免疫(1)

2014年11月20日

 月日の経つのは早いものです。ハロウィンの仮装も終わって、街はクリスマスの雰囲気に染まってきました。毎年、この時期になると流行るのが風邪です。周りにも風邪ひきさんを見かけるようになりました。マスクをしている方も多く見かけます。何時も不思議に思っているのは、鼻を出してマスクをしている人です。何のためにしているのでしょうか?全く意味をなしていません。質問したいと思いつつも、失礼なのでそれも出来ずに、?????ばかりです。

昨年の12月10日のブログに書きましたが、風邪の原因の80~90%はウイルスです。ウイルスには抗生物質は効きません。ウイルスを殺す薬は無いので、治すには免疫力しかありません。(インフルエンザに使うタミフルやリレンザは、ウイルスの増殖を抑えているだけで、殺している訳ではありません。また、風邪薬は、症状は強制的に抑えますが、原因となるウイルスをより長い期間体内に留めることになります。)美露仙寿の集いに参加されている会員さんは、免疫について専門家並みの知識を持っておられる方も多いのですが、一般の方は殆ど知識が無いようです。今回から、シリーズで免疫を勉強していただき、風邪などひかない身体作りを目指しましょう。初回は、免疫細胞の役割分担です。

免疫力とは?

免疫力とは文字通り、疫(流行性の病気、はやりやまい、疫病などの病気)から免れる(まぬがれる)力のこと。病原菌などが体内に入っても、この免疫力が高ければ発症には至らず、発症した場合でも免疫細胞が病原菌やウイルスと闘い体を守ってくれます。

免疫力は、20歳前後をピークに年齢とともに衰え低下していきます。さらに偏った食生活や運動不足などの生活習慣やストレスなどによっても低下します。免疫力が低下すると、インフルエンザなどの感染症にかかりやすくなり、心筋梗塞、糖尿病などの生活習慣病、さらにはガンなど命を脅かす病気を招くことにもなります。免疫力を向上させることは、より元気な体を維持するためには不可欠なのです。

免疫と白血球

免疫細胞とは、血液中に含まれる白血球のこと。血液を通じていたるところに存在し、全身をくまなくパトロールすることで、常に病原体から体を守ってくれているのです。白血球には種類ごとに、「外敵を発見する」「その情報を伝達する」「外敵を攻撃する」など、異なった役割があります。例えるなら、日本の国(身体)を守る自衛隊(免疫細胞)のようなシステムが機能しています。司令官(ヘルパーT細胞)が外敵への攻撃を指示すると、陸、海、空の部隊(好中球、NK細胞、B細胞、T細胞)が敵(病原菌やウイルス)と戦うのです。それぞれの役割分担を説明します。

  • マクロファージ

アメーバ状の細胞。体内に侵入してきた異物(抗原)を発見すると急行し、自分の中に細菌、ウイルス、ホコリなど次々と取り込んで貪食処理します。貪食処理し切れない場合は、「外敵が来た!」とヘルパーT細胞に敵の情報を伝え、助けを求めます。また、ヘルパーT細胞と共同で、がん細胞などを攻撃するNK細胞を活性化(元気)します。

  • 好中球

好中球は強い貪食・殺菌能力を持っていて、主に細菌やカビを貪食します。好中球が戦に勝った後に、名誉の戦死したものが“膿”です。

  • リンパ球

リンパ球には、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、サプレッサーT細胞、B細胞、NK(ナチュラル・キラー)細胞などがあり、それぞれ役割分担があります。会社でも、社長、営業、経理、庶務に掃除をしてくれるおばちゃんがいます。それぞれの役割が全部機能しないと、会社は回りません。

1. ヘルパーT細胞

免疫の司令塔です。マクロファージ(偵察&初期攻撃隊)から敵(病原菌=抗原)の情報を受け取り、B細胞に抗体(抗原をやっつける武器)を作るよう指令を出します。また、マクロファージと共同で、キラーT細胞、NK細胞を元気にさせます。

2. B細胞

B細胞は、骨髄で産生され胸腺を経由することなく血液中に入ります。ヘルパーT細胞の攻撃指令を受けて、敵をやっつけることができる抗体(武器)を作るリンパ球です。

3. サプレッサーT細胞

ストッパー役。抗体が外敵撃退に成功したら、もうこれ以上抗体を作らなくてよいと、B細胞に指示します。これで身体は、外敵侵入前の状態にリセットします。サプレッサーT細胞の指令が不完全で、攻撃停止の命令が正確に伝わらずに攻撃をし続けている状態がアレルギーです。アレルギーは、免疫作用が強すぎて起こるイメージがありますが、実はサプレッサーT細胞がその役割を果たせないことに起因しているので、免疫の未成熟状態なのです。

