冷えと健康長寿(2:冷え症への対策)

2014年08月10日

低体温と通常体温では、どちらが健康長寿といえるのでしょうか?単に長寿だけを取り上げた場合には、エネルギー消費の少ない低体温の方が長生きといった説が無い訳ではありません。しかしながら、低体温は免疫力を著しく低下させるので、健康からは程遠い状態なのです。従って、健康長寿には、36.5℃程度の体温と十分な血液循環を維持しなくてはなりません。さらに、低体温の方は、必然的に手足の冷え症を招き生活の質を低下させるので、生活習慣を見直すことが大切です。

低体温ならびに手足の冷え性を健康的に解消するには、食事と運動です。食事では、栄養バランスを大切にし、インスタント食品は控えること。無理なダイエットは厳禁です。ビタミン類を含む季節の旬の野菜を充分にとるようにしましょう。夏の野菜や果物(トマト、きゅうり、スイカなど)は体を冷やし、逆に冬の野菜(カボチャ、根菜類など)の煮物は体を温め、体温が適度になるような調節作用があえます。なお、夏には冷たい飲み物、アイスクリームなど、体を冷やすものを摂り過ぎないように注意しましょう。私は、夏も冬も食事の後は熱い緑茶を飲んでいます。

運動は、細胞の発熱と血液循環の維持には不可欠です。手軽に安価にできるのはウォーキングやラジオ体操で、非常に良い運動なのですが、欠点としては意志が弱いと三日坊主になりやすいことです。長続きさせるには、家族や親友などと一緒にやって、さぼれない状況を作ることにあります。お金を払ってスポーツクラブに行く方法もあります。周りの方と一緒にダンスや体操などをしていると、知らず知らずの間にかなりのエネルギーを使う運動をしています。また、休むとお金がもったいないという意識がありますので、継続する可能性は高くなります。私自身は、水泳をしています。水泳は体を冷やしそうなイメージがありますが、水泳前にジャグジーで十分に体を温めて、帰りにもジャグジーで暖まった後にシャワーも浴びることで、冷えることはありません。私は12㎞泳ぎますが、泳いだ後は体重が1kg弱減っているので、泳いでいる間に汗をかき、糖や脂肪を燃焼させているのです。なお、真夏の運動は熱中症の危険がありますので、決して無理をしないで安全を優先して下さい。

風呂は、少し温めの温度で、じっくりを時間をかけて半身浴で入ります。真夏の時期だけはシャワーで可ですが、冬場のシャワーは冷え性の原因となりますので、必ず湯船につかってください。また、夏に冷房の効きすぎた部屋に長時間いるのは良くないので、OLの方などは防寒対策が必須です。

他に気をつけたいのは鎮痛剤による血行不良で、頭痛持ちの方や生理痛が辛い方で薬を常用している方は、低体温や手足の血行不良が慢性化している可能性があります。例えば、ボルタレンは非ステロイド抗炎症剤ですが、ステロイド剤と同じく交感神経を緊張させて血管を収縮、血流を阻止することで効くようにしてあります。要するに、冷やして生体反応を止めるのです。痛み止めは一時的には効いても、あくまでも対処療法であり、痛みの根本を取り除いたわけではありません。それを繰り返す事は、低体温や血行不良を溜め込んでいる様なもので、冷えが慢性化します。慢性化は、更なる血行不良での頭痛などの痛みを誘発します。なお、化学薬品は鎮痛剤、解熱剤に限らず、ほとんどのものが体を冷やします。長期に化学薬品を服用することは、体を冷やし、その結果として免疫力を低下させ、更なる化学薬品の使用で悪循環を招きます。薬は最小限度に!

 鎮痛剤

冷えと健康長寿(1:冷え症の分類)

2014年08月01日

毎日の厳しい暑さで熱中症が懸念されるこの時期に、冷え性対策の話題はピンとこないかもしれません。ですが、真夏のオフィスでは冷房による冷え性に悩む女性が多いのです。冬ばかりでなく、夏のこの時期も女性の身体は冷えやすいのです。冷え症の根本的な解消には、生活習慣を見直して、体質を改善する必要があるので長期戦になります。「冷え症の解消は、1日にして成らず。」今から始めましょう!夏の冷房対策と、冬の冷え症対策。

冷え症といっても人によって症状は様々で、症状と原因を大きく分けると
① 体全体が冷える(低体温タイプ)=代謝量の低下
② 手足が冷える=血液循環の低下
③ 手足は冷えるが顔は火照る(冷えのぼせ)=自律神経の乱れ
の3つが考えられます。一般に言われる“冷え症”とは、これらを総合した表現です。

