの増加で血圧は 2 mmHg程上昇します。従って、肥満で血圧が高めの方は、食事療法と運動療法で減量すると、血圧も低下します。病院は、血圧高めで直ぐに服薬を勧めますが、先ずは食事療法と運動療法を試して見ましょう。