4. キラーT細胞

ヘルパーT細胞から指令があると、ウイルス感染細胞、がん細胞などを認識して破壊します。殺し屋という意味で、キラーT細胞と呼ばれます。

5. NK細胞(ナチュラル・キラー)

NK細胞は、常時、独自に体内をパトロールし、がん細胞やウイルスなどの外敵が侵入すると、攻撃命令なしに単独で立ち向かい、ウイルスなどを殺す強力なリンパ球です。キラーT細胞は、外敵と味方を勉強して判別できるようになるのですが、NK細胞は生まれつき外敵を攻撃する能力を持っているので、ナチュラル・キラーと名付けられたのです。

次回は、免疫力を高めるための知識です。

安楽死を認めるべきか?

2014年11月10日

11月1日、アメリカの29歳の脳腫瘍の女性が安楽死しましたが、その行為は賛否両論の議論になりました。人は、どんなに高度な医療を受けたとしても、永遠に生きることはできません。その死が、老衰のように安らかなものであり、家族に見守られての臨終であれば幸せなことですが、必ずしもそうではありません。この女性のように、“末期がん”の場合には、しばしば壮絶な痛みが伴います。その時に自ら死を選択することに対して、反対することが出来るのでしょうか?もし、自分がその立場だったら、どうするのでしょうか?もし、それが愛する家族であったなら、苦しみながらも生を全うすべきでしょうか?家族には生きていて欲しいと思う反面、苦しみをみるのは非常につらいことなので、死によって楽になった方が本人の幸せではないかとも思います。どちらの考えが正しい答えなのかは、いくら議論しても結論に達しないと思います。何故なら、立場の違いによって、導かれる答えが違うからです。

アメリカでの安楽死の反対意見の理由の1つには、宗教が挙げられます。アメリカ人の多くはキリスト教です。キリスト教の場合は、自ら命を絶つことは、末期がんであっても教義に背くことになるのです。信仰は自由ですので、この方たちは教義のようにすればよいと思います。同じ海外であっても、フランスの尊厳死協会によると、96%の方が積極的安楽死を望んでいるそうです。しかし、フランスは日本と同様に安楽死の法律は有りませんので、耐え難い苦しみがあったとしても、医師による安楽死はできません。安楽死を望む人は、合法化された国(フランスの場合は、隣国のスイスなど)へ行くことも、珍しくは有りません。

日本での考えはどうでしょうか?死と間近で向き合っている医療関係者の考えは、賛否両論あるものの、安楽死の合法化を支持する方も多いと思います。何故ならば、彼らは患者の壮絶な苦しみを日常的に目の当たりにしているので、自分や家族がこの状態になったなら、死の選択の方が幸せと思い、自分の最後は自分で決める権利があると考えるようになっているのでしょう。

しかしながら、私がこの会社に来てから、病院で末期がんの余命宣告をされた患者が美露仙寿で社会復帰まで回復された事例を何人も経験しました。従って、安易に安楽死を受け入れず、回復に向けて最善の努力をすることは不可欠です。その上で、耐え難い痛みとの戦いになった時には、本人の意志が尊重されるべきでしょう。皆様は、如何お考えでしょうか?

安楽死と尊厳死の違い:苦痛を長引かせないことを主眼に、人為的に死なせるのが安楽死。薬物を使うなどして死期を早めるものを積極的安楽死、積極的な治療の中止によるものを消極的安楽死と呼ぶこともある。尊厳死は患者の意思に基づいた死期の決定で、患者の意思による延命治療の中止を尊厳死と呼んでいる。

 

がん・予防(4)

2014年11月01日

6. 美露仙寿のがん予防効果

がん細胞は、細胞増殖時のコピーミスで多数できていることは、最初に述べた通りです。このがん細胞は、主にNK(ナチュラルキラー)細胞により破壊されます。リンパ球の10~20%を占めるNK細胞は、生まれた時からがん細胞への攻撃能力(自然免疫)を持っている最強の戦士なので、がん細胞を見つけると、直ちに単独で攻撃を仕掛けて破壊します。また、ウイルス感染などでがん化の可能性のある細胞は、パトロール係りのマクロファージが見つけて、司令官であるヘルパーT細胞に伝えます。ヘルパーT細胞は、攻撃部隊であるキラーT細胞に「がん細胞を撲滅せよ」と攻撃命令を出します(獲得免疫)。これを受けて、キラーT細胞が攻撃・破壊することで、がんの発症が抑制されています。