① 代謝量
ヒトは、常に36.5℃程度に体温を維持しています。この体温は、筋肉細胞内で栄養分を燃やす(酸素と結合)ことで生成されますが、摂取した栄養分の70%以上の大量のエネルギーが消費されています。ですから、発熱装置である筋肉が少なければ、発熱量が少なくなるので、体温は上がり難くなります。この状態では、エネルギー消費が少ないわけですから、エネルギーは蓄積され、当然のことながら太り易くなります。逆の言い方をすると、筋肉が少ない痩せた人または脂肪の多い太った人は、発熱装置が小さいので寒がりです。従って、代謝量を向上(発熱装置の高稼働)させる対策は、継続した有酸素運動で筋肉を鍛えることなのです。
このタイプは“低体温”で、必然的に手足への熱供給量も低いので、末端部位の冷えを感じ易くなります。

② 血液循環
細胞が作り出した熱は、血液が循環して全身に運びます。即ち、心臓から押し出された血液は全身へと流れ、全身の体温を維持し、同時に体内で細胞が働くための栄養や酸素なども運びます。その後は、老廃物を回収して心臓に戻ってきます。血液が手足から心臓に戻るのは、手足の筋肉が収縮してポンプの役割を果たしているのです。
代謝量の項で述べたように、ヒトは常に36.5℃程度に体温を保つようにプログラムされています。外気温が低くなった場合、血管を収縮させて深部体温を維持しようとするので、血液循環を保つ能力が低いと手足への血流量が減り、手足が冷えてしまいます。手足の“冷え症”はこのタイプですが、前記の“低体温”が合併することで、より不快感が伴った冷え症を感じます。手足の冷え症タイプが血液循環を良好に保つには、心臓が順調に血液を送り出すことと、手足の筋肉が血液を送り返す能力を高めることが不可欠です。

③ 自律神経
自律神経は、発汗や血管の収縮・拡張を調節して、体温を一定に保つ働きをしています。この自律神経は、交感神経系と副交感神経系の二つの要素で構成されています。簡単に言うと、交感神経は“活動”で、副交感神経は“休息”をコントロールし、そのバランスが時計の振り子のように動いています。バランスが崩れることで、疲労、めまい、不眠、不安やうつ状態ばかりでなく、発汗や逆に低体温を引き起こします。自律神経失調症の薬物療法では、抗鬱剤や抗不安剤、非ステロイド系の抗炎症薬などが用いられますが、必ずしも効果的とは言えません。出来れば、日常生活の改善で対処したいものです。早寝早起きで、朝目覚めたら日光を浴び、交感神経のスイッチを入れる。食事は栄養バランスの良い献立で3回規則正しく摂る。日中は、有酸素運動を1時間程度血流の改善と、気分転換。寝る1時間程度前に、少しぬるめの風呂にゆったりと半身浴し、副交感神経へスイッチを入れ替えます。この規則正しい日常生活の繰り返しで、自律神経のバランスを整えます。

これら3つのタイプを総合すると、冷え症の改善には規則正しい生活と有酸素運動が大切ということです。次回からは、冷え症への対策として、日常生活での注意点、ならびに美露仙寿の冷え症改善効果についてです。

「アレルギーの臨床」8月号に“美露仙寿”の研究論文

2014年07月20日

近年、花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどのアレルギー疾患の罹患率が上昇して、国民病と言えるほどになっています。アレルギーの発症や罹患率の上昇の要因には、種々の因子が総合的に関与する可能性が指摘されています。例えば、生活環境の変化があります。小児の時期に、きれい過ぎる環境にいるとバランスの良い免疫システムを構築できなくなると言われており、逆に牧場などで家畜とともに過ごした子供はアレルギー発症が殆どありません。また、回虫などの寄生虫に感染しているとアレルギーの発症率が低くなることも知られていますが、今では寄生虫の感染率も非常に低くなっています。このようにアレルギーを発症し易い体質の人が増えたことに加え、車の排ガスや食品添加物などの化学物質の増加で、刺激を受ける機会が増えたことなどが積み重なって罹患率の上昇に影響していると考えられます。

