iPS細胞によるがん治療

2016年02月20日

iPS細胞の技術を解りやすく説明すると、各組織に成長した大人の細胞に4つの遺伝子を導入すると赤ちゃん細胞に逆戻りする(受精卵のように何にでもなれる状態に初期化する)ので、その後に作りたい細胞へと再成長させる技術です。このiPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した京都大学の中山伸弥教授の研究グループが、がん細胞を攻撃するNKT(ナチュラルキラーT)細胞をヒトのiPS細胞から大量作成する方法を開発して、アメリカの科学誌ステムセルリポーツ電子版に発表しました。

血液中にあるNKT細胞は、がんの見張り役に加えがん細胞を攻撃するNK細胞などの後方支援をする細胞で、がんの防御には大切な細胞なのです(『医学博士の健康ブログ』の2014年11月20日の記事をご覧ください)。しかし、体内には少数しか無いうえに,がん患者ではその数がより減少していることが知られています。そこで、NKT細胞を大量に作成してがん患者に投与すれば、著しい回復が期待できるのです。 今回発表した方法は、人の血液中にあるNKT細胞を採取して、その細胞をiPS細胞に変えた後に再びNKT細胞に戻す方法です。この様な方法をとる理由は、血液中に少数しか無いNKT細胞ですが、一旦iPS細胞に変化させることで無限に増殖させることが可能になるのです。この方法で作成したNKT細胞では、通常持っている他の免疫細胞への攻撃支援作用の他に、自身のがん攻撃作用も確認されていますので、鬼に金棒の強力免疫細胞になっています。

現在の抗がん剤は、副作用の大きさに対して効果が小さいので、がん患者の寿命を短くしているケースの方が多いのが現状です。iPS細胞によるNKT細胞の治療が可能になると、副作用がなく高い治療効果が期待できます。さらに、この方法を応用して他の免疫細胞も大量作成すれば、がんの治療効果が格段に上昇することが期待できます。さらに、多くの感染症などもより効果的に治療できるようになるでしょう。他には、iPS細胞によるすい臓β細胞の作製で、一生涯インスリン注射が必要な1型糖尿病の完治も期待できます。iPS細胞による治療は無限の可能性を有していますので、早急な実用化が望まれます。

がんの5年生存率と10年生存率 (2:膵臓がん)

2016年02月10日

がんの生存率の調査結果から、膵臓がんは5年生存率(9.2%)、10年生存率(4.9%)と最も生存率が低く、危険ながんであることが示されています。最近では、ジャーナリストの竹田圭吾氏が、51歳の若さで亡くなったことがニュースになりました。一般的に、膵臓がんは症状に乏しく、検診のエコー検査などでも見つけにくいので、発見された時には既にかなり進行していること多いです。初期段階のStage Ⅰで発見されたとしても、下表のごとく、5年生存率は40.5%、10年生存率に至っては29.6%しかありません。病期の進行したⅢ~Ⅳ期では、僅かに一桁またはそれ以下の生存率です。膵臓がんでは、現時点では決定的な治療法は無く、手術と抗がん剤で対応していますが、殆ど無力な状況です。

膵臓がんは、罹患してしまうと長期生存が厳しい現実ですから、リスク因子を軽減することが大切です。膵臓がんの原因は、遺伝性は10%以下で、大部分のリスク因子は喫煙(2.2倍)、肥満(2倍)、飲酒(1.38倍)、糖尿病(血糖値10mg/l当たり14%)などがあげられます(研究者によりリスク倍率は異なります)。従って、日常生活を改善することが重要です。①煙草は百害あって一利なし。禁煙しましょう。②BMIが22~25位の体型が、最も病気が少なく長生きできます。食事療法と運動療法で、適正な体格にしましょう。③酒は百薬の長ですが、飲み過ぎは毒に変わります。適量に。④糖尿病は、多くの病気を誘発します。適正な血糖値にコントロールしましょう。これらの生活改善で、他の疾患にもなり難い健康体に近づきます。