がん細胞と闘う戦士であるNK細胞とキラーT細胞をパワーアップするには、免疫の過半数を担う腸内細菌の働きが重要です。腸内細菌(乳酸菌など)は、腸管を刺激してインターフェロン-γ(INF-γ)の分泌を促し、NK細胞の増殖を促進し活性化します。また、インターロイキン-2(IL-2)の産生も向上させてキラーT細胞を誘導し、増殖促進と活性化をさせるのです。従って、がん発症の抑制には、NK細胞とキラーT細胞の数を増やして元気にすることが重要です。本項では、美露仙寿がこのがん細胞攻撃メカニズムに如何に貢献するかの研究結果を示します。

6-1. 美露仙寿の成分

美露仙寿は、7種材料(枸杞子、山渣子、余甘子、菊花、鹿角霊芝、大棗、ヨクイニン)の抽出液であり、成分分析でビタミン類の他、多種アミノ酸、ミネラル成分や微量元素等が測定されています。

6-2. 腸内細菌叢の改善

マウスを2群に分けて、一方には美露仙寿を飲ませ、もう一方には水を飲ませて14日間飼育した。両群のマウスで、糞便中のクリストリジウム属細菌(悪玉菌)と乳酸菌(善玉菌)の菌数を数えた。

水を飲ませたマウス群では、糞便1g中にクリストリジウム属細菌195 x106)で乳酸菌が211x106)であった。美露仙寿の飲用により、クリストリジウム属細菌は169に有意に減少し(P0.006)、乳酸菌は241に有意に増加し(P=0.019)、腸内細菌叢が善玉菌優位に改善した。

6-3. インターフェロンγINF-γ)

INF-γは、活性化リンパ球が生産し、がん細胞の増殖抑制やNK細胞活性の増強効果があり、がんに対する抑制効果の点で注目されている蛋白質です。INF-γの測定は、マウスより摘出した脾臓細胞を2つに分けて、一方は通常の培養液で、もう一方は培養液に美露仙寿を0.01pg/ml (約1000億分の1の量)加えて培養した。48時間後に、それぞれのINF-γ濃度を測定すると、通常培養群の11.3と比較して、美露仙寿を添加して培養した群では84.9 pg/mlに有意(P<0.01)に上昇した。

6-4. インターロイキン-2IL-2

IL-2は、T細胞が産生する糖タンパクで、T細胞やB細胞を増殖させる作用がある。IL-2の作用によって成熟キラーT細胞へと分化し、ウイルス感染細胞を破壊するようになる。

5565歳の20名において、美露仙寿を1日当たり2本飲用で3週間継続すると、IL245.4±32.1から76.8±38.7 U/mlに有意に(P<0.02)改善した。 

6-5.  NK細胞活性

NK細胞活性は、老人施設に入所する男性3名、女性11名の計14名を用いた(平均年齢80.7±7.7歳)。美露仙寿は、朝夕の2回、各2本の合計4/日を2ヶ月間飲用した。

ヒトのNK細胞活性は、服用1ヶ月後に上昇傾向を示し、2ヶ月後には18.3から27.1 %へ有意(P<0.01)な活性亢進を示した。

6-6. キラーT細胞

CD8発現T細胞(キラーT細胞)は、ウイルス感染細胞などを破壊するキラーT細胞として機能する。クリニックにて加療中のC型肝炎患者、乳癌および肺癌患者において、これまでと同様の治療を継続すると共に、美露仙寿を朝夕2回、各2本の合計4/日の飲用を3週間追加し、追加前後の検査結果を比較した。

3週間の美露仙寿の投与で、CD8発現T細胞数(キラーT細胞)は、444から584 cells/μlへと、有意(P<0.05)に上昇した。

美露仙寿(MRSJ)による免疫活性化

6-7. 考察

がんの発症は、NK細胞やキラーT細胞などの免疫システムによって抑制されている。この免疫力は、20歳をピークとして、その後は徐々に低下し、40歳になると半減、70歳になると10分の1程度に落ち込むことが報告されている。故に、加齢による免疫力の低下は、がん、生活習慣病や感染症等の患者を増加させている。加齢により低下した免疫活性を再び高めるには、しっかりと栄養を摂取する食習慣に加え、規則正しい生活、ストレスの除去、適度な運動等を継続的に行うことが重要であるが、実行は難しい上に、これらによる活性亢進にも限界が有る。不足した栄養分を補い、代謝活性亢進の目的で、美露仙寿の作用を検討した。