アレルギー疾患の治療には、ステロイド剤や抗ヒスタミン剤などが汎用されていますが、これらの薬剤は対症療法であり疾患の根本治癒は望めません。さらに、ステロイドは顆粒球を増大させて免疫力が低下し、さらなる継続使用は炎症のみならずアレルギーの慢性化も招く危険性があるのです。抗ヒスタミン剤も、副作用による眠気や集中力・認知力の低下で、社会生活に支障が出ることがしばしばです。

そこで、副作用が無く根本治癒の可能性として漢方成分の「美露仙寿」を検討した論文が、「アレルギーの臨床」の8月号に掲載されます(7月20日発行)。8月号は「漢方とアレルギー」の特集号で、数ある漢方飲料の中で「美露仙寿」に執筆依頼がありました。本誌8月号の執筆者は、

岐阜保健短大 学長: 永井博弌 先生

慶応義塾大学医学部漢方医学センター: 渡邊 賢治 先生

聖マリアンナ医大 内科・漢方: 崎山武志 先生

富山大学 和漢薬研究所: 門脇 真 先生

他、有名大学の先生方ばかりで、一緒に掲載していただけるのは名誉なことです。

論文の題は、「7種漢方健康飲料の抗アレルギー剤としての可能性」で、私の他に共著者は崇城大学薬学部の周建融先生、横溝和美先生、宮田健先生です。

内容は、美露仙寿の飲用で、マウスの乳酸菌が増え、女性の便秘を改善させたことから、免疫寛容に関与する腸内細菌叢が改善されたと考えられた。また、免疫系では培養細胞のインターフェロン-γ分泌量、ヒトのCD8発現T細胞数とNK細胞活性が美露仙寿で上昇していることから、強固な免疫システムが構築され、サプレッサーT細胞の暴走を抑制できる下地が作られていた。これらの結果と、これまでのアレルギー疾患の美露仙寿による改善報告を加味すると、美露仙寿が有望な抗アレルギー剤に成りえる可能性が示されています。

この雑誌に掲載されているのは、医療関係者や研究者向けに書かれた医学論文ですので、一般の方には少し難しい内容なのですが、是非ご一読ください。

1周年:人気記事ベスト10

2014年07月10日

  今回も「医学博士の健康ブログ」にお越しくださいまして有難うございます。お陰様で、ブログが始まってから1年が過ぎ、40の記事を掲載しました。アクセスの多かった記事は、以下の通りです。

上位のベスト3は、健康な人を病人に仕立てて、必要のない治療や投薬をする医療のカラクリです。このブログをお読みの方は、医療の裏側がみられるので、医者や病院に騙されない知恵がついていると思います。しかし、多くの方が医者の言葉は絶対的に正しいと信じているのです。中には、趣味のごとく病院に通い、健康のためにと大量の薬を飲んでいる方もおられます。こんな事をしていたら、健康な人でも病気になってしまうのに、と思うこともしばしばです。何が正しくて、何が間違っているのか、正しく判断できるように勉強しましょう。

人生で一番大切なものは、自分と家族の健康です。これからも、健康管理に役立つ記事を書いていきます。今後とも、ご愛読のほどお願いいたします。

 

ホルモン剤で癌のリスク増

2014年07月01日

 重度の更年期障害に悩む患者さんは、少しでも楽になりたいとの思いからホルモン剤の投与を希望される方が少なくありません。このホルモン補充療法は、女性ホルモンを投与すること で、急激な女性ホルモン低下によって生じる、のぼせ・ほてり・発汗異常などを伴う更年期障害を改善させるものです。

  しかし、治療に使われるホルモン剤は、乳がんの発生増加と死亡増加と関係していると報告されています。閉経後の16000名を、ホルモン投与群とプラセボ群(偽薬)に分けて、約8年間観察すると、乳がんの発生率は投与群で385名に対しプラセボ群は293名で、投与群で1.25倍高くなります。乳がんでの死亡者は投与群で51名、プラセボ群では31名と、1.57倍もホルモン投与群で高くなっていますまた、このホルモン投与によって増大した乳がんリスクは、投与の中止で顕著に減少し、投与を中止すると約2年で元の状態に戻るというのです。この発表でも、8500名の女性にホルモン剤の投与を行い、8100名の女性はプラセボ群として、両者を比較しています。乳がんの発生率は、投与群で1.26倍に上昇していました。

  同様に、ホルモン剤の投与は、子宮体がんになりやすいこともわかっています。更年期障害がつらいのは理解できるのですが、医師はホルモン投与のリスクの説明を充分にすべきですし、患者側はこの説明を聞いた上で、症状の改善効果ががん発症のリスクをはるかに上回ることを納得してから行うべきです。