万が一に罹患してしまった場合には、諦めずに生きる気力を保つことです。私がこの会社にお世話になってから、医学の常識では理解できない症例を幾つも経験しています。その一つが、昨年の膵臓がんでした。除去手術のために開腹した方は、既に手の施しようがなくそのまま閉じたので、通常はごく短期間で亡くなります。この方は、抗がん剤の投与を拒否して、美露仙寿(めいるせんじゅ)と免疫療法の併用を選択しました。現在は、腫瘍マーカーは正常値で、ゴルフを楽しむほどに回復しています。すい臓がんの生存率は極めて低いのですが、その低い数字の中に自分が入ることに気力を集中しましょう。生きようとする気力は、免疫力や回復力を高めます。

がんの5年生存率と10年生存率 (1)

2016年02月01日

がんの治療現場では、治癒の目安として「5年生存率」が用いられています。「5年生存率」とは、がんの治療開始から5年後に、再発の有無にかかわらず生存している人の割合を意味しています。では、どうして5年ががんの治癒の目安になっているのでしょうか?

がん細胞には、血液やリンパに乗って他の臓器や器官に転移する特徴があります。がんが転移して再発するまでにかかる期間は、長く見積もっても5年と考えられていました。従って、5年間に検診で異常がなければ、がん細胞を完全に取り除くことができていると考えられていたのです。

この生存率に関して、国立がん研究センターなどの研究グループが、全国16のがん専門病院の患者約3万5千人を10年間追跡調査して、初めて「10年生存率」を発表しました。その結果、「5年生存率」と「10年生存率」は、がんの部位により大きく異なることが明らかになりました。

大腸がんや胃がんの場合は、5年以降は生存率がほぼ横ばいになるので、これまで通り「5年生存率」で予後の判断が可能でした。一方、肝臓がん、乳がんは5年以降も生存率が下がり続けるので、「5年生存率」は指標には適していなかったのです。従って、がんの治療はより長期的展望で行われるべきであり、臓器ごとに指標が異なることが示唆されています。

なお、全てのがんの全臨床病期(Ⅰ~Ⅳ期)の10年生存率の平均値は58.2%でした。生存率が最も高かったのは甲状腺で90.9%で、次いで前立腺84.4%、子宮体83.1%、 乳80.4%でした。一方、低かったのは食道29.7%、胆のう胆道19.7%、肝15.3%で、最も低かったのが膵4.9%でした。

現在では、二人に一人ががんに罹患します。がんに罹患し難い体質になるために、罹患した方は回復力を高めるために、本ブログの2014年10月1日からの「がん・予防(1)~(4)」と、同年11月20日からの「免疫(1)~(3)」を参考にして、食事や運動、睡眠などの改善を心がけましょう。

薬の副作用死

2016年01月20日

1月12日に厚生労働省は、降圧剤(血圧降下剤)として使われている「アジルサルタン」、「アムロジピンベシル酸塩」を含む製剤で、横紋筋融解症などを18人が発症し、重い肝障害である劇症肝炎で2人が死亡したことを発表しました。血圧が少々高くても、直ぐに死亡に至ることはありません。しかし、この方たちは薬を飲んだために人生を終えることになったのです。これは氷山の一角であり、実際には多くの薬による副作用死が存在します。

薬は両刃の剣で、効果の反対側に必ず副作用があります。アメリカでは年間の処方箋が約30億件で、その内の約10万人が副作用で死亡しています。日本では薬の副作用で亡くなった人数は発表されていませんが、処方箋数は約13億件くらいですので、アメリカでの死亡比率から計算すると約4.3万人が副作用で死亡していると推計されます。交通事故の死亡者数は年間で4500名くらいですから、薬の副作用死は約10倍も危険性が高いことになります。