免疫の6070%程度の主戦力を担っているのは、500種類以上で総重量約1.5 kgと推定さる腸内細菌である事が明らかになっている。乳酸菌などの有用腸内細菌の主な機能として、免疫活性化の他に、病原菌の定着阻害、ビタミン産生などの健康維持に重要な働きをしている。腸内細菌叢の善玉菌である乳酸菌数が適切に維持されていれば、腸の蠕動運動も活発化し、健康状態の指標の1つである排便間隔は11回に近似すると考えられる。美露仙寿の投与により、上記のごとく、マウスの糞便中の悪玉菌の減少と善玉菌である乳酸菌の有意な増加を示した。さらに、女性の排便間隔が1.67日から1.14日に短縮したこと(論文投稿中)も、美露仙寿の飲用による腸内細菌叢の改善を示唆している。これらの効果が、上図のように、腸管刺激を通じてINF‐γやIL-2の産生を高めたと推測できる。

IL2の作用として、NK細胞やCD8発現T細胞の増殖及び活性化があるが、美露仙寿の開発時の研究で、IL-2産生能力の改善作用を確認し、国際免疫学会で発表している(1989年、ドイツ)。またINF-γは、IL2とともにヘルパーT細胞から産生され、NK細胞からも産生されており、抗腫瘍効果などの特性もある。NK細胞も癌細胞を殺傷する働きを有しているので、NK細胞活性向上とCD8発現T細胞では抗癌効果が共通している。これより、本検討ではINF-γに加え、NK細胞活性とCD8の検証を行った結果、美露仙寿によるINF-γの増加は僅か0.01pg/mlの添加で誘発され、NK細胞活性亢進効果は4/日の飲用で2ヶ月後には有意な亢進を認め、CD8発現T細胞の増加は3週間で確認出来たことから、有効な予防法となり得る可能性を示している。なお、INF-γは腸管刺激により分泌されることが知られているが、今回の実験から、美露仙寿により直接に分泌促進されることが明らかとなった。

6-8. 結論

美露仙寿は、腸内細菌叢の改善による腸管刺激を通じてINF-γやIL-2を刺激する系または、直接に産生を促す系により、NK細胞の活性化とキラーT細胞の誘導・活性化を向上させると考えられた。これらより、美露仙寿のがん予防剤としての可能性が示唆された。

がん・予防(3)

2014年10月20日

5. 日常生活でのがんの予防
がんには、医学的に確立された予防法は存在しません。しかしながら、がんの発症には喫煙(30%)、食事(30%)、運動不足(5%)、飲酒(3%)などの生活習慣が間接的に関与すると考えられています(ハーバード大学がん予防センター)。従って、がんを予防するには次の項目の生活習慣の改善が望まれます。

5-1. 体型(BMI)
肥満は、直接的にがんの発症には関与しないと言われています。しかし、最近に国立がん研究センターが発表した研究では、肥満は日本人女性が乳がんになる危険性を高めるとのことです。調査結果では、閉経前でも後でもBMIが大きいほど危険性は高まり、閉経前にBMI 30以上の肥満では基準値内(23~25)の人の2.25倍で、閉経後ではBMIが1上がるごとに危険性が5 %上昇しました。なお、欧米では、閉経前は肥満が乳がん発症リスクを下げる調査結果が報告されているので、人種により異なることが考えられます。
BMIの計算式は、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)です。
実際に長生きしている方のBMIは、基準値の25を少し超えたやや肥満です。しかし、病気になる確率が最も低いのは、男女ともに22で、痩せも肥満も病気をする確率が高くなります。従って、健康で長生きするためには、BMIが22~25位の範囲になる事が望まれます。

5-2. バランスの良い食事
野菜や果物にはビタミン類や食物繊維など、がん予防だけでなく、健康維持に必要な成分も含まれています。特に、季節の旬の野菜(露地物)は栄養価が高いうえに、暑さ寒さへの対策にもなる成分を含んでいます。毎食毎に野菜を摂取し、果物もデザートとして毎日1回以上は食べるようにしましょう。食後の緑茶は、健康維持やがん予防にも効果的です。なお、中高年にとって肉類はコレステロースや中性脂肪を上昇させるので良くないとの考えから、菜食主義の方もおられます。肉類は、食べすぎるのが良くないのであって、適量をバランスよく食べることが、健康維持には必要です。なお、料理や飲み物が熱過ぎると、食道などの消化管を痛め、がんを誘発しかねません。適温で。
塩分の摂り過ぎは高血圧になると言われていますが、実際には2~3割位の少数の塩感受性を持った人だけで、残りの7~8割では塩分は尿中排泄されるので高血圧にはなりません。しかし、すでに高血圧になっている場合には塩分はさらに血圧を上昇させますし、腎機能が低下している場合には負荷がより大きくなります。また、塩感受性があるか否かは検査をしないとわからないので、塩分制限が必要ということは間違いではありません。

5-3. 有酸素運動
有酸素運動の代表といえば、ウォーキング(早歩き)です。歩くことが健康に良いことは誰でも知っていますが、何故に良いのかご存知でしょうか?その答えは、心臓から全身に送り出された血液が、どの様に心臓に帰ってくるかを考えればわかります。例えば、足の血液は重力があるので、自然に心臓に帰ることはできません。足の筋肉が伸縮を繰り返して、心臓まで押し上げているのです。従って、足の筋肉が発達している程、血液循環が良くなるので、酸素や栄養分を全身に届けやすく、老廃物の回収率も良くなります。また、血液の流れが良くなるので、血圧も安定します。さらに、ラジオ体操で全身の曲げ伸ばしをすることで、効果がアップします。毎日30~60分程度の有酸素運動が、健康維持には必要です。

5-4. 禁煙
タバコは、肺がんとの関連が強く指摘されている上に、血管を細く固くして血圧を上昇させるなど、百害あって一利無しです。近年、禁煙志向が高まっているにもかかわらず肺がん患者が多いのは、肺がん発症には長期間かかるので、以前に喫煙していた人が今発症していると考えられます。今後は、喫煙率の低下で肺がんの罹患率や死亡率も低下していくでしょう。

5-4. 飲酒は適量に
酒は百薬の長といわれるように、1合以内の酒(ビールでは大瓶1本以内)は血行を改善し、血圧を調整するなど、薬として作用します。実際に、適量の飲酒をする人の方が長生きなのは統計学でも証明されています。しかし、1合以上の酒は、肝臓に負担をかけ、血圧を上昇させるなど、毒として作用します。“過ぎたるは及ばざるが如し”です。なお、日本人の半分以上は遺伝的にアルコールを分解する能力がありません。飲めない体質の方には、少量でも薬にはなりませんので、無理に飲む必要はありません。

5-5. C型肝炎ウイルス、ピロリ菌
肝炎ウイルスの内、A型は慢性化しません。B型は、乳幼児期の免疫力の弱い時期の感染か、大人の場合は透析患者のような免疫力が極端に低下した場合以外は、慢性化しません。問題なのはC型肝炎ウイルスで、60~80%位の高い確率で慢性化し、肝硬変、肝がんへと進行します。肝臓がんの約80%は、C型肝炎が原因です。インターフェロンとリバビリンの併用で治療しますが、日本人に多いウイルスのタイプである1型の場合(約70%)には、成功率は50%以下と低いのが現状です。ウイルスタイプが2型(約30%)ならば、約70%以上の確率でウイルスを消去できます。C型肝炎ウイルスに感染しても、肝臓がんに進行するまでには平均30年近くかかりますので、60歳代以上で、軽度の慢性肝炎程度ならば、治療の有無で計算上の寿命は変わらないことになります。治療には、微熱や食欲不振などの副作用が高率で見られます。年齢、ウイルスのタイプと量、肝炎の進行度などを総合的に判断して、治療を考えるべきと思います。
ヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)の感染は、上述のように、胃がんの発症に関与します。中高年では7~8割がピロリ菌に感染していますが、その内で胃がんになるのは約0.5%(200人に1人)の割合です。除菌を選択すべきか、または定期検診で初期発見を選ぶかは、本人の考え方でしょう。

以上、がんの予防として述べましたが、これらは生活習慣病の予防と基本的に同じです。免疫力を高めて、健康な生活を送ることが、即ちがん予防につながります。
次回は、美露仙寿のがん予防の研究成果についてです。お楽しみに!