薬の副作用死は、普段に薬局で購入している風邪薬や抗生物質でさえも危険を含んでいます。この重篤な副作用として知られているのが、スティーブンス・ジョンソン(SJS)症候群です。発症のメカニズムは不明ですが、殆どの原因は抗生物質、抗てんかん薬、非ステロイド性抗炎症薬、風邪薬など千種類以上の医薬品が知られています。初期症状は発熱、咽頭痛などで風邪のような症状ですが、進行すると紅斑や高熱がでます。致死率は約10%です。他には、抗がん剤が挙げられます。表面上は、がんによる死亡ですが、実際には抗がん剤の副作用で命を短くしているケースの方が多いのが現状です。(2014年2月10日、2月20日、3月10日の本ブログをご覧ください。)

本ブログでは、毎回のように薬は最小限度にすべきことを書いています。バランスの良い食事、適度な運動、規則正しい生活を心がけ、薬に頼らない健康維持を心がけましょう。

受験生の健康管理

2016年01月10日

1月も中旬になって、寒い日が続いています。この時期になると、受験生は追い込みに入ります。私が人生の中で一番勉強をしたのは、博士号取得の受験勉強でした。食事と風呂以外の時間は勉強という生活を、十年以上も積み重ねてきましたが、この間は風邪もひかず、精神的にも大変充実していたと思っています。本ブログの読者の方々にも、お子さんやお孫さんに受験生がいらっしゃるでしょう。受験勉強で知識を詰め込むのは大切ですが、同じ位重要なのは、受験終了までの長期の健康管理です。長期の受験勉強期間をより効果的にするには、上手な睡眠と風邪対策です。

私の受験生時代は、“4当5落”で、4時間の睡眠時間なら合格できるが、5時間寝ると落ちるといわれていました。しかし長期の受験勉強には、少なくとも5~6時間の睡眠時間は確保した方が、良い結果をもたらすと考えられます。昨年8月20日の記事(睡眠と健康:成長ホルモン)のように、体の成長や疲労回復に関与する成長ホルモンは、深夜の1~2時頃に分泌されます。従って、1時より前には就寝して、朝は6時頃に起床するのが理想です。試験は午前中から始まるので、朝型の生活パターンにしておいた方が、実力が発揮できます。良質の睡眠を確保するには、就寝前のスマホやパソコンは控えてください。また、入浴はシャワーではなく、少し温めの湯船にゆっくりと浸かった方がよく眠れます。

2. 風邪対策

2013年12月10日の記事(風邪への対処法)のように、風邪の原因の約90%はウイルスです。受験の時期にはインフルエンザウイルスが蔓延しますが、予防の基本は手洗い、ウガイ、部屋の加湿です。ワクチン注射の効果は、1回注射でおよそ50~60%、2回注射では約80%位ですから、注射をしても絶対に感染しない訳ではありませんが、予防注射はした方が安全です。なお、効果はおよそ5~6ヶ月位です。さらに感染し難くするには、普段から免疫力を高めておくことが必要です。2014年11月20日~12月10日(免疫(1)~(3))の記事のように、バランスの良い食事、睡眠、有酸素運動が有効です。運動の時間がもったいないと思われるかもしれませんが、運動で免疫力の向上以外にも、血流の改善や基礎代謝の向上、ストレス解消などがあるので、勉強の質があがります。

受験生にお奨めは、私の研究している漢方飲料の『美露仙寿:めいるせんじゅ』です。風邪の予防や疲労回復には最適で、その医学的根拠は下の医学論文にまとめてあります。論文のコピーや解説希望の方、健康管理に関するアドバイスをご希望の方は、無料健康相談へお電話ください。満開の桜を家族で楽しめる春になるように、ご両親や祖父母から受験生に美露仙寿をプレゼントしてあげませんか。合格をお祈りします。

【美露仙寿の健康増進効果に関する医学論文】

  1. 7 種漢方成分含有健康飲料の安全性と作用の医薬学検査.医学検査561(3):41-547, 2012
  2. Ergogenic Capacity of a 7-Chinese Traditional Medicine Extract in Aged Mice.Chinese Medicine (3): 223-228, 2012.
  3. 7 種漢方健康飲料の未病改善効果.未病システム学会雑誌21(3): 1-6, 2015