がん・予防 (2)

2014年10月10日

 3.  臓器別のがん死亡率

 平成24年に“がん”で亡くなった方は36万人で、死亡総数の28.7%と約3人に1人の割合で、死因のトップになって以来増え続けています。従って、がんを予防すれば平均寿命が延び、医療費の削減にも貢献します。

死因

 がんの罹患者数と死亡者数を下図に示しました。臓器別の死亡者数で多いのは、男性では肺、胃、大腸の順で、女性では大腸、肺、胃です。なお、男性の前立腺がんおよび女性の乳がんは罹患者が人口10万人当たり100人を超えるのですが、死亡者では共に20人を下回っています。これは、癌の種類によって発見されやすいもの、および悪性度や治癒率の高低があることを示しています。以下に、死亡率の高いがんについて説明します。

人工10万人当たりのがん罹患者(左)と死亡者数(右)

① 肺がん

 肺がんには、小細胞がんと非小細胞がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)があります。肺の入り口の太い気管支部分(肺門部)には扁平上皮がんが多く発生し、喀痰検査や気管支鏡の検査が有効です。気管支の奥の肺胞がある部分(肺野部)では、殆どが腺がんで、X線検査が有効です。肺がんの原因は、喫煙が挙げられます。近年、禁煙志向が高まっているのもかかわらず肺がん患者が多いのは、肺がん発症までには長期間かかるので、以前の喫煙者が現在発症しているのです。近い将来には、禁煙の効果で肺がんの発症者は減少するものと推測されます。

②. 胃がん

 胃がんは、胃の表面の粘膜に発症し、徐々に粘膜下層、筋層、漿膜へと浸潤していきます。粘膜下層までの進行はまだ早期胃がんなので、非常に高い確率(ほぼ100%)で根治できますが、筋層より深くまで進行すると治癒の可能性が低下していきます。原因は、食生活が大きく影響すると考えられています。また、ヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)の感染も、胃がんの発症に関与します。中高年では7~8割がピロリ菌に感染していますが、その内で胃がんになるのは約0.5%(200人に1人)の割合です。しかし、胃がん患者には高確率でピロリ菌の感染がみられます。抗生物質による除菌は、現在は健康保険が使えるので安くできるようになりました。副作用は、肝障害や下痢などがあります。病院は除菌を勧めますが、がんになる確率が0.5%なので、除菌をするかしないかは本人の意志次第です。ただし、すでに胃に障害がある場合には除菌が必要です。また、症状がなく除菌を望まない場合には、定期的に胃カメラなどでの検診が望まれます。

③ 大腸がん

 大腸は約2 mの長さで、結腸(上向結腸、横行結腸、下向結腸、S字結腸)、直腸、肛門の3部位に分けられます。大腸がんの発生し易い部位は、直腸35%とS字結腸34%で、約8割の大腸がんは肛門から近くの部位に発症します。初期の大腸がんであれば、内視鏡手術で簡単に除去できますし、予後も良好です。定期的に便の潜血反応や内視鏡検査を受けることで、早期発見が可能です。大腸がん発症の原因として、食の欧米化で動物性脂肪の摂取量が増えたことが挙げられます。本来、農耕民族である日本人は、農作物の食事に対応した腸の形状になっているので、洋食よりも和食が適しているのです。

4.最新のがん検査(マイクロRNA)

ヒトの体は、細胞の核内にあるから転写されたRNAにより合成されたタンパク質で出来ています。RNAの中には、タンパク質合成の遺伝情報を含まないRNA(ノンコーディングRNA)が大量に存在しています。その中でも、マイクロRNA(miRNA)と呼ばれる長さ20から25塩基ほどのRNAは、遺伝子の働きを抑制する機能を持ち、がんなどの疾患と関連することが、近年明らかになり注目されています。このマイクロRNAは、細胞内に存在するタンパク質への翻訳はされないで、他の遺伝子の発現を調節する機能を有すると考えられているRNAの一種です。ヒトには2500種類以上あり、がん患者の血液中では種類や量が変動することが明らかになったので、そのパターンを調べることで、がんの種類を特定する検査です。


開発対象となっている13種類のがんは、
胃がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胆道がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、乳がん、肉腫、神経膠腫
です。1回の採血で検査が出来る上に、初期の癌も発見できるメリットがあります。現在実用化できているのは、乳がんと膵臓がんの2種類のがんで、他にアルツハイマー病があります。採血し、血中のマイクロRNAを抽出したのち、発現パターンを調べます。その有力な手法が、マイクロアレイです。この方法では数千から数万種類の遺伝子の発現パターンを短時間で網羅的に調べることができます。近い将来には、健康診断などの1回の採血で多種類のがんの有無を簡単に調べられるようになるでしょう。